車いすテニス国内トッププレーヤーを一挙紹介! 世界TOP10から新鋭まで網羅
日本は、世界ランキング1位の国枝慎吾と世界ランキング2位の上地結衣がいる車いすテニス強豪国。だが、東京2020パラリンピックで期待されているのは国枝や上地だけではない。ぜひチェックしておきたい男女、クァードクラスの国内トッププレーヤーを紹介する。
~男子~
眞田 卓「まずはグランドスラム出場を目指す」
さなだ・たかし/世界ランキング9位
パラリンピックは、2012年ロンドン大会、2016年リオ大会に出場。ワールドチームカップでは、シングルスで全勝し、日本優勝の立役者となった。インドネシア2018アジアパラ競技大会でシングルス銀メダル、ダブルス金メダルを獲得。
「グランドスラムにダイレクトインできる7位には上がらないといけないと思っています。そのために、(健常の)現役の学生プレーヤーとの練習を取り入れました。健常の若手選手は、トップの車いすの選手と通じるものがあって刺激になります」
1985年6月8日生まれ(33歳)/出身地 栃木県/交通事故による右大腿離断
齋田 悟司「7回目のパラ出場を実現したい」
さいた・さとし/世界ランキング28位
アトランタ大会から6大会連続でパラリンピックに出場している、車いすテニス界のパイオニア。アテネではダブルスで金メダル、北京とリオではダブルスで銅メダルを獲得した。
「一時期、スピンを増やしてミスを減らす試みをしたが、成績を落としていました。そこを改善して、今また調子が上がってきていると感じています。2020年に東京パラリンピックがあるということで現役を続けてきたので、7回目のパラリンピック出場を目指します」
1972年3月26日生まれ(46歳)/出身地 三重県/病気による左肢股関節より切断
鈴木 康平「世界の強豪と対戦するのが楽しい」
すずき・こうへい/世界ランキング12位
現在、国枝、眞田に続く国内3番手のプレーヤー。ワールドチームカップアジア予選に日本代表として出場し、シングルスで2勝を挙げ日本の本戦出場に貢献した。マスターズ(*)は、初の準決勝進出を果たした。
「世界ランキングは自己最高の11位になれたけど、10位以内にはなれなかったので、まずは10位以内を目指したいです。(海外のトッププレーヤーと試合をして)予想よりもすごい返球が来たとき、まだまだ自分も、もっと上手になれるなと思えるのが楽しいです」
1992年7月21日生まれ(26歳)/出身地 静岡県/交通事故による左下腿1/2以上切断
(*)マスターズ:1年間のシーズン終了時点で、男子、女子シングルス上位8名、クァード上位4名のみが出場できる国内最高峰の大会。
藤本 佳伸「さらにプレーの幅を広げたい」
ふじもと・よしのぶ/世界ランキング21位
2008年北京パラリンピック出場。2018年は2月のワールドチームカップのアジア予選においてダブルスで2勝し、本戦出場に貢献した。本戦では急遽代表入りし、国枝、眞田の活躍を影で支えた。
「今年のワールドチームカップはいい経験ができました。来年以降は、常に20位以内をキープし、来年は15位以内を目指したいと思っています。高い精度で何でもできて走れる、幅の広いプレーが必要だと感じています」
1976年5月13日生まれ(42歳)/出身地 徳島県/器械体操の事故により脊髄損傷
荒井 大輔「得意のバックでゲームを組み立てたい」
あらい・だいすけ/世界ランキング42位
中学、高校時代は義足にてソフトテニスを経験。26歳から車いすテニスを始める。昨年のマスターズでは準決勝に進出した。
「今シーズン、世界ランキング20位に入りたかったけれど、後半伸び悩んで40位台でした。技術的な部分は伸びていると思いますが、波があって自分のプレーが再現できないときがあります。来年は20位以内を目指したいです」
1988年5月14日生まれ(30歳)/出身地 岐阜県/右下肢先天性脛骨欠損
水越 晴也「フラットでエースを取れるプレーを」
みずこし・はるや/世界ランキング91位
15歳から車いすテニスを始める。会社の理解があり遠征などにも参戦。平日仕事前などに練習をしている。
「国内では6位だったけど、世界ランキングは91位でした。もっと練習を増やしたり体を鍛えたりして、フラットでエースを取るようなスピードのあるテニスを目指したいと思っています」
1989年12月21日生まれ(28歳)/出身地 愛知県/先天性二分脊椎症
柴山 善邦「基本に返って迷いがなくなった」
しばやま・よしくに/世界ランキング137位
車いすテニスベテランプレーヤーのひとり。29歳から車いすテニスを始めた。ナイターや週末に2時間程度の練習をしている。
「今年はコーチが変わったことでベーシックな練習が増えたように思います。基本に戻ることで試合中に迷わなくなりました。それが今年のマスターズ出場につながったかもしれないです」
1965年1月29日生まれ(53歳)/出身地 愛知県/交通事故による脊椎損傷
藤 良一「ケガなく楽しむのが第一」
とう・りょういち/世界ランキング138位
2004年アテネパラリンピック出場者で、マスターズの常連でもあるベテランプレーヤー。2016年のマスターズでは準決勝に進出した。
「テニスは健康のためにやっています。(今大会も)楽しく、ケガをしないでできればいいなと思っています」
1961年3月17日生まれ(57歳)/出身地 福岡県/転落による脊椎損傷
~女子~
大谷 桃子「来年は世界トップ10入りを目指す」
おおたに・ももこ/世界ランキング19位
東京パラリンピックでの活躍が期待される選手のひとり。アジアパラで銅メダルを獲得。世界ダブルスマスターズに田中愛美とともに初参戦した。
「大学の講義よりも試合を優先することもありますが、講義やテストなどの兼ね合いで出られないことも多く、試合数をこなせていないので、ランキングはこれくらいだと思っています。来シーズンは試合数も増やし、トップ10に入りたいと思っています」
1995年8月24日生まれ(23歳)/出身地 栃木県/薬の副作用による両下肢まひ、右上肢まひ
田中 愛美「自分のテニスで相手を倒せるようにしたい」
たなか・まなみ/世界ランキング10位
現在、世界ランキングでは上地結衣に次ぐ国内2番手の選手。2016年ワールドチームカップで日本代表デビュー。今シーズンは、大谷桃子と世界ダブルスマスターズに初参戦した。
「今年は上位選手に勝つことができたし、世界ランキングも10位を達成できました。来年は、グランドスラムに出場できる7位以内を目指したいです。今の日本女子は、世界で勝つために必要なことを国内で試すことができる、いい環境だと思っています」
1996年6月10日生まれ(22歳)/出身地 埼玉県/転落による脊髄損傷、両下肢まひ
高室 冴綺「全体的な底上げができた1年だった」
たかむろ・さき/世界ランキング25位
田中愛美、大谷桃子と同世代の注目選手のひとり。今年のワールドチームカップで日本代表に選出された。19歳で車いすテニスを始め、2016年21歳でマスターズ初出場を果たした。
「来年から東京パラリンピックに向けたポイント争いが始まると思うので、今年は全体的な底上げを目指して、試合よりも練習量を確保するようにしました。負け癖をつけないためにも、低めのグレードの大会に出て勝利を積み重ねるようにしました」
1995年1月2日生まれ(23歳)/出身地 埼玉県/先天性疾患による両下肢機能障がい
船水 梓緒里「念願だったジュニア世界1になれた」
ふなみず・しおり/世界ランキング24位、世界ジュニアランキング1位
2016年ワールドチームカップ、ジュニアの日本代表として出場。今年は受験生でありながら、世界ジュニアランキングで1位となる。最も注目度の高い車いすテニスプレーヤー。
「受験とテニスを両立させた厳しい1年でしたが、車いすテニスを始めたときの『ジュニアで世界1位になる』という目標を叶えられたのはよかったです。大学に入っても、まずは学業優先、そのうえでテニスも両立させて、東京パラリンピックに出られたらと思っています」
2000年11月8日生まれ(18歳)/出身地 千葉県/運動中の事故による脊髄損傷
堂森 佳南子「より攻撃的なテニスに改良中」
どうもり・かなこ/世界ランキング23位
パラリンピックには、2004年北京大会、2012年ロンドン大会、2016年リオ大会に出場。マスターズの常連のベテランプレーヤー。ワールドチームカップなど日本代表の経験も多い。
「ベテランになってきているが、今までと違う“ナウいテニス”をしていこうと思い、フォームや動きを変えて1年プレーしてきました。マスターズは(ランキングのための)ポイントを気にしなくていいので、練習してきたことを試せる場だと思っています」
1975年6月18日生まれ(43歳)/出身地 静岡県/疾病による脊髄損傷
深澤 美恵「テニスの活動のために試合にも復帰」
ふかざわ・みえ/世界ランキング60位
2004年アテネパラリンピック、ダブルス4位。2008年北京パラリンピックに出場。上地結衣が国内1位のプレーヤーになる前、第一人者として活躍していた。マスターズではかつて6連覇を達成している。
「復活というようなことも言われることがありますが、そこまでの意識はなく、子どもたちにテニスを教えたりしてテニスの活動をするうえで、自分もある程度のレベルでプレーできないとダメだと思い、昨年からまた試合に出るようになりました」
1970年5月21日生まれ(48歳)/出身地 福島県/交通事故による脊髄損傷
須田 恵美「上位選手にどれくらい通用するのか試したい」
すだ・えみ/世界ランキング63位
マスターズ出場は4回目。家のこともしながら、練習時間を確保してテニスに打ち込んでいる。
「目標はマスターズに出場することです。この大会では、世界で活躍されている選手と対戦できるので、自分がどれくらいできるのか楽しみにプレーしています」
1960年7月10日生まれ(58歳)/出身地 宮城県/交通事故による右大腿部1/2欠損
井上 由美子「自分の中のテニスを極めたい」
いのうえ・ゆみこ/世界ランキング32位
43歳からテニスを始める。昨年11月より障がい者アスリート雇用となり、テニス中心の生活を送る。
「練習量や試合数が増えると、ある程度までいけると感じるようになりました。マスターズは、いかに自分のやってきたことが出せるかを試す場と位置づけています」
1959年11月20日生まれ(59歳)/出身地 岐阜県/事故による両下肢切断
~クァード~
菅野 浩二「世界トップ3の牙城を崩したい」
すげの・こうじ/世界ランキング4位
2017年より男子からクァードクラスに変更し、東京パラリンピック出場を目指す。アジアパラで、シングルス銀メダル、ダブルス金メダルを獲得。世界の車いすテニスマスターズに初出場し、3位となる。
「世界ランキング4位にはなったけど、世界ランキング1〜3位の選手が固く、東京でのメダルがまだ見えていないです。オランダの19歳のサム・シュレーダーと16歳のニールス・ヴィンクが要警戒選手だと思うので、この先も注意していきたいと思います」
1981年8月24日生まれ(37歳)/出身地 埼玉県/交通事故による頸髄損傷による体幹機能障がい(四肢まひ)
宇佐美 慧「来年は世界20〜25位が目標!」
うさみ・けい/世界ランキング29位
昨年に引き続き、マスターズ2度目の出場。今年も決勝まで駒を進めたが、2年連続準優勝となった。
「握力がなく、漕ぐ力がないので、パワーアップのためにフィジカルやチェアワークに重点を置いた練習に取り組んでいます。今シーズンは、自己最高の29位まで世界ランキングを上げられました。2019年シーズンは20〜25位を目指したいと思っています」
1990年11月22日生まれ(28歳)/出身地 東京都/転落事故による頸椎損傷
大坪 洋一「まだまだ駆け出しなので、たくさん経験したい」
おおつぼ・よういち/世界ランキング40位
最高齢でのマスターズ初出場を果たす。全身性疾患による病気や事故を経験し、54歳から車いすテニスを始める。現在、アスリート契約でテニスを中心に活動している。
「まずは世界ランキング20位を目指して、東京パラリンピックが視野に入るようにしたいです。精神力とゲームの調整力、リターン力は向上したと思います。とくにフルセットで勝ちきれるようになったのは、精神力の成長があったからだと思います」
1960年2月13日生まれ(58歳)/出身地 東京都/膠原病関節リウマチ、頸椎変形などによる両膝人工関節置換、利き腕感覚障がい、握力低下など
當間 寛「日々やってきていることを試したい」
とうま・ひろし/世界ランキング70位
2004年アテネパラリンピック出場。過去にマスターズ優勝経験も持つ。仕事終わりに日本代表のコーチなどにレッスンを受けている。
「国内大会を中心に試合に出場しています。短い球などを織り交ぜて、相手を翻弄するプレーを試みようと思う。効果的なポイントの取り方を学び、来シーズンに活かしたい」
1966年5月15日生まれ(52歳)/出身地 愛知県/交通事故による脊椎損傷、左大腿切断
(※ランキングは12月3日付け)
※本記事は2018年12月7~9日、「第28回三井不動産全日本選抜車いすテニスマスターズ」での取材をもとに構成しました。
text by Tomoko Sakai
photo by Haruo Wanibe