2016.10.31

【自転車】[ツールドフランスさいたまクリテリウム2016] 世界トップ選手と一緒に、パラサイクリング選手も走りを披露

10月29日、埼玉県さいたま市の特設コースにて、世界トップクラスの自転車ロード選手らが走りを披露する自転車イベント「J:COM presents 2016 ツールドフランスさいたまクリテリウム」(通称「さいたまクリテ」)が開催された。昨年からプログラムに加わった個人タイムトライアル(TT)では、昨年に引き続いてパラサイクリングカテゴリの選手たちも参加、その走りを披露した。

個人TTには女子、男子ジュニア、パラ選手らも出走

さいたまクリテのレイアウトは、さいたまスーパーアリーナ近くに設置されたスタート地点からアリーナ内部に入り、内部に設営されたステージの前を横切ってスタジアムから外に出て周辺の公道を巡る1周約3.1kmの周回コース。プログラムの柱は、内外のトッププロ選手約50人がこのコンパクトなエリアを20周する「クリテリウムメインレース」と、その前に約7周で行われる、指定地点の通過順位ポイントの合計点を競う「ポイントレース」だ。

このポイントレースの前には、他のレースとは異なった顔ぶれを交えてのコース1周の小規模な個人TTも実施され、健常者の女子4人と男子ジュニア3人、そしてパラサイクリングの6人が出走した。

個人TTの女子、男子ジュニアと並び、パラサイクリングカテゴリのタイムは、参考記録扱い。それでも、リオパラリンピック日本代表の藤田征樹、石井雅史らが多くの観客の前でその走りを披露したことは大きなアピールになったに違いない。

なお、視覚障がいのタンデムは、リオパラリンピック日本代表の鹿沼由理恵の出場辞退により、田中まい(パイロット)の後席にはスタッフ(権丈泰巳日本パラサイクリング連盟理事長)が乗って出走し、タイム計測なしのデモンストレーションという形で紹介された。

TTではこの後に同じ1周を、2016年ツールドフランス総合優勝者クリス・フルームや、世界的なトップロード選手別府史之など、国内外の各チームからセレクトされた実力派のプロ選手ら14人が走ってタイムを競った。


セレモニーに登壇するパラサイクリストたち。参加賞は地元産のお米


さいたまクリテリウムとは?

同大会は2013年に始まり、今年で4回目を迎える。さいたま市が主催し、共催には埼玉県、さいたまスポーツコミッション、さいたま観光国際協会のほかツール・ド・フランスを主催するA.S.O.(アモリ・スポル・オルガニザシオン)が名を連ねる。

ツール・ド・フランス出場の有力チームの選手らが今年は各チーム4人ずつ招待され、日本の有力選手たちを同数ほど加えた合計約50人が、1周3kmほどのコンパクトなコースを周回するレースを行う。今回は、本家ツール・ド・フランスの各賞ジャージ4選手が揃って参戦。夢のような世界のトップ選手たちの走りを、日本で生で見られるとあって、自転車レースファンにはお楽しみいっぱいのイベントだ。コースの案内表示や、黄色いウエアをまとったインフォメーションバイクなども本場と同じスタイル。さいたま新都心に出現した1日だけの別世界でゴージャスなレース会場の雰囲気を楽しみながら、多くの観客たちが今年も熱い声援を送った。


傾斜のあるスタート台から出走する奥村直彦

個人TTは、1台ずつ時間差でスタートゲートから出走しフィニッシュまでのタイムを競うもの。昨年から実施されており、パラサイクリング選手のTT参加は2回目となる。昨年はハンドバイクのプロ選手ヴィコ・メルクライン(ドイツ)など、世界トップクラスの海外選手が複数招待され、世界の競技レベルとカルチャーを日本の一般の大勢の観客の前で初めて披露、日本のパラサイクリングにとっての歴史的な瞬間となった。

また、このイベントでは、個人TTにおいても、本格的なスタート台が用意されている。大会のロゴで華やかに飾られているだけではない。ハンドバイクにとっては、スタート台の角に乗り上げず出走するために適当な長さや角度が必要であるが、日本の多くの大会の簡易的なものとは異なるこのスタート台が、本格的な「魅せるスタート」を切れる貴重な機会を演出した。



今年はパラサイクリング選手の出走は国内に絞られたものの、三輪、ハンドバイク、タンデムなど多様なバリエーション、そしてリオパラリンピックの活躍が記憶に新しい藤田らトップ選手の走りを披露する機会となった。

北京パラリンピックのトラック1kmTT金メダリスト石井は、今シーズンをもってパラサイクリングの競技の一線からの引退を表明している。石井は、走行後の登壇セレモニーのステージで、パラサイクリング選手代表としてコメントを求められると、自分で引退を決めて引退することができる幸せを感じたと言い、また「ファンの前で走ることができてよかった」と感謝の気持ちを表した。

ビッグイベントを開催する意義

親しむ人口が増えてきたとはいえ、日本での自転車はまだまだマイナーなスポーツだ。より多くの一般の観客に、世界標準のパフォーマンスやカルチャーを見せる場を、どのように作っていくか。それは多くのパラスポーツの現場や地域が取り組んでいる課題でもある。
このビッグイベントを企画した、さいたま市スポーツイベント課に聞いた。

「さいたま市は、2010年に「スポーツまちづくり条例」を施行し、ウォーキング、マラソン、自転車などスポーツによるまちづくりを考えていた。翌年10月には『さいたまスポーツコミッション』を創設。そんな中で、ツール・ド・フランスにアジア戦略があるとの情報が入り、2012年7月にオランダの『ロッテルダム・トップスポーツ』と業務提携を結んだ。さいたま市長が、ツール・ド・フランスを視察した際に、主催者のA.S.O.と面会して意見交換をしたことが本イベントのきっかけです」

実務の中心になったのは、さいたま市、さいたまスポーツコミッション、公益社団法人さいたま観光国際協会。A.S.O.が主催となり、1年程度の準備期間を経て開催に至ったという。現在は、さいたま市が主催、埼玉県・さいたまスポーツコミッション・公益社団法人さいたま観光国際協会・A.S.O.が共催という形をとっている。

また、さいたまクリテは、自転車を活用した総合的なまちづくりを行う上で、シンボル的なイベントとして位置づけられている。
「さいたま市でツール・ド・フランスという世界的なブランドを持った大会を開催することは、子どもたちに夢と希望を与え、『スポーツのまち さいたま市』を世界に発信していく上で、そして、地域経済の振興を図る上でも大きな意義がある。また、自転車を楽しむ人が増え、自転車文化の醸成など、今後の自転車を活用したまちづくりにも大きく寄与するものと期待している」

そして、2015年の大会には、女子選手やパラサイクリング選手が参加するようになった。「障がい者スポーツ振興の面でも大きな意味があると考えている」と主催者は語っていた。


TTの最終走者はマイヨジョーヌをまとうフルーム


沿道を埋める観客たち



text&photos by Yuko Sato
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