[2016ジャパンアイススレッジホッケーチャンピオンシップ]ピョンチャンを目指す日本は全敗。最下位に沈むも復活の足掛かりに

2016.02.16.TUE 公開

イタリア、チェコ、韓国、日本の4ヵ国による強化試合「2016ジャパンアイススレッジホッケーチャンピオンシップ」が2月8日から13日の日程で、長野市のビッグハットで行われた。大会は、決勝で予選全勝のイタリアを延長戦の末に破った韓国が優勝。日本は3位決定戦でチェコに先制するも逆転負けを喫し、最下位の4位で大会を終えた。

ディフェンス崩壊で痛恨の連敗

イタリアは世界選手権5位の強豪、チェコは日本とともに来季はBプールに降格するものの、バンクーバーとソチパラリンピックで5位と地力のあるチーム。そして、韓国はピョンチャンパラリンピックのホスト国である。ソチパラリンピック出場を逃し、ピョンチャンを見据えてチーム再建中の日本にとって、いずれも申し分のない対戦相手といえる。

予選ラウンドの初戦、まず日本はチェコと対戦。ペナルティで2人少ないピンチを迎えた日本はGK福島忍がファインセーブを連発してピンチをしのぐ。だが、第2ピリオドにゴールを許すと、流れを相手に握らせてしまい、0対1で初戦を落とした。

シュート数は、チェコの23本に対し、日本は9本。痛い連敗を喫した2戦目のイタリア戦でも、試合を通してわずか8本に抑えられてしまう。とくに日本の動きの良いファーストセットが、ゴールを狙って攻撃的なスタイルで前に上がりすぎたために、逆にディフェンスが薄くなったことが、結果に響いた。

待望のゴールを決めた三澤

そんな中で、一筋の光明が見えたのが3戦目の韓国戦だ。第1ピリオドにいきなり4失点と苦しいスタートとなったが、第2ピリオド13分38秒に三澤英司(FW)が待望の得点を挙げると、リズムが徐々に戻り、最終ピリオドには熊谷昌治(FW)がパワープレーのチャンスで追加点。さらに試合終了10秒前に、吉川守(FW)がゴール前の混戦から針の穴に糸を通すような鋭いパスに反応し、鮮やかなゴールを決めた。試合は序盤の失点が響いて3対5と敗れたが、後半は相手の動きをある程度封じることができた。

児玉が公式戦初ゴール! チーム力の底上げに期待

「この流れを次につなげる」と強い意志で臨んだ決勝ラウンド。イタリアとの準決勝は敗れはしたが、今大会初の先制点を熊谷がマーク。また、第2ピリオドにセカンドセットで出場した児玉直(FW)が公式戦初ゴールを決めたことは、チームにとってひとつの収穫だといえる。

とはいえ、チェコとの3位決定戦も厳しい戦いに。熊谷が2ゴールを決めてリードを広げるが、チェコがすぐさま追いつき試合は延長戦に突入。相手のスペースにパスを出すも精度が甘く、引いて守るディフェンダーに簡単にカットされる場面も見られ、ついには体力と集中力が尽きてアグレッシブさを欠いたところで、チェコに決勝点を決められた。

激しくデイフェンスされる熊谷

日本代表の中北浩仁監督は、「悔しい大会になった。プレーヤーが9名で2セット作れないとはいえ、同じミスを繰り返している」と表情を曇らせる。その一方で、「後半になるにつれ、テーマの“勝つ意思”が浸透していった。とくに2つ目のセットが大会を通して無失点だったことはひとつの成長」と評価する。

経験を次のステージへの糧にする意識づくりを

自国で開催した今大会は大きな意義がある。近隣諸国同士で頻繁に交流試合が組める北米やヨーロッパのチームとは違い、日本は立地的・経済的理由から、同じように国際マッチを開くことが難しかった。日本で最後に開かれた国際大会は、2013年のBプール世界選手権にまでさかのぼる。そこで、今回はインターネット上で賛同者を募るクラウドファンディングに挑戦。資金調達に成功し、イタリアとチェコの参戦が実現した。また、その裏には日本と各国が長年にわたって築いてきた“フレンドシップ”があった。初来日のイタリアのキャプテン、アンドレア・チアロッティ(FW)は「日本はトリノ(パラリンピック)からのトモダチ。今回、一緒に戦えてうれしいし、日本は必ず復活すると信じているよ」と話してくれた。

また、時差のない日本で開催したことは、実戦を通して試合勘を養ううえでも非常に重要な意味があった。キャプテンの須藤悟(DF)は、それを「次に生かすこと」が何より重要だと語る。「日本人同士の練習なら通るパスも通らない。それはわかり切ったことで、海外勢の厳しいプレッシャーと緊張感の中でも冷静さを保ってシュートまで持っていく、という状況判断をこうした大会で発揮しないと。いつまでも“勉強”で終わっていては意味がない。この経験を、ひとつ上のレベルの練習につなげ、もう一度頑張ります」

ファンやサポーター、クラウドファンディングの支援者、そしてライバルたちの思いも詰まった今大会。それらを無駄にせず、選手とスタッフが一丸となった強化への取り組みが、ピョンチャンへの道を照らしていく。

text by Miharu Araki
photo by X-1

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