日本代表最年少! 高校生スイマー・川渕大耀の素顔
パリ大会でブレイク必至のスター候補を紹介するシリーズ“TOP PROSPECT(=トップ・プロスペクト。「有望株」の意味)”。第6回は、日本代表チームの末っ子、川渕大耀選手です。初々しい一面もありながら、競技に取り組む姿は真剣そのもの。高校生スイマーの素顔にフォーカスしました。
川渕 大耀(かわぶち・たいよう)|水泳
生まれたときから左ひざ関節と大腿部に障がいがあり、8歳のときに切断。10歳で宮前ドルフィンに入り、本格的に水泳を始める。中学3年生で頭角を現し、15歳で初めてのパラリンピックとなるパリ大会日本代表の座を射止めた。広島県生まれ、神奈川県育ち。
高校生の素顔
――2024年4月に高校生になりました。高校生活はいかがですか?川渕大耀(以下、川渕): 充実しています。もともと知っている子がいなかったので、入学当初は不安でした。でも、今ではクラスメイトと仲良くさせてもらっていて。代表合宿などで学校にいけない日は、LINEで課題についての連絡をしてもらうなど、助けてもらっています。
――好きな教科は?川渕: 国語です。好きじゃないのはいっぱいあるんですけど(笑)。あと、いくら遠征で海外に行くとはいえ、英語は苦手です……。
――お昼休みは?川渕: 昼休みに4人くらいで集まってトランプをしたりとか。最近は、本気で大富豪(大貧民)をすることにハマっています。
――合宿や遠征もあって忙しいけど、遊びに行く暇はあるんですか?川渕: 週末をオフに当てているので、みなとみらいのお祭りとか花火大会に行くこともありますよ。
やっぱり水泳に夢中
――これまで行った国で印象に残っているのは?川渕: オーストラリアです。サンシャインコースト大学で行われた合宿に参加させていただいたことがあるのですが、パラリンピックの金メダリストが何人もいて、レベルの高い練習をしているんです。すごく刺激になりましたし、楽しかった。自分の中で一皮むけた感じがしました。
――憧れのブレンダン・ホール選手とも一緒に泳いだ?川渕: はい。400m自由形で世界記録(S9/4分09秒93)を持っているホール選手は、同じ片足の選手。ずっと映像でその泳ぎを見てきたのですが、実際に会って、早く追いつきたいという気持ちになりました。
――日本選手で影響された人は?川渕: 障がい者水泳チーム「宮前ドルフィン」の先輩である日向楓選手は、自分が大きく変わるきっかけをくれたと思います。日向選手が東京パラリンピックに出た当時、自分は何も考えずに水泳をやっていた。でも、日向選手が決勝の舞台に残り、世界と戦う姿を見て、自分もやるしかないと思い、食事やトレーニングを見直しました。
――「座右の銘」を教えてください。川渕: 「やらなきゃできない」「気持ちでいく」。日向選手がよく口にしている言葉です。海外の選手は体格もよくてパフォーマンスも経験も自分とは比べ物にならないけど、最後は気持ちが大事だと思うので。
パリでは最年少
――パラ水泳の先輩たちとはどんな話をしているんですか?川渕: 遠征中は、おすすめのYouTube番組を教えていただいたり。MLBの大谷翔平選手の睡眠や食事、体づくりについても話題になります。僕はふだん野球を見るわけではないけど、大谷選手の話は気になります。
――そんな先輩たちにいろいろな話を聞いたうえで、パラリンピックに向けて準備していることは?川渕: 競り合いに負けて悔しかった体験談を話してくれた先輩もいて。タイムも大事だけれど、競り合いに勝てないと大舞台では戦えないと感じました。(パラ水泳の)国内レースでは競り合ってできるレースは少ないので、健常者のレースに出場する機会を増やしています。
――初めてのパラリンピックになるパリ大会の目標を教えてください。川渕: パリはただ出るだけで終わるんじゃなくて、自己ベストを出し、先頭集団にくっついていきたいです。決勝に進出し、世界の選手たちに、次の世代の選手として引っ張っていくんだっていうところを見せられるよう、精いっぱい頑張りたいと思います。
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くしゃっと笑ったときの表情が印象的な15歳。パリ2024パラリンピックでは、さらにたくましく成長した姿を見せてくれることでしょう。
text by TEAM A
photo by Hiroaki Yoda