2016.05.12

【車椅子バスケットボール】[第44回日本車椅子バスケットボール選手権大会]宮城MAXが8連覇達成で閉幕。リオの日本代表候補が存在感

5月3日から5日までの3日間、東京体育館で開かれていた「第44回日本車椅子バスケットボール選手権大会」。地域大会を勝ち抜くなど全国から集まった全16チームが集い、国内最高峰の熱い戦いを繰り広げた。注目の決勝は、王者・宮城MAX(東北)が古豪・千葉ホークス(関東)を73対44で退け、8連覇を達成。連勝記録をさらに伸ばした。

宮城MAXの藤本怜央がMVPと得点王に


優勝を飾った宮城MAX

MVPは宮城のエース、藤本怜央(4.5)が受賞。4試合で150点を挙げ、11大会連続の得点王にも輝いた。なお、大会期間中、会場には3日間で過去最高となる約7,000人(主催者発表)が詰めかけ、車椅子バスケットボール人気の高まりを感じさせた。

決勝戦の序盤は両チームとも緊張感からかシュートミスが続いたが、藤本のシュートが当たり出すと、ローポインターの佐藤聡(1.0)やリバウンドに強い中澤正人(4.0)らも決め、宮城MAXが流れをつかむ。第1クォーターを16対8のダブルスコアで終えると、あとは千葉ホークスの挑戦を寄せつけず、試合終了まで一気に走り切った。



この試合だけで41得点を挙げた藤本は、「千葉も大きな選手が3人いて、そのプレッシャーにはゴールへの集中を妨げられたが、ファウルされても自分のシュートにこだわることを40分間継続できた」と振り返った。実際、2人、3人にマークされることがあってもシュートを決めきる藤本の得点力は宮城MAXの大きな強みだ。

だが、宮城MAXの強さは日本代表クラスを複数抱える選手層の厚さにある。なかでも、ローポインターの豊島英(2.0)は、持ち前のディフェンス力に加え、オフェンスでも存在感を発揮し、藤本に次ぐ15得点を挙げた。海外リーグでもプレーするエース藤本の不在期間、チームは負け試合も経験したが、キャプテンとしてチームをけん引。「自分がチームの軸として点数を取る役割を担ってきた」と胸を張った。岩佐義明ヘッドコーチも、勝因として真っ先に名を挙げたのが豊島だった。

絶対的エース藤本がいる宮城MAX。藤本が複数の相手ディフェンスを引き寄せることで、フリーになる味方が生まれる。そんな時に、確実にシュートを決められる豊島のような存在がある。セオリー通りのバスケットボールを体現できる宮城MAXの時代は、まだまだ続きそうだ。

宮城MAXを苦しめた3位のNO EXCUSE

とはいえ、そんな盤石の王者を今年、追い詰めたチームがあった。日本代表の及川晋平ヘッドコーチが率いるNO EXCUSE(東京)だ。藤本と同じドイツのクラブチームでプレーするプロ選手、香西宏昭(3.5)を擁するチームは、前回予選敗退の悔しさをバネに、チーム全体の底上げを図ってきた。宮城MAXとは準決勝で対戦。前半を33対33の同点で折り返すと、最後は69対63と振り切られたが、香西の3ポイントシュートなどで粘り強く戦い、王者をひやりとさせた。

試合後、宮城MAXのガード藤井新悟(1.5)は、「焦りはなかった」と話しつつも、「クロスゲームになることは予想していた。一番のスコアラー、香西選手の得点をいかに抑えるかを考えて戦ったが、かなりやられた」と振り返った。


ドイツリーグでは“同僚”の藤本(左)と香西

敗れたNO EXCUSEの香西は、「日本代表で一緒にやっている頼もしい仲間たちだが、敵になったときはやっかいだなと思う。(両チームとも)やることは一緒だが、精度が少し違った」と淡々と話した。一方、宮城MAXの藤本は日本代表でも、ドイツリーグでも“同僚”の香西の強みについて、「いつでもシュートを決めるという余裕と、どういう状況に試合が傾いてもブレないメンタリティ」と言い、「(準決勝では)自分たちが勝ったが、40分間苦しめられた。香西の成長をすごく感じた」とたたえた。日本のトップ選手が競演した両者の対戦は、間違いなく今大会のクライマックスだった。


NO EXCUSEは、3位決定戦で埼玉ライオンズ(関東)を57対45で下し、3位で大会を終えた。

若手、ローポインターが台頭

香西、藤本、そして準優勝だった千葉ホークスの千脇貢(2.5)ら日本代表クラスの選手が、海外のリーグで経験を積む一方で、国内では若手が台頭している。

「僕がドイツに行っている間に成長していてくれた」と香西が語るひとりが、NO EXCUSEの森谷幸生(4.0)。14歳で骨肉腫を発症し、車椅子バスケットボールは18歳で始め、今年で5年目。2020年東京パラリンピックは、「日本代表としてプレーしたい。年齢的にものっている時期だと思う」と目標を語る。及川ヘッドコーチも、「今大会でずいぶん成長した。自主的にウォームアップを始めたりして、やる気、満々という様子で、『よしよし。来年が楽しみだぞ』と思う」と目を細めていた。

また、ベスト5に選出される活躍を見せたのは、2年連続でベスト4に進出した埼玉ライオンズの原田翔平(1.0)だ。原田は11歳でバスケットボールを始め、高校1年で疾患のため、車椅子バスケットボールに転向した。今大会はチームの主軸である藤澤潔(2.0)が不調だったものの、ローポインターのシューターとしてアウトサイドから攻め続けた。チームは4位に終わったものの、「(昨年準優勝から)順位は落ちたが、点差が離れたときに粘れるようなり、チームとしては成長している。僕の仕事はアウトシュートを決めること。そこにこだわりたい」と、さらなる高みを目指す。

今年も常勝宮城MAXが頂点に立ったが、チーム情勢には変化も見られた日本選手権。リオパラリンピック後の次回大会も、熱い戦いが繰り広げられること間違いなしだ。


埼玉ライオンズは千葉ホークスに攻撃を封じられ、準決勝で敗退


エース土子を中心に、8年ぶりの優勝を目指した千葉ホークス


※カッコ内は、障がいの種類やレベルによって分けられた持ち点。

text by Kyoko Hoshino,Asuka Senaga
photo by AFLO SPORT ,X-1
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