[IBSAワールドカップ・ウズベキスタン日本代表選手選考大会] リオパラリンピック銅メダルの藤本らが第一代表に

[IBSAワールドカップ・ウズベキスタン日本代表選手選考大会] リオパラリンピック銅メダルの藤本らが第一代表に
2017.06.21.WED 公開

リオパラリンピックでは4つのメダルを獲得した日本の視覚障害者柔道。そして次なる東京パラリンピックを見据えた取り組みは、すでに始まっている。日本視覚障がい者柔道連盟は6月18日、ウズベキスタンで10月に行われるワールドカップの日本代表選手選考大会を講道館で開催した。

IBSAワールドカップ代表選手の選考大会が行われるのは初めてのこと。リオ後、初の国際大会となるだけに力が入っていることが感じられるが、これも3年後の東京を視野に、選手のさらなるレベルアップを図ろうという取り組みのひとつだろう。選手の多くも「東京」を目標に決意を新たにしており、各階級で激しい闘いが繰り広げられた。

ベテランの平井と藤本が健在

多くの出場者を集めた男子60kg級と66kg級では、まず予選のリーグ戦が行われ、その上位4人による決勝トーナメントで優勝を争う。リオパラリンピックで銀メダルを獲得した廣瀬誠の出場していない60kg級では、ロンドンパラリンピックの日本代表である平井孝明が不戦勝以外の試合は全て一本勝ちで優勝。とくに決勝トーナメントは巴投げから寝技に持ち込み抑え込みという必勝パターンが見事にハマり、2試合ともわずかな時間で一本勝ちを収めた。

視覚障がい者柔道は寝技を得意とする選手が多く、投げで終わらずそのまま寝技となる展開もよく見られる。巴投げから寝技という流れも目にする機会が多い展開だが、平井の柔道は、その流れの完成度が頭一つ分ほど抜きん出ていた印象だ。

66kg級ではアトランタ・シドニー・アテネのパラリンピックで金メダルを獲得し、リオでも銅メダルに輝いたベテラン・藤本聰が決勝で22歳の新鋭・齊藤大起を破って自身でも「何度目かよくわからない」と語るワールドカップ代表の座を射止めた。41歳になる藤本だが、若い齊藤を相手に終始自分から技を仕掛け続け、技有りを2つ奪取。その後も立ち技でも寝技でも積極的に攻める姿勢を見せ続け、新鋭を圧倒した。

試合後「まだ若手には負けない。根拠? それだけのこと(練習)をやっていますから」と事も無げに語った藤本。「見た人が引くくらいの練習をしていますから」と言葉を続けた。すでにレジェンドの域に達している藤本だが、第一線で活躍し続けられるのは、そうした並々ならぬ練習が背景にあるのだろう。

22歳の永井が2度目の世界へ

73kg級を制したのは22歳の永井崇匡。学習院大学に通う大学生だが、IBSAの国際大会は2回目の出場となる。試合では、巴投げからの抑え込みで一本を獲ったが、それ以外にも寝技を積極的に仕掛ける姿勢が光った。

ベテランの加藤から一本を獲った北薗(左)
ベテランの加藤から一本を獲った北薗(左)

81kg級の代表となったのは北薗新光。過去には100kg級で活躍し、リオでは73kg級で5位入賞を果たしているが、今回の階級がベスト体重だと語るように、全試合一本勝ちで代表の座を射止めた。兵庫県警の機動隊で練習しているといい「レベルの高い練習をさせてもらっているので、今回の結果が出せた」と話す。

90kg級はリオにも出場している廣瀬悠が全勝で代表の座に。北京パラリンピック代表の初瀬勇輔との試合こそ延長にもつれ込んだものの、残りの試合は2つの一本勝ちと1つの不戦勝で危なげなく勝ち進んだ。投技でも寝技でも一本の取れる技の幅広さも武器だろう。

100kg級はアテネパラリンピックで旗手を務めたベテラン・松本義和が全勝で代表に。2位となった19歳の内山輝将も、オリンピック金メダリストの野村忠宏と古賀稔彦に憧れて磨いているという背負投での一本勝ちを収めるなど、今大会躍進した新鋭。その内山を相手に内股で一本勝ちした試合は圧巻だった。100kg超級は国内にライバル不在の正木健人が代表となった。

石井が一本勝ちで代表に
石井が一本勝ちで代表に

女子で唯一試合が行われたのは、52kg級の石井亜弧と土屋美奈子の一戦。リオパラリンピック7位の実績がある石井が一本勝ちで1位となった。それ以外の階級は、48kg級がリオで5位入賞の半谷静香。57kg級がリオの銅メダリスト廣瀬順子、63kg級は小川和紗が代表に選ばれた。

今大会の結果を受け、各階級の1位の選手が第一代表者となり、2位の選手も後日追加で代表になる見込みだ。

閉会式で「リオでの結果はすでに過去。選手は3年後の東京を目指して練習していることと思うが、その成果をウズベキスタンで発揮してほしい」と語ったのは、リオパラリンピックで男子監督を務めた遠藤義安大会委員長。さらにリオで「悔しさしか残らない」銅メダルに終わった正木が、「世界にどんな選手が出てくるのか。今後の研究材料としたい」と語ったように、選手たちの視線の先はすでに2020年の東京を見据えている。

優勝した(前列左から)半谷、石井、廣瀬順、小川、(後列)正木、松本、廣瀬悠、北薗、永井、藤本、平井
優勝した(前列左から)半谷、石井、廣瀬順、小川、(後列)正木、松本、廣瀬悠、北薗、永井、藤本、平井

text by TEAM A
photo by X-1

[IBSAワールドカップ・ウズベキスタン日本代表選手選考大会] リオパラリンピック銅メダルの藤本らが第一代表に

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