作業療法士
柴田佑さん
神奈川リハビリテーション病院 リハビリテーション部
職能科 兼 作業療法科 技師
パラスポーツの現場で活躍しているスタッフの職業のうち、理学療法士と並んでよく耳にするのが、日常生活に欠かせない手指の細かい動作などのリハビリテーションを行う作業療法士だ。
リハビリテーション専門病院に勤務する柴田佑さんは、ウィンタースポーツのアルペンスキー(チェアスキー)などに携わっている。
「作業療法士になるために入学した大学の掲示板で障害者スキー普及講習会(日本チェアスキー大会)のポスターを見て、その大会に参加したことがパラスポーツとの出会いです」
その大会で柴田さんが出会ったチェアスキーヤーの多くは、下肢切断や脊髄損傷、頚髄損傷などで、日常生活動作(ADL)を自分で行うのはもちろん、仕事に就くなど社会参加もしていたという。
その後大学に戻り、現在勤務している病院で2ヵ月間の臨床実習を経験。受傷後、急性期病院を経て転院してきたものの、まだ一人で寝返りもうつことも難しく、食事を摂るにも介助が必要な患者を見学・担当したことで、チェアスキーヤーたちの来し方を想像したという。
「速ければ時速100㎞にもなるチェアスキーを乗りこなす人でも、受傷してからその域に至るまでには同様に厳しい道を進んできたのだろうなと感じました」
チェアスキー大会とその後の臨床実習での経験から、重度の身体障がい者であっても、趣味のスポーツをしたり仕事に就くといった社会参加や自己実現ができることを目の当たりにした柴田さん。そうした知識や体験を活かしながら患者に携わりたいと、就職先も決めたという。
作業療法士として患者を支援するには、一人ずつ異なる障がいや性格を把握し、それに応じたサポート方法を工夫することが必要で、そこに難しさがあるというが、やりがいも大きいと語る。
「受傷により身の周りのことが満足にできなくなり、自信を無くしてしまっているからか、入院初期の患者さんから『○○をやってみたい』といった自発的な言葉はあまり聞かれません。でも、リハビリが進み、『○○をやってみたい』という言葉が聞かれると、心境にポジティブな変化があったんだなあとうれしくなります。また、患者さんが目標を達成し『○○ができるようになりました』と報告してくれたり、積極的な言動が増えたりすると、やりがいを感じます」
柴田さんは、物心がつく前から現在に至るまでスキーを楽しんでいるスキー愛好家で、小学4年生から高校3年生までは硬式野球、大学生時代はサークル活動でバドミントンやバスケットボール、軟式野球など多くのスポーツに親しんだスポーツマンでもある。野球をしていたころに肩や膝、腰などを痛め、リハビリをしながら野球を続けているうちに、「自分もリハビリの道に進みたい」と進路を決めた。こうした経験のすべてが作業療法士として仕事をする上で財産になっていると実感している柴田さんは、自身の経験をもとにアドバイスを送る。
「趣味やスポーツ、アルバイトなどの様々な経験が、リハビリ対象者の社会参加や自己実現をサポートするためのヒントになるかもしれません。ですので、学生のうちからいろいろな経験を積み、引き出しの多い作業療法士になっていただきたいと思います」
これは学ぶ内容についても同じだ。
「身体機能の向上を目的とする知識や技術だけでなく、障がい者福祉にも目を向けてみてください。そうすれば、入院中だけでなく、退院後の社会生活も視野に入れた支援ができるようになるかもしれません」
【所有している資格】
作業療法士、福祉住環境コーディネーター2級
【おすすめの資格や学問など】
障がい者福祉