2017.05.17

【トライアスロン】[世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会]他競技のパラリピアン土田と谷が優勝! リオパラ日本代表ら日本勢は躍進の礎に

国際トライアスロン連合(ITU)が主催するパラトライアスロンの世界最高峰の大会、「2017世界パラトライアスロンシリーズ横浜大会」が5月13日、横浜市の山下公園周辺の特設コースで開催され、国内外から集まった70選手(男子45人、女子25人)が雨のなか、スイム・バイク・ランの3種目で総合力を競った。

リオパラ後、新クラス分け導入

パラトライアスロンは正式競技に加わったリオパラリンピック後、ITUの競技ルール改定に伴い、障がいによるクラス分けも2017年1月から男女別全5クラスから全6クラスに変更になった。主には、座位のPT1が「PTHC」となり、障がいの重いH1と軽いH2のサブクラスが設定され、肢体不自由の立位の選手が競うPT2~4は従来の3クラスから「PTS2~5」の4クラスに細分され、視覚障がいのPT5はそのまま「PTVI」となった(B1とB2/B3のサブクラスは継続)。

今大会は新クラス分け導入後初の、東京パラリンピック開催地である日本での国際大会ということで、70人の出場枠はキャンセル待ちが出るほどの人気ぶり。リオパラリンピックのメダリストから東京パラリンピックを狙う若手選手まで多数来日した。日本勢は木村潤平(PTHC)らリオパラリンピック日本代表4選手に加え、初参加も含めた11選手が出場。世界での自身の位置を確認できる恰好の舞台となった。


リオパラリンピック6位入賞の秦

リオパリンピック6位入賞で右大腿義足の秦由加子(PTS2)は4位に入った。リオの上位選手が揃うなか、得意のスイムは1位で上がる好調ぶり。第1トランジションでリオパラリンピック金メダリストのアリッサ・シーリー(アメリカ)にかわされるなど徐々に順位を落としたが、「バイクでは過去の大会より粘れ、成長を感じられた」と手応えを口にした。また今季からラン用の義足を新調し、「かつてないほどのいい感覚。強い反発力を受け止められる筋力を鍛えれば、板バネの効果をもっと得られると思う」と伸びしろの確認もできたようだ。大きな目標である東京大会での金メダルを見据え、「装備は完璧。来年はリベンジしたい」と力強かった。




得意のバイクで追い上げる佐藤

先天性左手首欠損で、リオパラリンピック11位の佐藤圭一はPTS5で5位。苦手なスイムでアクシデントもあり出遅れた。得意のバイクで懸命に追い上げた分、「最後のスプリント勝負に余力が残っていなかった」と残念がった。ノルディックスキーでも世界で戦っており、来年はピョンチャン冬季パラリンピックを控えるが、トライアスロンも新クラス分けによって、PT4のリオ上位陣がほぼ含まれるPTS5となり、競争がより熾烈になった。ランキング10位以内を維持するため海外転戦も続けるといい、「トライアスロンで持久力を高めながら、スキーの強化にもつなげたい」と力を込めた。




円尾(左)とガイドの武友

リオパラリンピックで9位だったPTVI(視覚障がい)の円尾敦子(旧姓・山田)もリオの上位陣との再戦となったが、5選手中5位と苦戦した。今年からバイクコースが少し変更されてカーブが増え、2人乗りのタンデム車で挑むPTVIクラスには厳しくなった。特に今年は雨で路面が滑りやすく、「ビビリが先に立った。もう少し攻められたら」と反省を口にした。「ロッテルダム世界選手権(9月)までにもっと追い込みたい」と意気込むが、ガイド探しにも苦労していると明かす。理想は固定のガイドとコンビネーションを高めることだが、現状では複数名の中から大会ごとに都合のつくガイドと組む。今大会でペアを組んだ武友麻衣ガイドは、「怖がらずに多くのトライアスリートに経験してほしい。ガイドをすることで(競技への)視野が広がり、選手としてのテクニックも上がる」と訴え、円尾も、「互いに刺激しあえ、人間的にも成長できる」と支援を呼びかけた。



車いすマラソンの土田もトライアスロンに挑戦

今大会で大きな注目を集めたひとりは、PTHCの土田和歌子だ。パラリンピックは夏・冬合わせ7大会連続出場のベテランで、車いすマラソンでは世界最高記録を持ち、国際大会で何度も優勝を果たす第一人者だ。昨年11月に発症した運動誘発性喘息の治療で水泳を始め、マラソン練習の一貫で始めたハンドサイクルにも手応えを感じたことで、今年2月からトライアスロンに本格挑戦。4月のアジア選手権(フィリピン)で実戦デビューを果たし、今大会は「自分の力を確認し、可能性を広げたい」と臨み、初優勝。2位に1分以上の差をつける快走だった。

「1位は嬉しい。(新たな挑戦も)すごく楽しい」と声を弾ませた。トライアスロンは陸上競技のクロストレーニングで取り組んでいるといい、今後の挑戦については、「まずは秋のマラソンレースで成果を見たい。でも、魅力のある競技だと思った。世界レベルで戦って表彰台に立ちたいという思いはある」と、可能性は充分に感じた様子だった。


1位でゴールに向かう谷

また、陸上競技走り幅跳びのパラリンピアン、右下腿義足の谷真海(旧姓・佐藤)もPTS4クラスで優勝を飾った。横浜大会には、「陸上練習の気分転換で」過去2回出場しているが、昨年トライアスロンへの完全転向を表明後、「初出場」での優勝に、「2020年の東京で表彰台に乗ることがいちばんの目標。いいスタートが切れた」と笑顔。途中で諦めなかったことが勝因と話し、苦手意識のあるバイクも、「練習して1年。伸びしろは、まだまだある」と意欲を見せた。



他競技の選手が参戦する影響は?

日本トライアスロン連合パラリンピック対策チームの富川理充リーダーは今大会について、「どのクラスも強い選手が実力通り勝っている。日本選手は個々に手応えも課題も見えたことが収穫」と話し、来年以降は、より密な合宿やオリンピック選手のスタッフらによる専門的な強化など20年大会に向けたナショナルチーム体制を構築する、としている。

また、土田などのように他競技の選手も積極的に受け入れたいと話す。豊富な世界経験をもつ選手たちの言葉や姿勢は他選手にも好影響を及ぼしており、「トップを目指すには何をすべきかなど、さまざまな情報交換をしながら、互いに学ぶよい雰囲気が高まっている」という。

横浜大会は今年から、「世界パラトライアスロンシリーズ」3大会のひとつに指定された。2020年の東京パラリンピックに向け、今後さらにハイレベルな戦いが予想される。「チームジャパン」として、地の利を存分に活かし、さらなる飛躍へとつなげてほしい。


text by Kyoko Hoshino
photo by X-1
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