-
- 競技
-
バドミントン
[第1回日本障がい者バドミントン選手権大会]東京パラ新種目の熱き戦い。混戦の男子立位・上肢障がいクラスは17歳の今井が制す!
福岡県久留米市の西部地区体育館で2月6日と7日の2日間、第1回日本障がい者バドミントン選手権大会が開催された。2015年4月設立の日本障がい者バドミントン連盟が開く初めての全国大会。選手の育成と競技力向上、そして競技の普及と発展を目指して門戸を広く開放し、身体障がいの選手に加え、知的障がい、聴覚障がいなどの選手も、ともにシャトルを追った。
決勝トーナメントは手に汗握る接戦の連続
パラバドミントンは、大きく分けて車いすと立位のカテゴリーがあり、それぞれの障がいごとにクラス分けがされている。
6日に行われたシングルスの決勝は、各クラスとも日本チャンピオン決定にふさわしい好ゲームが繰り広げられた。男子WH1/2(車いす)は、世界ランキング9位の長島理と同10位の山見誠治の対戦。第1ゲームを長島が先取すると、山見が第2ゲームで反撃。前後に揺さぶりをかける冷静な配球でじわじわとリードを広げ、先にゲームポイントを握った。だが、「フルセットは避けたかった」という長島が圧巻の粘りで追い上げ、最後は山見のミスを誘って逆転勝ち。薄氷の勝利に安どの表情を見せた。また、女子車いすカテゴリーでは、山崎悠麻がシングルス・ダブルスともに制した。
男子SL3(立位/下肢障がい)決勝では、21歳の藤原大輔が、このクラスで圧倒的な強さを誇る末永敏明をついに撃破。「過去の対戦では緊張から焦りがあったけど、今日は落ち着いていた」とライバルからの初勝利を分析する。パラリンピック正式競技となる2020年の東京を見据えて芽生えた「自分が強くなって国内の底上げを」という気持ちが、結果につながった。
今大会、とくに注目が集まったのは、男子SU5(立位/上肢障がい)の今井大湧だ。高校2年の今井は右腕欠損であるが、競技の主軸は高校の部活動だ。両親からパラバドミントンの話を聞いて連盟に登録し、初めて障がい者の大会に参加した。「同じ障がいの人を見たことも、プレーしたこともなかったので緊張した」と言うが、コートに立てば堂々としたもの。準決勝で優勝候補の浦哲雄を破り(第1ゲーム後に浦が棄権)、決勝では予選ブロックでフルセットで負けた正垣源に、見事リベンジを果たして優勝した。目標をインターハイ出場に定める17歳にとって、2020年への関心はまだ低いが、「将来の選択肢は少し広がったのかも」と話し、クールな表情を少し緩めた。
7日のダブルスで会場を盛り上げたのは、男女のSU5クラス。女子は鈴木亜弥子・豊田まみ子組が、中学生コンビの鷹尾すみれ・木林歩美組にストレート勝ち。男子は正垣源・小原宏平組が、勝田健・金田栁吾組をフルセットで破り優勝した。男女とも準優勝ペアはいずれも聴覚障がいの選手。敗れはしたが、王者に肉薄した戦いに会場からは大きな拍手が送られた。
東京パラリンピックに向けた成果と課題
上を目指す選手にとって、2020年の東京パラリンピックは間違いなく大きな目標である。女子SU5で単複2冠の鈴木は、2010年の広州アジアパラ競技大会でのシングルス優勝を機に第一線を退いていたが、東京の正式競技にパラバドミントンが採用されたことを受けて復帰を決め、コートに戻ってきた。その間に台頭し、シングルス世界ランキング2位につけている豊田の活躍にも「刺激を受けた」と言う。今大会はふたりの直接対決はなかったが、切磋琢磨しながら世界の頂点を狙うつもりだ。
また、男子SL4(立位/下肢障がい)の高校1年の竹内俊平も東京パラリンピックを視野に入れる選手のひとり。パラバドミントンの大会への参戦は今回が初めてだったが、小学4年から競技を始めた経験を生かしてシングルスでは決勝に駒を進める活躍を見せた。「国際大会にも積極的に挑戦して、実力をつけていきたい」と、力強く抱負を語る。
2020年に向けて、「さらなる普及活動の強化が当面の課題」と話すのは、日本障がい者バドミントン連盟の平野一美理事長だ。競技人口は増加傾向にあるものの、世間の認知度は低いままだという。とはいえ、パラバドミントンは競技規則がほぼ一般のバドミントンと共通で興味を持ちやすく、加えて、スピード感ある立位のカテゴリー、前後のチェアワークや戦術的な駆け引きも楽しめる車いすカテゴリーと、それぞれの特徴を楽しめる奥の深い魅力がある。今後はそうした情報発信にも力を入れ、引き続きパラバドミントン界の発展に力を注いでいく。
text by Miharu Araki
photo by X-1