パラスポーツで国際交流! 12チーム対抗「あすチャレ!運動会 in Misawa 2018」

パラスポーツで国際交流!
2018.12.05.WED 公開

12月1日、国際色豊かな青森県三沢市に笑顔が咲いた。地元企業、米海軍、航空自衛隊、警察署など12チーム対抗による「あすチャレ!運動会 in Misawa 2018」が三沢市国際交流スポーツセンターで開催された。
あすチャレ!運動会」は日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)の事業として昨春から全国で行われているが、自治体が主催するチーム対抗の「あすチャレ!運動会」は初めての取り組み。さらに今回は、基地のある町・三沢での開催とあって、超ユニークな顔ぶれのチームが揃い、5種のパラスポーツで優勝を争った!

会場となった三沢市国際交流スポーツセンター

東京2020パラリンピックのウィルチェアーラグビー・カナダチーム事前キャンプ地に決定し、パラスポーツへの関心が高まっている三沢市。開会式では、副市長の米田光一郎・三沢市共生社会ホストタウン推進実行委員会委員長が開会の挨拶に立ち、三沢市が「共生社会ホストタウン」に指定される以前から、スポーツにおける子どもたちの交流機会を図っている経緯などを語った。続いて、みさわ国際交流協会の参加者が「i enjoy ! の心で運動会を楽しみます」と力強く選手宣誓し、ファンファーレの音響が鳴る中で運動会は幕を開けた。

みさわ国際交流協会の2人が力強く選手宣誓を行った
三沢市のキャラクターである、ほっき貝の「ホッキーナちゃん」も応援に駆けつけた
国際色豊かな12チームが参加した
【参加チーム】
・米海軍三沢航空基地隊 <WAR EAGLES> <MISS VEEDOLS>
・航空自衛隊三沢基地 <チームシャーク> <航空自衛隊三沢基地>
・三沢警察署 <三沢警察署>
・みさわ国際交流協会 <The Avengers>
・東北電力㈱三沢電力センター <より、そう、ちから。ACTION>
・青森銀行 <チームAOGIN>
・三沢建設業協会 <三沢建設業協会A> <三沢建設業協会B>
・三沢市消防本部 <三代目ホルモンズ>
・市役所上下水道部< アップダウン>

今回は、4つのグループに分かれて3チームの総当たり戦を行い、1勝するごとに積み上げられる得点の合計で順位を決めていく。最初の競技であるゴールボールの前には、アイスブレイクとして、全員がアイマスクを着用し、自分の生まれた季節や血液型に分かれるゲームを行った。参加者たちは、視覚による情報がなくなるだけでなく、言語が異なる相手とコミュニケーションを取り、グループを作らなくてはならない。「夏、Summer」というように日本語と英語を並べて自分の存在を声で伝えたり、「O型、O型、O型……」と大きな声を発し続ける人の元に集まったりして、和気あいあいと“新しい仲間”を増やしていった。

アイスブレイクでは、アイマスクを着用してグルーピングを行った
見えない状態に戸惑いながらも、思わず笑顔がこぼれる

試行錯誤したゴールボール

多くの人が目隠しをした状態での動きを体感したところで、プログラムは、視覚障がいのある人がプレーするパラリンピック競技、ゴールボールのデモンストレーションに進む。ブッキーこと、パラサポ推進戦略部の伊吹祐輔プロジェクトリーダーから、全身を使ってボールをセーブするディフェンスの仕方や、静かに見守りつつゴール後の歓声は許される観戦マナーなどが紹介され、参加者は真剣な表情でルールを学んだ。加えて、ブッキーは、あらかじめ自分の位置とコートに引かれたラインの距離感覚を掴まなければ反則(ボールラインを越えた浮き球を投げること)になったり、ボールに勢いをつける回転投げは自分がいる位置の方向がわからなくなるリスクがあるため難しいという点にも触れ、競技の奥深さも伝えた。

全員が初体験だったゴールボール

その後、いよいよ試合がスタート。静寂の中で行われた米海軍<MISS VEEDOLS>と<三沢警察署>の一戦は、開始早々<MISS VEEDOLS>が威力のあるボールで相手のゴールを打ち破って、そのまま勝利。連戦の<三沢警察署>は、自分の方向がわからなくなってアウトボールを連発する<三沢建設業協B>に対し、自慢の体力で試合を優位に進めていくが、ライトの選手がセンターの選手のお尻にボールを当ててしまう珍プレーが発生。ボールはそのまま自陣のゴールに吸い込まれ、奇しくもそのオウンゴールが決勝点となった。<三沢警察署>の30代男性(交番勤務)は、「どこに球があるかわからず怖かったのはもちろんだが、味方の動きもわからず、連携ができなかった」と悔しがった。

ボールの音に耳をそばだてて、みんな必死のディフェンス

「素早い動きは自信があるが、音の聞き分けに苦労した」と話したのは、<航空自衛隊三沢基地>の20代男性だ。ボールの音に瞬時に反応したものの、逆方向に横っ飛びして失点を重ねてしまった。その<航空自衛隊三沢基地>に勝利した東北電力<より、そう、ちから。ACTION>の50代男性(事務職)は、「常に正面を向くようにして、自分の場所を見失わないよう意識して行うことができた」と笑顔で教えてくれた。

チームの結束を高めたシッティングバレーボール

2つ目の競技は、シッティングバレーボール。ルール説明の後、ブッキーのかけ声に合わせて、お尻を床につけた状態で体を動かし、前後左右に素早く動く練習を行った。航空自衛隊三沢基地の<チームシャーク>20代女性は、「普段狭いところを動く作業はあるが、お尻をずっと床につけたまま動くことはなく……難しかった。でも、名前は聞いたことのあるシッティングバレーボールを実際にできる日が来るなんて、すごくいい機会でした」と充実した表情で語った。

シッティングバレーボールの動きを特訓してから試合に臨んだ
チームワークがものをいう!? 声をかけ合いながらパスをつないだ
4つのコートにわかれ、3チームで1試合3分のリーグ戦を行った
座ったままの慣れないレシーブに手を焼いていた

お昼に地元の特産が!

この日が漁の解禁日! 昼食には地元産のほっき貝が提供された
三沢名物の長いものすいとんも振舞われた

だれもができるスポーツ・ボッチャに熱中!

お昼休憩の後は、ボッチャ、車いすポートボール、車いすリレーが行われた。

だれもができるユニバーサルスポーツとして人気の高いボッチャは、米海軍や各チームの女性陣などに大人気。参加者は慎重にボールを投げたり、相手ボールをジャックボール(目標球)に寄せて頭を抱えこむなどして、ボッチャの楽しさに触れた。

<WAR EAGLES>に勝利した、青森銀行 <チームAOGIN>の20代(融資業務担当)は、「ふだんできないボッチャを体験できただけでなく、ゲームの後にアメリカの方と握手するなど国際交流ができて楽しかった」と声を弾ませた。

ボッチャ体験で笑顔があふれた
真剣な面持ちでボールを目標に近づける

車いすポートボールで国際交流

車いすポートボールでは、多くのチームがパスボールをキャッチする際、車いすの車輪にボールをぶつけたりしてボール運びに苦戦していたが、三沢市消防本部 <三代目ホルモンズ>は、素早いパスワークで<MISS VEEDOLS>に勝利していた。

「Thank You ! 」対戦を終えると、米軍のメンバーは出場した全員と握手を交わし、スポーツマンシップを見せるシーンも。試合の合間には、他チームへの声援を送るなど、国の違いを越えた交流が盛んに行われていた。

車いすポートボールを通して国際交流!
ナイスプレーの後は、ハイタッチで称え合う
やり始めると止まらない!? 車いすポートボールの応援は大盛上がり

白熱した車いすリレー

最後の車いすリレーは、2グループに分けて予選を行い、上位各2チームが決勝に進出できる。車いすバスケットボール用の車いすをバトン代わりにして勝負するが、直線のコースで行った予選は、若く体力のある自衛官や消防士のチームが予想通りの大活躍。
そして、楕円形のコースを走る決勝は、三沢市消防本部 <三代目ホルモンズ>が終盤の驚異の追い上げで、<航空自衛隊三沢基地><三沢警察署>を抜かして1位でフィニッシュ。ヒートアップした選手たちは、ハイタッチして勝利を喜んだ。

上半身の力をフル活用して車いすをプッシュ!
車いすを懸命に漕ぐその表情は必死!
それぞれが工夫を凝らして難しいカーブも車いすを巧みに操作した
車いすリレーは応援も白熱した

いかにも強豪ぞろいのチームを抑え、栄えある優勝を手にしたのは、三沢市消防本部 <三代目ホルモンズ>。消防本部の40代男性(本署勤務)は、「今日は、みんなで声を出してよく笑いました。優勝の秘訣ですか? 楽しんだもん勝ちです!」と話し、笑顔を浮かべた。

優勝した三沢市消防本部 <三代目ホルモンズ>

国際交流都市・三沢市によって開催された「あすチャレ!運動会 in Misawa 2018」は、パラスポーツ運動会の大いなる可能性を感じる一日だった。この日、参加した人たちにとって、障がいのある人への新たな気づきはもちろんのこと、アメリカ人と日本人の互いへの気づき、同じ職場で働く仲間への気づき、そして自分への気づきを得る、特別な機会になったことだろう。

最後は全員で記念にパチリ!

text by TEAM A
photo by Hisashi Okamoto

『パラスポーツで国際交流! 12チーム対抗「あすチャレ!運動会 in Misawa 2018」』