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ゴールボール
「ゴールボールって、楽しいね!」パラリンピック教材「I’mPOSSIBLE」を使った授業で小学生がパラスポーツを体験
9月5日、東京都府中市の府中第八小学校5年生のクラスで、国際パラリンピック委員会公認教材「I’mPOSSIBLE (アイムポッシブル)日本版」を使った公開授業が行われた。
<座学>ビデオでルールを学ぶ
今回取り上げたテーマは、視覚障がい者のためのゴールボール。授業は、競技について学ぶ座学と競技を体験する実技の計2時間で構成されている。1時間目の座学の冒頭、担任の木本拓先生が「ゴールボールをやったことがある人?」と尋ねると2人が挙手。「では、知っている人は?」との問いには、半数近くが手を挙げた。この小学校に通う児童の保護者にパラリンピアンがおり、その協力のもと、以前からパラスポーツやパラアスリートへの理解向上に努めてきたというだけに、ゴールボールもそれなりの認知度があるのだろう。
まずはゴールボールを知ろうということで、ビデオを視聴。ゴールボールの歴史の簡単な解説や実際の競技の映像が流された。アイシェードをした選手たちが渾身の力を込めてボールを投げたり、体を投げ出してボールをキャッチする姿を、児童たちは食い入るように見つめ、「難しそう」「ゴールが思ったより広い!」「(ボールに仕込まれている)鈴の音をよく聞き取れるな」など思い思いの感想を述べていた。
競技体験に向けて、さらにビデオでルールを確認。試合をするためには、グループに分かれ、さらにその中で選手3人と、ボールを拾って選手に渡す「ボール係」、得点を付けたり「お静かに!」のボードを掲げる「得点係」、そして実況中継をする「実況係」に分かれる必要があるが、木本先生に「グループごとに係を決めて」と指示されると、子どもたちはさほど時間をかけずに役割を分担した。
ここで1時間目は終了。お楽しみの競技体験のため、体育館へと移動した。<実技>楽しむことで理解深める
今回用意されたコートは2面。それぞれのコートには、あらかじめゴールの位置を示すコーンが置かれ、選手の位置を示すためにタコ糸と養生テープで作られたラインが貼られている。ボールは先生方が工夫し、スーパーなどで配られるビニール袋でくるんだものを用意。実際に使用するボールのように鈴は入っていないが、投げるとカサカサと音がする。
ウォーミングアップとボールを転がしたり受けたりする練習、そしてルール確認の後、早速、プレー開始。木本先生の笛と「プレー!」の合図で始めてはみたものの、選手はアイシェードを付けて視界が遮られていることで、ボールを転がす側も取る側もどこか不安そう。案の定、1試合目を終えた児童たちの感想は「ボールが転がってくる音は聞こえるんだけど、取れない」「(目が見えなくて)耳だけが頼りだから、ちょっとこわい」というものばかり。そこで木本先生から「実況係の人は『○○さんがボールを投げました』『ボールがサイドラインから出ました』、得点係は『点が入りました』、ボール係の人は選手にボールを渡すときに『ここにボールを置きます』など、周りの人たちが声を出し合いましょう」とアドバイス。
回を重ねるにつれ、選手たちは「ボールはキャッチできなくても、体のどこかで止めればいい」「転がすときはできるだけ静かに投げれば、相手が取りにくい」など競技のコツをつかみ始め、キャッチしたらすぐに攻撃側に転じるなど、プレーのスピードもアップ。実技終了後には「ボールを止めた時、めっちゃ気持ち良かった!」「得点できて、やったー!と思った」「またやりたい!」という声が聞かれ、「楽しかった人?」との先生の問いには、全員が手を挙げていた。
木本先生は「パラスポーツは障がいのあるなしに関わらず誰でも楽しめるものだし、パラアスリートは健常者アスリート同様、真のアスリートなんだということを、こうした授業を通じて知ってほしいですね」と期待を込める。とはいえ、授業に取り入れるには工夫も必要と語る。
「現状だけでもいっぱいのカリキュラムの中に、いかにパラリンピック教育を組み込むか、どの学校、どの先生も頭を悩ませているのではないでしょうか。現在は歴史や知識などは社会、実技は体育の一環として考えてみていますが、東京は3年後に迫っているしさらに工夫や検討が必要ではないかと思っています」
児童たちは、今回の授業を通じて、「実際の試合を見てみたい!」「選手と試合をしてみたい!」「ほかのパラスポーツも見たり、体験したりしてみたい!」「東京パラリンピックを観戦したい!」と目を輝かせて語った。また、「ゴールボールはアイシェードをすれば誰でも楽しめますよね」と、話してくれた児童も。パラスポーツへの理解も深めている様子にこの教材と授業の意義が大いに感じられた。
text&photo by Parasapo