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車いすラグビー
リオを目指す日本代表の“魂のぶつかり合い”を描く。巨匠・崔洋一氏のドキュメント映像が完成
今夏のリオパラリンピックでメダル獲得を目指す、ウィルチェアーラグビー日本代表に映画界の巨匠である崔洋一氏が密着! 「ノンフィクションW 格闘球技ウィルチェアーラグビー 十二人の戦士と百の言葉と題した43分間のドキュメント映像として完成した。そこには監督のどんな思いが込められているのか。
パラスポーツの中でも“最も激しい競技”といわれるウィルチェアーラグビー。一方で、障がいレベルによる“クラス分け”によって、精細で高度な戦略的な要素も必要とされる。車いす同士の激しいぶつかり合いもさることながら、そこに投影される選手たちの“魂のぶつかり合い”も必然と凄まじいものとなっていく。観客は、そこにスポーツとして面白味を見出し、選手たちに惹きつけられていくのだろう。
崔監督もまた、そんな選手たちに魅了されたひとり。強化合宿の行われている体育館に足を運ぶ中で「彼らと同じ時間を共有したい」という思いが強くなり監督自身が企画を練り上げ、作品化が実現した。
2020年東京パラリンピックの開催決定以降、パラスポーツの注目度は急速に高まり、メディアで取り上げられることも多くなってきた。放送に先立ち、都内で行われたトークショーで、崔監督は「どちらかというと『頑張っていますよ』とか『福祉的観点でいい試みですよ』的なメディアの触れ方はあったが、もっと、きちんとスポーツとしてそこに参画していることやアスリートとして非常に高い意識を持ってプレーをしている姿に対する、僕のひとつの共感を出したかった」と熱っぽく語る。
単に練習や試合の合間をカメラで追うだけでなく、インタビューの時間をきちんととり、彼らの“言葉”と向き合った。選手はもちろん、多くの関係者に取材を重ねただけに、編集作業では、どこにスポットを当てていくか、その落としどころに悩みに悩み、大変な労をなしたという。
選手たちから発せられた言葉を丁寧に拾いあげ、さらには行間や空気感を大切に扱いながら紡いでいく作業を経て、監督の言う「選手たちへの共感」を表す形となって43分に収められた。
「半年間の密着取材で1000を超える言葉が記録されている。さらに言葉というのは記憶から出てくるもの。彼ら自身の存在が“言葉”だ」と。
監督がこだわったという“選手との距離感”は、選手たちへの敬意への現れとなって伝わってくる。43分間があっという間の見どころ満載の本作品は、ウィルチェアーラグビーだけではなく、パラスポーツ界全体への興味を高める一作となっている。
なお、本作品制作にあたり、日本財団パラリンピックサポートセンターでは、パラリンピック競技団体との共同オフィスをインタビュー場所として提供するなど協力を行った。
※「ノンフィクションW格闘球技ウィルチェアーラグビー 十二人の戦士と百の言葉」は3月12日(土)午後1:00 WOWOWプライムで放送予定
text by Chizuko Totake
photo by Parasapo