2017.08.24

【柔道】男子66kg級と100kg超級に期待の新鋭も登場した「第10回記念全国視覚障害者学生柔道選手権」

若手選手の発掘と育成を図るため、2008年より開催されている視覚障害者学生柔道大会は今年で10回目を迎える。静岡の浜松市武道館で行われた記念大会には全国11の盲学校や高校、大学より14人の選手が集まった。

階級によっては、不戦勝で優勝者が決定することもあったが、男子60kg級と男子66kg級ではリーグ戦が行われ、熱い闘いが繰り広げられた。

加藤大雅が男子60kg級3連覇を達成

最も多くの参加者が集まった男子60kg級を制したのは、2015年、2016年も同大会で優勝している加藤大雅(経専北海道保育専門学校)。リーグ戦の4試合を全て一本勝ちで3連覇を飾った。「足払い系の技が得意」と話す加藤だが、決まり手も送り足払い、内股、小外掛、大外刈りからの崩袈裟固めとバリエーションに富んでおり、バランス良く技術を身につけていることが感じられる。


三連覇を達成した加藤

今後の目標については「11月の全日本大会ですね。同じ階級で日本代表でもある平井孝明さんに勝てるようになりたい。そのために平井さんの得意な寝技を強化している」と明かす。「平井さんに勝って、来年は日本代表として世界大会に行きたい。その先に、2020年の東京もつながってくると思う」



期待の新鋭・瀬戸勇次郎が男子66kg級を制す

視覚障がい者の柔道の大会は初参加ながら、男子66kg級で優勝を果たしたのが瀬戸勇次郎(福岡県立修猷館高等学校)だ。今年7月の金鷲旗高校柔道大会までは高校の柔道部で一般の大会に出ていたという瀬戸は、組んだ状態で始まる視覚障害者柔道の試合形式に戸惑いながらも試合は全て一本勝ちで優勝を決めた。寝技はそれほど得意ではないとのことだが、寝技の展開になっても落ち着いてポジションを入れ替え、肩固めでも一本を取っていた。
試合後には初めての試合形式に「こんなにキツイと思わなかった」ともらした瀬戸だが、「11月の全日本大会で納得の行く試合ができれば、3年後の東京パラリンピックを目指したい」と意気込みを語る。同階級には藤本聰というパラリンピック界のレジェンドが存在するが、東京に向けてその藤本を脅かす存在となってくれることを期待したい。

100kg超級にも有望株が誕生


29歳の大型新人・津曲(右)に期待

大会では、不戦勝ちで優勝を決めた階級の優勝者同士によるオープン試合も行われたが、そこで注目を集めたのが男子100kg超級の津曲亮司(大阪南視覚支援学校)だ。津曲も視覚障がい者の柔道の公式戦は初参戦となるが、国内の大会では経験豊富な男子100kg級の内山輝将を相手に優勢勝ちを収めた。



経験で勝る内山に技有りを先に奪われるものの、自身が「途中から頭に血が上って何も考えられなくなったのが結果的に良かった」と語る後半から反撃を開始。身長180cm、体重130kgという恵まれた体格を活かして技有りを2つ取り返し、勝利を決めた。
学生時代に柔道を経験したこともあり、仕事に活かすためと入り直した視覚支援学校で再び柔道を始めたという29歳の津曲。初めての試合に「組み合った状態で始まることは知っていたが、お腹がつくほど近い距離だと思っていなくて戸惑った」と語るが、慣れてきた後半からは本来の自分の柔道ができたという。
現在、男子の100kg超級は正木健人の一強時代だが、国内で同階級で闘える逸材の出現は、正木にとっても良いニュースだろう。津曲本人も「正木さんのライバルと言われるようになるためにがんばりたい」と意気込む。11月の全日本大会で、楽しみな対戦がまたひとつ増えた。

ワールドカップを控えた小川和紗も出場


小川は日本代表として初めての国際大会を控える

女子70kg級で3連覇を決めたのは日本代表でもある小川和紗(千葉盲学校)。不戦勝ちでの優勝だったものの、午後に行われた東西に分かれての団体戦(非公式戦)では男子選手を相手に、技有り2つを奪い、最後は袈裟固めで一本勝ち。その実力を見せつけた。
試合前「とにかく試合がしたいので出場を決めた」と語った小川。10月にはウズベキスタンで行われるワールドカップを控え、「試合経験を積むのが一番」と話す。「ワールドカップはさらに良い経験になると思いますので楽しみ。そこで東京に向けた課題も見えてくると思う」と、すでに3年後を見据えているようだ。



大会後、大会委員長の遠藤義安氏(リオパラリンピック日本代表・男子監督)は「出場者が減る傾向にあるのは残念だが、今大会は瀬戸選手と津曲選手という将来有望な選手たちも優勝してくれたので、若手選手の発掘と育成という目的には寄与できていると思う。2人も視覚障害者柔道の試合形式に順応してくれれば、さらに実力を発揮できるのではないか」と期待感を表明。3年後の東京パラリンピックに向けて、柔道に対する期待はさらに高まりそうだ。


男子90kg級優勝の木本

不戦勝ちで3連覇した内山(右から2人目)



text by Shigeki Masutani
photo by Asuka Senaga
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