ボッチャ国内トップ選手をストロングポイントと共に一挙紹介! 日本選手権ファイナリストたち

2020.01.17.FRI 公開

リオ2016パラリンピックで混合団体BC1-2チームが銀メダルを獲得以来、飛躍的に注目度を高めてきたボッチャ。その各クラス日本一を決める「日本ボッチャ選手権大会」が2019年12月20から22日、愛知県豊田市で開催された。東京2020パラリンピック実施クラスにおいては、優勝者がそのまま東京2020パラリンピック代表に内定という「副賞」もつけられた国内最高峰の戦いで決勝戦に進出したのはどんな選手か!? ここでは、今からチェックしておきたいBC1~4クラスの注目選手とそのストロングポイントを紹介したい。


~BC1クラス~

【優勝】6度目の挑戦で悲願の日本一に! 東京パラリンピックでは個人・団体とも活躍に期待

中村 拓海(なかむら・たくみ)


第17~20回の4連続を含め日本選手権BC1準優勝5回。今大会では、これまで4回決勝で対戦し越えられなかった高い壁・藤井友里子を初めて破り悲願の初優勝を遂げた。

2016年のリオパラリンピック以降の国際大会における実績は、BC1の国内ナンバーワンだ。2018年にイギリスで開催された世界選手権では、団体戦・BC1-2チームの一員として銀メダルの獲得に貢献。さらに世界ランキング1位の選手とタイブレークの接戦を演じてベスト8入りを果たすなど個人戦でも大活躍を見せた。
ときにミラクルを呼び込むその思い切りのよいプレーは大きな持ち味。初めてのパラリンピック出場となる東京パラリンピックでは団体戦、個人戦ともにメダル獲得を目指す。


「自分の良いところは、思い切りのあるプレーができるところ。今大会でも出せたと思うが、もっと今以上に自信をもって投げられるように、アプローチ、プッシュ、ヒットといった基本的な技術の精度をもっと高めていきたい」

右上投げ/1998年7月6日生まれ(21歳)/大阪府出身/脳性まひ/世界ランキングBC1個人9位

【準優勝】日本選手権10回Vの女王。フォーム改造で3度目のパラリンピックを目指す

藤井 友里子(ふじい・ゆりこ)


ボッチャの日本選手権において国内選手最多となる10回の優勝を誇る、現在進行形のレジェンドプレーヤー。第15~18回大会ではBC1クラス最多となる4連覇の偉業も達成している。

パラリンピックには、2012年の北京大会、2016年のリオ大会と2大会連続出場。リオ大会の団体戦ではBC1-2チームの一員として日本ボッチャ史上初となるパラリンピックでのメダル獲得に貢献した。
リオパラリンピック以降は、さらに上を目指してフォーム改造にも着手。それまで苦手としていたロングボールでも勝負できる球威を身につけ、今大会でも大きく進化した姿を見せた。
今大会で東京パラリンピック内定は得られなかったものの、東京パラリンピック日本代表の最有力候補であることは間違いない。


「優勝できなかったことも、東京パラリンピックの代表内定を得られなかったことも悔しい。自分が強化してきた部分の確率をもっと高めて、これからの一つひとつの試合を確実に取っていきたい」

右上投げ/1972年12月1日生まれ(47歳)/富山県出身/脳性まひ/世界ランキングBC1個人19位


~BC2クラス~

【優勝】リオパラリンピック銀メダルチームの盟友に激勝! 3年ぶりの優勝を飾った日本のエース

廣瀬 隆喜(ひろせ・たかゆき)


第8回大会で初優勝を飾って以来、日本選手権BC2で4連覇を含む最多8回の優勝を誇る日本ボッチャ界のエース。今大会の優勝で東京パラリンピック代表の内定を獲得し、2008年北京大会、2012年ロンドン大会、2016年リオ大会に続く4回目のパラリンピック出場を手中に収めた。リオパラリンピックでは持ち味のパワーショット、キラーショットで日本ボッチャ史上初となるパラリンピックでのメダル獲得に貢献。勝負どころで見せた廣瀬の咆哮は数多くのメディアを飾った。

そのリオ以降は団体戦での活躍が目立ち、個人として世界ランキングを上げることができなかったが、今大会では世界ランキング2位の杉村英孝を破って日本一の座を奪還。その実力が世界トップレベルであることを証明してみせた。東京パラリンピックでは、リオ大会に続く団体戦メダルだけでなく、日本ボッチャ史上初の個人戦のメダル獲得にも挑む。


「杉村選手に2連覇をされていたので、優勝を奪還することができて率直に嬉しい。2019年の目標だった“全クラスでメダル獲得”は2020年も変わらないと思うので、東京パラリンピックでも日本代表“火ノ玉JAPAN”が一丸となって、それに向かっていきたい」

左下投げ/1984年8月31日生まれ(35歳)/千葉県出身/脳性まひ/世界ランキングBC2個人23位

【準優勝】3連覇ならずも世界2位の実力を発揮。東京パラリンピックで“リオ以上”を目指す

杉村 英孝(すぎむら・ひでたか)

第14回大会でそれまで孤高のエースだった廣瀬隆喜を破り初優勝を飾って以来、日本選手権BC2で5回優勝。廣瀬と並ぶ日本ボッチャ界のエースである。

パラリンピックには、2012年のロンドン大会と2016年のリオ大会に連続で出場。キャプテン&司令塔も務めたリオ大会では日本ボッチャ史上初となるパラリンピックでのメダル獲得も成し得た。この男の登場なくして国際大会における日本の躍進はなかったといえるほど、日本ボッチャ界にとって大きな存在である。2017年10月にタイで開催されたワールドオープンでは団体戦だけでなく個人戦(BC2)でも金メダルを獲得するという偉業を達成。2019年には、個人での世界ランキングを2位まで上げている。
投球における正確なコントロールと、相手選手を分析し試合の展開を読んで組み立てる戦術眼は、国内BC2では右に出る者なし。今大会での内定獲得はならなかったが、国内外での実績を見れば東京パラリンピック代表に選出されるのは間違いない。団体戦だけでなく、個人戦においても有力なメダル候補である。


「東京パラリンピックの選考対象だったが、そこの意識は今回はまったくなかった。内定が得られなかったのは残念だが、それよりも3連覇できなかったことの方が悔しい。これからの東京パラリンピックまでの一日一日の積み重ねが東京での、リオ以上の結果につながればいいと思っている」

左下投げ/1982年3月1日生まれ(37歳)/静岡県出身/脳性まひ/世界ランキングBC2個人2位


~BC3クラス~

【優勝】強豪ぞろいの“ランプクラス”で3連覇達成。初のパラリンピック切符ゲット!

河本 圭亮(かわもと・けいすけ)


第13回日本選手権はBC4クラスで出場し、12歳にして準優勝を果たしたが、病気の進行のため次第に投球困難になり、14歳でBC3クラスに転向。同じくBC4から転向していた地元のライバルであり盟友の故高阪大喜さんやリオパラリンピック日本代表・高橋和樹らとの切磋琢磨により頭角を現し、第19回日本選手権で初優勝を果たした。以降、今大会の優勝で日本選手権3連覇を達成している。

2019年には国際大会でも活躍。7月に韓国で開催されたアジア・オセアニア地区選手権では、個人戦でリオパラリンピック金メダリストを破る大金星をあげ、団体戦(BC3ペア戦)では高橋和樹、田中恵子とともに銀メダルを獲得した。
ミリ単位のボールコントロールや高度な戦術眼、コート等の変化に対するスキルなどを高い次元で見せるランプクラスのトップ選手たちの中においても、その投球技術、先読み力、対応力は別格。自身初のパラリンピック出場となる東京大会ではメダル獲得に挑む。


「BC3の投球精度が高いだけにできる技術──プッシュやクッション、ヒットだったり──ボールの方向や位置を自由自在にコントロールする、そういう技術の高さに注目してほしい」

ランプ/1999年3月27日生まれ(20歳)/愛知県出身/筋ジストロフィー/世界ランキングBC3個人18位

【準優勝】競技転向3年目で国内最高峰のファイナリストに。視線はパリへ──

有田 正行(ありた・まさゆき)


電動車椅子サッカー日本代表として、2011年フランスW杯で得点王、2013年カナダ大会でMVP&得点王を獲得するなど活躍した後、「パラリンピックに出場するために」ボッチャに競技転向。日本ボッチャ選手権では、第19回大会で初出場トップ3入りを果たすと、第20回大会でも連続3強入り。3回目の出場となった今大会で決勝進出を果たした。

ボッチャ競技歴3年ながらアスリートとしての意識の高さ、勝負強さは国内トップクラス。2019年に中国で開催された広州オープンではBC3選手として日本初となる個人戦の金メダルを獲得した。
河本圭亮との決勝戦で惜敗し、一発勝負の東京パラリンピック内定獲得はならなかったが、ファイナリストとなっただけに2020年の強化指定選手に選出されるのは確実。2020年2~3月に海外の強豪国代表を招いて開催されるジャパンパラ競技大会のメンバーにも選ばれている。


「東京パラリンピックを目指してきたので、その目標が断たれてしまったのは残念ではあるが、切り替えて2024年のパリパラリンピックに出られるように、これから腕を磨いていきたい」

ランプ/1980年3月24日生まれ(39歳)/大阪府出身/脊髄性筋萎縮症/世界ランキングBC3個人45位


~BC4クラス~

【優勝】BC4初の10代での2連覇達成&BC4選手初のパラリンピック日本代表に内定!

江崎 駿(えさき・しゅん)


2017年に開催された21歳以下の世界大会「アジアユースパラ競技大会」で金メダルを獲得した後、第19回日本選手権で決勝進出。古満渉に敗れ優勝はならなかったものの16歳でBC4トップ戦線に躍り出ると、第20大会では内田峻介との10代対決を制し初優勝。今大会では第19回大会の覇者である古満を破って大会2連覇を達成するとともに、日本のBC4選手としては初となるパラリンピック出場の内定第1号となった。

2018年以降は日本代表としても活躍。2017年11月にタイ代表、2019年1月にカナダ代表を招聘して開催されたジャパンパラ競技大会、2018年3月に日本初の国際大会として開催された伊勢オープンにも出場し、世界の強豪選手たちと熱戦を展開した。
腕を振り子のように振り全身を使って投じられるボールの軌道と、若いながらも磨き上げられた戦術眼、勝負強さは国内BC4随一。多彩な素材、硬軟ボールの使い手でもある。


「僕の持ち味はいろんな種類のボールの投げ分け。どこでどんな素材のボールを使うのか、どんな柔らかさのボールを使うのか──予想して見てもらえたらおもしろいと思う」

右下投げ/2001年3月25日生まれ(18歳)/愛知県出身/筋ジストロフィー/世界ランキングBC4個人39位

【準優勝】国内BC4の2強に返り咲く、レフティプレーヤー

古満 渉(ふるみつ・わたる)

3回目の日本選手権出場となった第18回大会で3強入りを果たし、一躍国内トップ戦線に躍り出たレフティプレーヤー。翌19回大会では初優勝を飾っている。第20回大会ではコンディションを崩し準決勝敗退となってしまったものの、試合展開を的確につかみ冷静に進められるそのボッチャの安定感は抜群。優勝こそならなかったものの、今大会でも発揮され、2大会ぶりの決勝進出を果たした。

2017年以降は日本代表の中心選手として国際大会にも出場。2017年11月に開催されたジャパンパラ競技大会、2018年3月に開催された伊勢オープンでも世界の強豪選手と対戦した。今大会での内定獲得はならなかったものの、東京パラリンピック代表最有力候補である。


「今大会での東京パラリンピック代表内定を目指して頑張ってきたが、結果としては2位で内定は得られなかった。でも、そういう可能性がある以上は、選ばれたらいつでも出られるように、そこに向けて強い意識をもってしっかり練習していきたい」

左下投げ/1985年8月20日生まれ(34歳)/広島県出身/脊髄性筋萎縮症/世界ランキングBC4個人75位

※世界ランキングは2019年12月31日付

text by BOCCIA FAN
photo by X-1

『ボッチャ国内トップ選手をストロングポイントと共に一挙紹介! 日本選手権ファイナリストたち』