こんなに楽しいことを辞められるわけがない。【63歳のバドミントン現役選手・デシ・メバシングの場合】

バドミントンの国際大会には、ターバンを被った“名物おじさん”がいる。インド系イギリス人のデシ・メバシングだ。最年長級の63歳が今も表舞台で戦う原動力とは。


1980年9月5日――。
デシ・メバシングはこの日から「第二の人生が始まった」と思っている。26歳だったメバシングは7月2日、交通事故に遭い、上部をわずかに残して左太ももを切断した。8月上旬に退院し、約1ヵ月後、妻が何気なくこう言った。

「バドミントンに行かないの?」

この言葉でメバシングは漫然と過ごしていた自分に気づいた。そこで時間をかけて歩き、体育館に向かった。待っていたのは、「よく来たな!」と迎えてくれた仲間たち。ためらいながらも試合をすると15-11で勝った。

「このときはまだ義足はなく、片足だけで勝ったんだ!」

――足を失って不便はあるが、多くは何も変わらない。バドミントンだってできる。いや、むしろ事故後の人生は広がった。だから9月5日は「第二の人生が始まった日」なのだ。

人生がどう広がったかだが、メバシングの生きざまはパラ・バドミントンの発展史と重なる。初めてパラバドミントンの国際大会が開催されたのは1994年。デシはこの大会に出場した。翌年には昵懇の医師が発起人となり、国際パラバドミントン連盟を設立。以来、デシは国際大会の常連選手になった。

「おかげで世界中に友達ができた。障がいのおかげだよ」

そして2014年、パラリンピックの正式競技入りを誰よりも喜んだのは、メバシングをはじめとする黎明期のメンバーたちだ。彼らが障がい者バドミントンの発展に寄与してきたから今がある。

「本当に誇らしい気持ちだった。若者に夢を与えられるってね」

とはいえ実力的に自分がパラリンピックに出場できるとは思っていない。だが、応援している人がいる限り、国際大会への出場を辞める気はない。メバシングの前向きな生き方は評価され、コンピューター搭載の最新の義足の提供もスポンサーから受けているのだ。

「あきらめちゃダメだと言い続けてくれているんだ。それにこんな楽しいことを辞められるわけないよ!」

63歳の現役選手は、心から人生を謳歌している顔で笑った。

text by Yoshimi Suzuki
photo by X-1

  • Share on Facebook
  • Share on Twitter
  • Share on Google+