[第2回日本障がい者バドミントン選手権大会]車いすの長島、立位の女子・鈴木、男子・藤原がシングルス2連覇!

[第2回日本障がい者バドミントン選手権大会]車いすの長島、立位の女子・鈴木、男子・藤原がシングルス2連覇!
2016.12.23.FRI 公開

12月17日、18日、千葉大学にて「第2回日本障がい者バドミントン選手権大会」が開催された。今大会は車いすと立位、低身長、知的障がいの4カテゴリーに分かれ、種目は21。東京パラリンピックから正式競技入りすることもあり、会場には多数のメディアが訪れ、注目の高まりを感じさせた。

車いすの長島がシングルスで圧勝

そんななか、誰よりも気合を高めていたのは、WH1(車いす)男子シングルスの長島理だ。前身の大会と合わせると優勝は12回を数える。2回の棄権を除き、出場すれば必ず頂点に立ってきた日本の第一人者だ。しかし、長島には築いてきた王者のプライド以上に、勝ちたい理由があった。

「実は千葉大は私の母校。他の上位選手は先週、コロンビア大会に出場していましたが、私は日本選手権を最優先し出場を控えました。ここで勝ちたい、その気持ちが他と違ったと思います」

そんな強い気持ちを持つ長島に対し、決勝戦は意外な相手が勝ち上がってきた。日本の車いす界はこれまで長島、島田務、大江守、山見誠治のベテラン4人が引っ張ってきたが、「バドミントンを始めて1年8ヵ月」という小林幸平が、大江、山見を下したのだ。

「奥さん(WH単複優勝の小林悦子)の相手に少しでもなれたらと始めたら、自分がはまってしまって」という37歳。もちろん目標はパラリンピック出場にある。

長島は、そんな小林を寄せ付けなかった。フルゲームの連続で「初めて腕がつった」という小林に対し、冷静な配球で次々と得点を重ねた。21対13、21対10の圧勝。

「本当にうれしい。技術的にはまだ伸びているし、落ちている感じはしません」

一方、敗れた小林は、「これまでの勢力図を崩せたうれしさがある。優勝するには、決勝まで効率よく勝つ必要があるなど、勉強になった大会でした」と収穫の多かった大会を振り返った。

ただ、シングルスで圧勝した長島だが、山見とのダブルスでは日本選手権で初めて敗れた。決勝戦で長島ペアを下し、涙を流して喜んだのは島田・大江組。組んで約4年になる。

「ひと山越えられました」(島田)

「ずっと追いかけてきた長島選手に勝てたことは大きい」(大江)

土をつけられた長島は「もちろん悔しい。でも正直、肩の荷が下りた。次は挑戦者の気持ちでチャレンジしていきたい」と前を向いた。

 

なお女子はW1とW2のシングルスの覇者・小林悦子、山崎悠麻がダブルスを組み、2種目を制した。決勝戦は2ゲーム目を奪われながらも、3ゲームはわずか12本で終わらせている。

「一緒に練習する時間が少なく、2人で球を追ってしまうことが多かった。まだ課題は多いですね」(山崎)

来年も2人は単複で頂点をねらい世界を転戦する。

注目の豊田はシングルス2位

立位で注目が集まったのは、女子のSU5+(上肢障がいなど)だ。第2シードの豊田まみ子は2013年に世界選手権を制し、テレビCMにも起用されるなど、パラバドミントンの普及に一役買ってきた。

 

さらに豊田に加えて、SU5+にはおもしろい役者が登場している。第1回大会の単複を制した鈴木亜弥子だ。小3から健常者に交じってプレーし、2004年の全日本ジュニア大会で2位になった実績がある。

今夏、リオデジャネイロ・オリンピックで金メダルを獲得した高橋礼華・松友美佐紀組が初めて組んで出た公式戦が2007年の同大会で、結果は3位だった。こう比較すれば、鈴木の実績が分かりやすいだろう。

そんな2人は決勝で対決。1ゲーム、鈴木は軽快なフットワークの豊田に15本まで粘られた。しかし2ゲーム目はいかにも重い豪打を次々に沈め、5本で豊田を突き放した。

鈴木は2010年に引退したが、「人生1回ならやれることをやりたい」と、2014年に復帰し東京大会での金メダルを目指す29歳。現在は、日本リーグ2部の七十七銀行に所属し、レベルの高い選手と打ち合い、元世界王者に指導を受ける理想の環境を手に入れている。

一方、豊田は、「シングルスは悔しかったけれど気持ちを切り替え」、翌日、杉野明子とダブルスを制した。今年8月に膝を手術し、長い間、練習できない不安にもがいた末の勝利だった。

「今年は本当に苦しい1年でした。鈴木選手については、トレーナーさんに勝てない相手ではないと言われている。努力すれば届くと信じたい」

竹山(左)と藤原は単複優勝の活躍
竹山(左)と藤原は単複優勝の活躍
男子の立位は藤原・竹山・正垣が2冠 !

3クラスある男子の立位は、SL3(下肢障がい)の藤原大輔、SL4(下肢障がい)の竹山隆人、SU5+の正垣源が単複を制覇した。

もちろんそれぞれが見据えるのは、パラリンピックでの活躍だ。竹山と組んだ藤原は、オリンピック選手を輩出している名門・筑波大バドミントン部を今春卒業し、現在も環境は変えず、母校でレベルアップを図っている。

 

実際、東京大会での採用種目の決定は2017年秋で、どの種目が実施されるか分からないが、「(SL3が)採用されれば、出場のチャンスはしっかりつかみたい。そこを信じて練習するだけです」。

正垣もまたSU5のパラ採用を強く願うひとりだ。今年7月、よりよい環境を求め、アスリート雇用でTポイント・ジャパンに入った。シングルスを制したあと、涙で言葉を詰まらせたのは「負けられない」という重圧から解放されたからだろう。

ただ翌日のダブルスでは、ひたすら笑顔を見せた。初出場のパートナー城所孝彰を気遣い、「6連覇がかかっていることは伝えていなかった」。 プレー中はネット前でゲームメークし、チャンスボールを作って、後衛のパートナーに気持ちよく攻撃させる老練さまで見せていた。

 

なお来年、日本選手権は長崎で実施され、初めての国際大会も東京・町田市で開催される。

text by Yoshimi Suzuki
photo by PHOTO KISHIMOTO

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