歓喜か涙か…その差はたった1ミリ。無数の戦略が広がる超頭脳戦スポーツ「ボッチャ」とは?

2019.02.21.THU 公開
「ボッチャ」。それは、たった1ミリの差が勝者と敗者を分ける残酷な競技だ。「地上のカーリング」とも呼ばれ、目標球となるジャックボールにいかに自チーム(自分)のボールを多く近づけるかを競う。それだけを聞くと単純明快なものに思えてくるが、実はあらゆる戦略や思惑がゲームを左右する、選手のインテリジェンスが問われる緻密でスリリングな競技なのだ。

まるで地上のカーリング! 頭脳戦はさながら将棋のよう

ボッチャは、赤ボールと青ボールに分かれ(※)、それぞれが6球ずつボールを投げて、どれだけジャックボールに近づけることができるかを争う競技だ。
※個人戦、ペア戦(2対2)、団体戦(3対3)がある。

1984年のパラリンピックから競技として採用され、2016年リオパラリンピックの混合チーム戦(BC1-2)において日本チームが銀メダルを獲得したことから、その存在を知った人も多いのではないだろうか。元々は重度脳性まひ者もしくは同程度の四肢重度機能障がい者のために考案されたスポーツで、ルール自体は非常にシンプルだが、試合中は様々なテクニックや戦略が繰り広げられる。

あるときはカーリングのように、相手チームのボールを自チームのボールで弾いてジャックボールから遠ざけたり、またあるときは、将棋のように戦局に応じて王将そのものを動かすようにジャックボール自体にボールを当てて動かしたりと、どのタイミングでどんな投球をすべきかを戦局に応じて考え実践する、超頭脳的スポーツなのだ。

試合はボール選びから始まっている!?

競技で使用するボールは選手自身が用意するのだが、ボール選びから試合は始まっていると言っても過言ではない。

競技で使用されるボールのサイズと重さは決まっているが、材質は天然皮革製や人工皮革製、スエード製、フェルト製などがあり、その表情は様々だ。加えて硬さや縫い目、バウンド具合、滑り具合など、それぞれ特性も異なってくる。

選手によっては、会場となる床の素材やボール同士の相性(ぶつけた時の弾け具合など)、対戦相手の癖や予想される戦略などあらゆる要素を考慮し、複数の材質のボールを用意して、毎試合ごとに使用する6球を選ぶこともあるほどだ。

また、1球ずつ投げるため、大事な場面で使いたいボールが手元に残っているかも1つの鍵になる。それゆえにボール選びは慎重を極める。

なお、競技前の練習では相手が使用するボールを確認することもでき、この機会が相手の戦略を読む貴重な情報源となる。試合前にいかに自チームの戦略を立て、いかに相手チームの戦略を読むことで勝利を手繰り寄せるかが重要な要素となるのだ。

超絶コントロールに奇跡の大逆転劇も・・・一瞬たりとも目が離せない!

リオ2016パラリンピック/photo by X-1
トップ選手が参加する試合ともなると、極めて精巧な投球技術に驚くことだろう。その攻防たるや常にミリ単位のせめぎ合いとなる。

ゲーム展開も注目だ。緻密な戦略が張り巡らされているため素人目では、「え、なんであんなところにボール投げたの?」と思ってしまうこともしばしば。しかし、その後の投球において、「・・・!!!だから前の投球であえてあそこに投げたのか!」と後になってその意味に気づくことも多い。

また、負けていたとしても、ジャックボール自体を動かすというテクニックで一気に状況を変えることもできる。つまり、最後の投球で一発逆転もありえる。最後の最後までなにが起こるかわからない、一瞬たりとも目を離せない競技なのだ。


目を見張るようなテクニックと目まぐるしく変わる戦局、そして最後の最後に大逆転もありえるボッチャは、誰が見ても楽しめる競技と言える。
近年はシンプルな競技性からパラスポーツとしての枠を飛び出し、若者からお年寄りまで競技人口も増え、その魅力・奥深さにハマる人が続出している。東京2020パラリンピックにおいては、これまで以上にない盛り上がりを見せること間違いないだろう。

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Text by Tsutomu Mikata(Parasapo Lab
photo by Getty Images

『歓喜か涙か…その差はたった1ミリ。無数の戦略が広がる超頭脳戦スポーツ「ボッチャ」とは?』