2017.10.18

【トライアスロン】[日本トライアスロン選手権]パラリンピック会場になるお台場で初のデモンストレーション! 来シーズンに向けるステップに

10月15日、トライアスロンの第23回日本選手権大会の中で初めてパラトライアスロンのデモンストレーションレースが行われ、日本パラトライアスロン連合(JTU)強化指定選手のうち7人のアスリートが2020年の東京パラリンピックの舞台となるお台場海浜公園周辺でレースに臨んだ。パラリンピックよりも短い距離(スイム500m、バイク10km、ラン4 km)の特設コース。試験的なレースで順位もつかなかったが、選手たちは毎年、日本選手権が行われる「トライアスロンの聖地」で楽しみながらレースを展開した。

JTUの富川リーダー「2020年に向ける第一歩になった」

パラ部門の日本選手権はまだ開催されていないが、JTUでは以前から開催の意向があり、また東京パラリンピックに向け2019年にはプレ大会の開催を控える。2018年にはお台場での国内大会実施も検討中だといい、その準備として今回は選手の意見も入れながらコースづくりから始める形で実施にこぎ着けたという。

JTUパラリンピック対策チームの富川理充リーダーは、「一緒にレースをつくろうという感じで、選手も高いモチベーションで臨んでくれた。(雨の中だったが)無事に皆、完走してくれたし、2020年に向けて第一歩になったと思う」と安堵の表情を見せた。

選手には「走りやすかった」と概ね好評で、リオパラリンピック日本代表の円尾敦子(PTVI/視覚障がい)は、「初開催の大会とは思えないくらい、(選手に対して)配慮があった。レース前から相談に乗ってもらえて『こういうところはタンデム(長さのある二人乗り自転車)では危険』という意見にも対処してもらえた」と安全対策やコース設定など運営側に感謝した。

パラトライアスロンはリオの後に障がいによるクラス分けが再編成されたこともあり、東京パラリンピックの実施クラスがまだ決まっていない。決定は2018年1月以降と見られ、選手には目標設定が難しい状況にあるものの、聖地でのレースはよいイメージトレーニングにはなったようだ。


お台場を舞台に開催された
photo byKyoko Hoshino

タンデムで競技をする円尾(左)と脇ガイド
photo byKyoko Hoshino


陸上競技から今季、トライアスロンに本格的に転向した谷真海(PTS4/片下腿切断など)は、「3年後にも、また走れるのかなと思いながら走った。ワクワクする気持ちと、もっと練習しなくちゃとも思った」と振り返った。

一方、木村潤平(PTWC/座位)など不慣れな会場に戸惑った選手もいて、試泳や試走の機会を増やすなど改善を求めた。

また、問題視されていた水質が良くないという問題については、レース前日にJTUから選手に対し調査結果や対策などの説明がなされ、実際にこの日のレースで異常を感じた選手はみられなかった。トップでフィニッシュした佐藤圭一(PTS5/片前腕切断など)は、「問題ないと思う。安心して競技できる会場は必要だが、準備していただいた中で最高のパフォーマンスを行うのが選手の役目」と語り、谷も、「特に気にならなかった。ただ、3年かけてもっと対策が進み、よりよい水質で世界から選手を迎えられたら嬉しい」と改善に期待を寄せた。

2020年には世界中からパラトライアスリートがやってくる。今回のデモンストレーションレースを試金石に、コース設定や安全対策、水質向上など浮き彫りになった課題をひとつずつクリアし、さらによい大会になることを期待したい。

3年後のパラリンピックへ「地固めの1年」

今大会は多くの選手にとって2017年シーズンの締めくくりのレースでもあった。「今日は朝早いのに大勢の応援があって、気持ちよく走れた」と笑顔を見せたのは、昨年のリオパラリンピックで6位だった秦由加子(PTS2/片大腿切断など)だ。10月8日に行われたワールドカップ今季最終戦(アメリカ)こそ優勝したものの、9月の世界選手権(グランドファイナル)では6位に留まるなど、「表彰台から遠ざかり、悔しい思いをした1年だった」と明かす。リオ後に思い切って義足やバイクなどの道具を変えたと話し、「だいぶ慣れてきたので、来季は体づくりにも取り組みたい」と前を向く。


トップでフィニッシュした「夏冬パラリンピアン」佐藤

リオパラリンピック11位の佐藤は元々ノルディックスキーのパラリンピアンでもあり、来年3月のピョンチャン冬季パラリンピック出場も目指す。今季はスキー練習に比重を置いた分、トライアスロンは満足な練習ができなかったが、世界選手権はバイクで落車があった中での9位と手ごたえは感じている。「トライアスロンは心肺の強化にはもってこいの競技。スキーにつなげたい」とマルチアスリートとしての活躍を誓う。



宇田秀生(PTS4/片上腕切断など)は競技歴3年に満たない中、世界選手権4位と昨年6位から躍進。「これまでは『本能』で走っていたが、今季はスイムやバイクのフォームを模索し、頭を使ったレースができたのが成長の要因。まだまだ伸びしろは大きいと思う」とつかんだ自信を来季への糧にする。

谷はパラトライアスロンの国際大会本格参戦1年目で5戦5勝と快進撃。「シーズン前の予想以上の成績で、自分としても驚いている。『まだまだ』と思っていた場所に立ち、勝ってしまったので、課題はありすぎる。でも、まだ強くなれるという感触もある」と充実の1年を振り返った。少し休んでリフレッシュし、冬季練習でさらなる強化を図るつもりだ。

木村は10位に終わり世界との差を実感したリオの後、得意のスイムやバイクも含めて強化を図っている途中だ。世界選手権は8位で、「結果が出るのは来年以降だと思う。2020年を考えると、来年が勝負」と意気込む。

同じく世界との差を実感したという世界選手権7位の円尾は、「国内にもライバルが増えてきたので気を引き締めて体づくりなど課題に取り組みたい」と話し、同じく世界選手権で12位に終わった中澤隆(PTVI)も「減量と動きづくり」を来季の課題に挙げた。

JTUの富川リーダーは今季について、他競技からの転向など新たに参入してくる選手が少なくなかったことから「できるだけ窓口を広くし、いろいろな可能性を探る1年だった。強化というより、東京に向けて地固めの年」と振り返った。来季は選手強化に本腰を入れるといい、お台場でのレース開催やその整備も含め、勝負の年となりそうだ。


text by Kyoko Hoshino
photo by Shugo Takemi
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