平昌冬季パラリンピックメダリスト凱旋! 大舞台の裏側と選手の素顔に迫る

2018.03.21.WED 公開

帰国から一夜明けた20日、「平昌パラリンピックメダリスト凱旋トークショー」(日本財団パラリンピックサポートセンター主催、日本障害者スキー連盟、フジテレビ パラスポーツ応援プロジェクト「PARA☆DO」協力)が開催された。

日本に持ち帰られた10個のメダルを披露

メダリストはスノーボードの成田緑夢、クロスカントリースキーの新田佳浩、アルペンスキーの村岡桃佳森井大輝の4人。大きな拍手で迎えられた4人は、パラサポのメールマガジンから応募した約100人の一般観覧者の前でメダルを披露した。

金メダル1個を含む5個のメダルを獲得した村岡が「日本に帰ってきて、まず言葉がわかるから安心しました」と言えば、パラリンピック4大会連続メダリストの森井が「シルバーコレクターなので、次も銀メダル目指して頑張ろうかな……ではなく3人が持っている色(金)を目指せるようにしたいです」などと話し、和やかな雰囲気でトークショーはスタートした。

金メダリストになっても「何も変わっていません!」と話した村岡

アスリートならではの思考やこだわり

今回は、ロンドンオリンピック新体操日本代表の田中琴乃さんがMCを務め、アスリートの思考や本音にも迫る。

司会のフジテレビ川野良子アナウンサー(左)とMCを務めたオリンピアンの田中琴乃さん(右)

まずはスノーボードのバンクドスラロームで金メダルを獲った成田に、ベストタイムを更新した最終滑走について質問。
成田は「(勝負のカギとなった)Uターンするポイントを、『リスクはあるけどタイムを削れる』V字にターンした」と攻めの姿勢で挑んでおり、実は「コケる可能性60パーセントだった」と明かす。「守りで恐怖を感じるより、挑戦して笑っている方がいい。たとえ失敗しても笑顔でゴールしたい」と語る金メダリストの言葉に、観客は感嘆のため息を漏らした。

「ケガをしている人や落ち込んでいる人の光になれたのではないかなと思います」と語った成田

一方、パラリンピックに6大会出場を誇る新田はクラシカル10㎞の序盤に転倒した。それでも気持ちを切り替えて巻き返し、ラストスパートは「『自分ならできる、自分ならできる』と言い聞かせて自己暗示をかけた」と金メダルの舞台裏を語った。

すると、成田も「本気モードになると滑りながら意識する部分などをブツブツ言う」と明かし、驚くことに、スピードに乗る中でも目で雪質を見てコースを選び、『ここはいけるよ、ここはぐちゃぐちゃ』と独り言を発しながらレースを進めていると話す。さらにスタートの直前にも、「今日のテーマは何々で、それをクリアすればOK」と口に出していると教えてくれた。

「チャレンジして思い残すことのないレースができたことが僕の中で一番大きい」と森井

イメージトレーニングの重要性について語ったのは森井だ。
アルペンスキーでは、ゆっくりコース下見し、コースを覚えてから挑むと競技について紹介し、「目をつぶって頭の中にイメージできるくらいにしておかなければいけない。スタートバーを切って、滑ることはもちろん、ゴールして電光掲示板を見てガッツポーズするところまでイメージする」と話し、観覧者を驚かせた。

同じアルペンスキーの村岡は「なぜか不安になるスタート前。緊張をしていて、ゴーグルをめちゃめちゃ触っている」というルーティーン(?)を披露。
先輩の森井にならって、用具にもこだわる。「体に左右差があるところ不利なので、シートが重要。大学進学を機に体幹を鍛えるトレーニングを取り入れた」

「前回はメダルを獲れなかった」と8年ぶりの金メダルを喜ぶベテラン新田

クロスカントリースキーの新田は、実は大会前に、スキー板が折れてしまい、急遽新しい板を用意したという。
ワックスを塗る専門の「ワックスマン」を含めて「出会い」が勝利のカギになったこと、そして、気象予報の細かいデータが日本チームの力になったエピソードも話した。

平昌パラリンピック期間中、同部屋だった成田と新田。競技を越えて交流が生まれた

YouTuber成田緑夢の収録にメダリストが参加

終盤、トークを盛り上げたのはYouTuberの顔を持つ成田の話題。
「稲妻のような誘い」でメダリストたちをカメラの前に集め撮影したといい「急に呼び出されて怖かった(笑)」と村岡。「この場を借りてごめんなさい」と成田が返し、アスリート同士の交流が垣間見られた。

この日の登壇者(左から)司会 川野、MC 田中、森井、成田、新田、村岡、日本財団パラリンピックサポートセンター 山脇会長

それぞれの見据える今後

イベント終盤になると、メダリストたちは今後の抱負を述べた。

「パラリンピックが終わり、いまはこの喜びに少しだけ浸りたいなと思います。体を休め、リフレッシュしたのち、新たな挑戦をしていきたいです」(成田)

「今回は2度目のパラリンピックで、とても緊張しました。いままで上の選手を追うだけの挑戦者の立場でしたが、今回ちょっと成績を残しすぎてしまったので(笑)でも、それによって応援してくれる人も増えたと思うので、今後はこれをプレッシャーではなく、力に変えられるように、気持ちを作るところから始めたいと思います」(村岡)

「アルペンスキーの男子では僕ひとりしかメダルを獲ることができなかった。ただ、日本はすごく強いチームです。北京を目指すときには強いチーム『だった』ではなく、『強いチーム』として臨めるよう、一丸となって強化していきたい。そしてまた個人的には新たなチャレンジとして、モータースポーツにチャレンジしてみたいです」(森井)

「みんな北京を見据えた発言をしていてすごいなと。僕自身もやめないですけど(笑)平昌に入る前、何回も倒れて、『もう、やだな』と思うくらいのトレーニングをして気持ちよく平昌に臨んだので、これを4年間続けるのはいやでいやでしょうがない(笑)今はメダルの余韻を楽しみながら、でも(2人の)子どもたちがきっと『メダルを獲ってほしい』と言うと思うし、(北京への)エネルギーが湧き出てきたときにはもっと強くなっていると思うので、楽しくスキーを続けていきたいです」(新田)

テレビなどで平昌パラリンピックを応援した100人以上が選手の生の声を聞いた

友人と参加した女性は「テレビで応援したアスリートに直接『おめでとう』と言いたかった」と観覧の理由を語り、また小学4年の女の子は「いつもYouTubeで見ている成田選手は、競技中も笑顔ですごい」と感想を話してくれた。

また、このトークショーはライブ配信され、全国のファンに生の声が届けられた。

※本イベントはパラサポメールマガジンから応募した約100名が参加。パラスポーツやパラサポの最新情報をお届けするパラサポメールマガジンのご登録はこちら

text by Asuka Senaga


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