パラ卓球で初のジャパンオープン開催。シングルスで友野&垣田が金メダル獲得

パラ卓球で初のジャパンオープン開催!大会レポート
2019.08.15.THU 公開

パラ卓球の「ITTF PTTジャパンオープン2019東京」が8月1日から3日、東京・港区スポーツセンターで開催され、23ヵ国(協会)から集まった約180人の選手たちがしのぎを削った。

日本でITTF(国際卓球連盟)公認の国際大会が開かれるのはこれが初めて。東京2020パラリンピック出場に向けたランキングポイントも取れるとあって、日本からは大挙46人(男子12人、女子34人)がエントリー。クラス1〜5(車いす)、クラス6〜10(立位)、クラス11(知的障がい)のシングルスと団体戦合わせ計25個のメダルを獲得した。そのうち金メダルはシングルスの2個で、団体戦は惜しくも銀メダルにとどまった。

クラス8の友野とクラス10垣田が頂点に

ラリーが持ち味の友野は、世界ランキング13位から東京パラリンピックを目指す

シングルスでは、日本チームの主将と大学生の2人が存在感を発揮した。

まず、19歳の友野有理(クラス8)が、決勝でフィリピンのMEDINA Josephineを3―1で撃破。先のアジア選手権ではメダルを逃し、「必死になりすぎて、目先のことしか見えなくなっていた。今回は楽しもうという気持ちでやった結果、金メダルを獲れた」とにっこり。

ペンドライブ型の垣田。「今は少ない戦型なので、他国の選手もやりにくいはず」

35歳の垣田斉明(クラス10)は、実に7年ぶりのシングルス優勝。決勝では予選で敗れたタイのSILLAPAKONG Bunpot相手に3—1で勝利。試合終了後は涙を流し、「いま世界ランキング24位で東京パラリンピックはまだ遠いが、今大会で10位の選手に勝つことができた。これからが勝負だ」と前を向く。

エースたちの東京に向けた現在地

岩渕は直前のアジア選手権でライバルから「あと1点」が取れず、東京の内定を逃した

注目の集まる自国開催の雰囲気を初体験し「本当にいいイメージができた」と振り返ったのは、世界ランキング4位のエース岩渕幸洋(クラス9)。

予選全勝で勝ち上がったが、準決勝で中国からオーストラリアに国籍を変えた右腕欠損のMA LINの前に散った。左から繰り出される強打に対して防戦一方。さらに、多くの報道陣や応援を背に、集中力を欠いたようにも見えた。「悪い流れを断ち切れなかった。どんなときもいつも通りのプレーを目指したい」。東京本番に向ける課題も残した。

「地元開催のプレッシャーがあったなか、銅メダル獲れたのは良かったかな」
クラス3で銅メダルを獲得した茶田ゆきみも収穫を手にして充実の表情を見せた。

今大会2勝2敗は「最低限の目標クリア」と語った茶田ゆきみ

また、クラス11で昨年の世界選手権3位の古川佳奈美は、準決勝で世界ランキング1位のPROKOFEVA Elena(ロシア)に敗れたが、「来年の東京に向けてもすごい自信になった」と表情は明るかった。

クラス11のエース古川佳奈美は銅メダルの結果

金髪に蝶々の髪飾りで会場の視線を集めたのは71歳の別所キミヱ(クラス5)だ。決勝では1ゲーム先取したものの、韓国のJUNG Young Aを相手に1-3で敗退。異質ラバーに対応できず、ボールに回転をかけてフワリと上げ、相手のネット際に落とす得意のロビングは鳴りを潜めた。

「体がしんどいときこそ、相手の嫌なコースを突くいやらしい卓球ができるが、(日本開催の)今日は元気ありすぎて、気合いも入りすぎていた」と皮肉交じりに語った。

レシーブを強化中の別所。「帰ったらまた新たなことに挑戦したい」
「初めての東京での国際大会で銅メダルが取れてよかった」と加藤耕也(クラス11)

クラス9の岩渕が団体戦クラス10でも手応え

団体戦ではとくにクラス10が注目を集めた。東京パラリンピックを見据え、エースの岩渕が本来のクラス9から、より障がいの軽いクラス10で出場。前日、同クラスのシングルスで金メダルに輝いた垣田と決勝へ進み、もともとクラス10のKARABEC Ivan(チェコ)/DAYBELL Kim(ドイツ)の国際ペアとの全勝対決に臨んだ。

団体戦は最初にダブルス1本、その後シングルス2本を行い、先に2本取ったチームが勝ちとなる。日本チームは岩渕・垣田の息の合ったダブルスで先制点を奪い良い流れを作りたいところだったが、フルゲームの末に破れ先制を許してしまう。だが、次のシングルスでは岩渕がKARABECに勝利。第1ゲームを取られたものの、第2ゲーム以降は強烈なフォアハンドの連続攻撃や思い切ったフォアストレートへのカウンター、「パラ卓球では連続で出すのが効果的」と本人が言うロングサーブなどで主導権を握った。

しかし、勝敗のかかった3番のシングルスで垣田が破れ、日本チームは惜しくも銀メダルに。相手はシングルス準決勝で勝ったDAYBELLだっただけに悔しそうな垣田は、「(時吉監督から)1回目と同じやり方では勝てない。2回目は別の方法を取った方がいいと言われたが、1回目と同じイメージで入ってしまった。そういった発想が自分にはまだ足りない」と振り返り、ラリーの緩急やレシーブの種類などを課題に挙げた。

一方、岩渕は「普段は戦わないクラス10の選手と試合をして強化できるポイントが見つかった。クラス9でも10でも戦えるように技術の幅を広げていきたい」と話し、左足の障がいゆえの弱点であるバック側を相手が狙ってきたことについては、「自分のプレースタイルである(台の)前について速いボールだけじゃなく、ゆっくりなボールも使うというところは効いたし、自分の弱点を出さずに済んだ」とクラス10でも手応えを得た様子だった。

クラス8-10で銀メダルの竹内望(左)と工藤恭子

女子団体はクラス8-10の決勝でドライブ攻撃型と竹内望とカット主戦型の工藤恭子による異質の日本チームがオーストラリアチームと対戦。ストレートで敗退したが銀メダルを獲得した。クラス11でも伊藤槙紀と櫨山七菜子の日本チームが常勝ロシアチームに決勝で敗れ惜しくも銀メダルとなった。

クラス11の伊藤槙紀(右)と櫨山七菜子も銀メダル

日本で初めて開かれたパラ卓球の国際大会は日本人選手への応援の多さが選手たちの背中を押す自国開催の地の利を感じさせた。また、男子クラス7の八木克勝やクラス9の岩渕らシングルスの優勝候補が金メダルを逃した一方で、男子クラス10の垣田と女子クラス8の友野が金メダルを獲り、「今まで隠れて頑張ってきた選手が活躍してくれたのは前向きな材料」と担当の時吉監督。これらの収穫とともに技術力やパワーなどで勝る外国人選手との力差を突きつけられた側面もあった。東京パラリンピックまで残された時間はあとわずか。日本の選手強化は急ピッチで進む。

五輪に出場経歴があるメリッサ・タッパー(オーストラリア)はシングルス(クラス10)2位
豊富なスタミナが武器の八木克勝(クラス7)はベスト8だった

text by TEAM A
photo by X-1

『パラ卓球で初のジャパンオープン開催。シングルスで友野&垣田が金メダル獲得』