2017.09.18

【バドミントン】[ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2017] 東京パラリンピックからの新競技・パラバドミントン。強豪国の強さの秘密とは?

9月7日から10日までの4日間、東京都町田市で日本初の国際大会「ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2017」が開催された。

29ヵ国・地域から188名が出場した世界バドミントン連盟(BWF)公認の同大会は、国際パラ大会として史上最多の参加数をマーク。ベテランの長島理(WH1/車いす)が「世界選手権以上のレベルの高さ」というほどで、激戦のすえ22種目でチャンピオンが誕生した。

車いす男子の強国・韓国は金メダルを独占

29の出場国・地域のうち単独で最多15個のメダルを獲得したのは韓国(ダブルスで他国選手と組んだメダルは数えず)。日本が自国のみで手に入れたメダルは13個で、わずかに及ばなかった。同様のメダル獲得数はタイが10個、イングランドが6個、インド、フランス、中国が4個と続いた。


車いすクラスで圧倒的な力を見せた韓国代表選手たち

今回、強さを見せつけた韓国のメダルの稼ぎ頭は車いす男子だ。WH1シングルスでは韓国がベスト4を独占。ダブルス(WH2+WH2)でも3組が準決勝の舞台に立った。優勝した47歳&41歳ペアのキム・キュンホーンとイー・サムサプは、若いチョイ・ジェンマン/キム・ジュンジュン組を16-21、21-18、21-19の激戦で下したあと、自国の圧倒的強さを嘆いている。



「今回は本当に勝ち抜くのが大変だった。いつもの大会だったら、韓国選手は2、3ペアしか出てないのに、今回は5ペアもエントリーしたからね。決勝トーナメントで韓国ペアと3組も当たったよ!!」(キム・キュンホーン)

結局、混合ダブルスも含めると、韓国の車いす男子は金メダル4つを独占した。

この圧倒的な強さはなぜか。それは韓国では車いすのパラスポーツといえば、多くの人がまずバドミントンを思い浮かべるほど、普及が進んでいるからだという。選手のケアのために帯同したキム・ソングン氏はこう話す。

「リハビリ治療ですすめる医師が多いのです。いまでは愛好者を含め、韓国で車いすバドミントンをする人は300人を数えます」

そのため、韓国選手は環境面で恵まれている。国内には地方行政にサポートされた主力チームが4つあり、多くの国家代表選手は午後のすべてを練習に充てられる。日ごろから強い者同士で長時間打ち合える環境が整っているのだ。さらにパラリンピック、世界選手権などで好成績を残すと、オリンピック選手同様、年金が毎月支給されるという。

厚い選手層と行政からの支援。それが韓国の強さの秘密なのだ。

ダブルスで優勝したイー・サムサプはすべての試合を終えたあと、こう打ち明けた。
「もちろん東京パラリンピックで金メダルを獲りたい。それまでの韓国選手との勝ったり負けたりは大変だけどね!」

環境整備が進むタイも上位へ


シングルス・女子WH1(車いす)は
タイのスッディラ・ポッカムが優勝

日本に次ぐ10個のメダルを獲得したタイも行政の大きな支援を受けている国だ。タイのスポーツ省はタイ国王の直下組織で、パラバドミントンは専用体育館を用意してもらうなど、ここ10年で急激に環境が整えられつつある。

とくに車いすバドミントンはパラバドミントン種目のなかでいち早くサポートされた種目だけに、タイの一番の得意分野だ。今大会で2つの金メダルを引き寄せた女子は実力的に韓国女子を上回る。



もちろん強化整備も進んでいる。トップ選手は年間約5大会の遠征費用がほぼ支給され、遠征前には10日間の合宿が実施される。ス・メート監督は、「日本選手と違って、僕らの車いすは古いし壊れるのはしょっちゅう。でも、朝から晩まで一生懸命頑張っていますよ」。

またメダル6個を獲得したイングランドには来年4月から行政の支援を受けられるようになったという選手がいる。単複の世界ランキング1位で、ダブルスを制したイングランド代表のクリスティン・クームス(SS6/低身長)は、こう話す。

「普段、(家具量販店の)イケアに務めてる。僕には今まで行政からの支援はなかったんだ。だけど僕の種目もパラリンピックで戦えることになったし、金メダルを目指して頑張る」

一方で、SL3(下肢障がい)に最年長クラス63歳でエントリーしたイングランドのデシ・メバシングは、今回、予選リーグで敗退したものの、競技にこだわる姿勢を評価され、企業から義足を提供されている。3本目だという現在の競技用義足はコンピューターが内蔵され、約225万するという。

「膝から下の部分は誰でも使えるので、古いものは若い選手にあげるようにしているよ」(メバシング)

イングランドでは、“生き方”を伝えることで支援を受ける選手もいるのだ。

なお4個のメダルを獲得した中国は、これまで国際大会の表舞台に積極的に出てこなかったが、今後、確実に強くなる国に数えられている。1980年代に活躍した(健常の)元中国代表で、現在、日本で指導する胡山喬さんは「私たちのころから中国には、障がい者がスポーツを楽しむため施設が多くあり、大都市には競技力を高めるための専用施設もありました」と証言する。

またSU5(上肢障がい)の女子シングルスで優勝した鈴木亜弥子はこう警戒する。
「障がい者のバドミントン選手は、フィジカルを鍛えるところまで追いつかない人がほとんどなのに、中国選手はしっかり体を作ってきている。これからもしっかり練習して大会に臨んでくるはずです」

もともと健常者の世界で中国は伝統的にバドミントンが強く、高い技術を誇るだけに、今後、頭角を現してきそうだ。

東京パラリンピックは14種目で90人が参加


BWFのシャーミー・サブロンマネージャー
photo by Asuka Senaga

バドミントンは3年前に2020年大会で正式競技として採用されることが決まったが、実施種目は決定していなかった。しかし9月4日、国際パラリンピック委員会(IPC)は、アブダビ(アラブ首長国連邦)で行われた理事会で、バドミントン競技は90人の選手枠を設け、14種目を実施すると発表した。

実施種目はBWFが提案した。IPCが推奨する規則に基づき、できるだけ多くの国が参加でき、障がいの種類が偏らないようにするなど多様性やおもしろさを重視。IPCが最終決定したという。どの種目に何人配分されるかは未定だ。



「パラリンピックの新競技は選手枠60人がこれまでの実績だったので、今回、90人を認めてもらい驚きました。採用種目14も予想外です。初めての参加としては誇らしい結果。今回採用されなかった種目については残念でしたが、我々は今後も多くの種目が実施されるように働きかけていきます」(BWFのシャーミー・サブロン氏)

予想以上に実施採用種目が多いという結果は、一種目あたりの参加者数は少なくなるが、幅広い種目にわたる選手の「パラリンピックに出たい」という夢がつながったということでもある。競技力向上を目指し、世界中の多くの選手がこれからも努力を続けていけそうだ。


SU5(上肢障がい)シングルスはバドミントン人気の
高いマレーシアのリク・ハウチアが制した

SS6(低身長)で世界ランキング1位の
クリスティン・クームス(イングランド)


<バドミントン実施種目>
・シングルス WH1(車いす男子/女子)
・シングルス WH2(車いす男子/女子)
・シングルス SL3(下肢障がい男子)
・シングルス SL4(下肢障がい男子/女子)
・シングルス SU5(上肢障がい男子/女子)
・シングルス SS6(低身長男子)
・ダブルス WH(車いす男子/女子)
・ダブルス SL/SU(下肢&上肢障がい女子/混合)


text by Yoshimi Suzuki
photo by X-1
  • Share on Facebook
  • Share on Twitter
  • Share on Google+