パラ・パワーリフティングの金メダリスト、ラーマン選手が来日。250kg挙上に子どもたちから大歓声!

2017.07.25.TUE 公開

7月24日、日本財団パラリンピックサポートセンター(パラサポ)は、「i enjoy !セミナー パラ・パワーリフティング 金メダリスト・ラーマン選手がやってくる!」と題した夏休み子ども・親子向けイベントを日本財団ビルで開催した。

この催しは、子どもたちにパラリンピックやパラスポーツについて知ってもらうための企画のひとつで、新聞やSNSなどを見て応募した小中学生らが参加した。

今回の主役は、パワーリフティング男子107kg超級でロンドンとリオパラリンピックを制したイランのスター選手、シアマンド・ラーマン。リオ大会では史上初の300kg突破を達成し、305kgの世界新記録で金メダルを獲得した。

司会は、よしもとクリエイティブ・エージェンシーの”御茶ノ水男子”で、笑いを交えながら会場を盛り上げた。

パラリンピックやパワーリフティングについて学ぶ

進行役の御茶ノ水男子・おもしろ佐藤(左)、しいはしジャスタウェイ

イベントは、今年4月に全国の小学校に配布された国際パラリンピック委員会(IPC)公認教材「I’mPOSSIBLE」を活用したクイズからスタート。パラリンピックシンボルの「スリー・アギトス」の使用色についての質問や、マラソンと車いすマラソンの世界記録は、どちらが速いかといった質問が子どもたちに投げかけられた。

子どもたちの笑い声がこぼれてきたところで登場したのが、パワーリフティング選手のマクドナルド・山本恵理。競技内容やルールについて解説した。

「パラ・パワーリフティングはベンチ台で仰向けになり、どれだけ重いバーベルを挙げて下ろせるかという競技。健常者の間ではベンチプレスといいます。でも、ただ挙げるだけでなく、胸の上でしっかり止めてから挙げないとダメ。白と赤の旗を持った主審の3人のうち白を2人挙げたら成功。3回挙げたうち一番重かったのが記録になります。パワーリフティングとは、重い物を美しく持ち上げる競技なんです」

このほかパワーリフティングは体重別の競技であること、大会では名前がコールされたら2分以内に寝ころび準備しバーベルをラックから外してスタートしなければいけないことなども易しく説明された。

参加した子どもたちは真剣にメモを取る
パラサポスタッフで“パラスポーツ通”の前田がレクチャー

子どもたちの声援を受け、ラーマンが圧巻のパフォーマンス!

 

子どもたちがパワーリフティングについて理解したところで、いよいよラーマンが登場した。

優しそうな笑顔を浮かべながら、169kgの大きな姿が現れると会場のあちらこちらから「でっかーい!!」という声が上がった。ラーマン選手は「素晴らしい国に招いてくれてありがとう」と挨拶し、さっそく試技に入った。

リオ大会では305kgを挙げたラーマンだが、3日後にエキシビジョンマッチを控え、「220kgを挙げます」と控えめに宣言した。

しかし徐々に重さを上げ、220kgを軽々と持ち上げたばかりか3度も上下させるパフォーマンスで会場はヒートアップ。すると、傍らにいたコーチのアハマンド氏もノリのよさを発揮し「もっといこう」と促し、最終的に250kgを挙上。会場は歓声に沸き、身を乗り出して試技を見ていた子どもたちは、一瞬でラーマンの大ファンになった。

会場の“ラーマンコール”にあわせて重量を上げていく。子どもたちはラーマンの実技に夢中!

会場を訪れていたパワーリフティング男子80kg級の選手で186.5kgという日本記録を持つ宇城元は、「人間の域を超えていますね……。パラの場合、健常者と違って下半身や背筋を使えず、上半身の筋肉だけで挙げるんです。にもかかわらず、健常者の記録を上回る記録を出しているんですから」と舌を巻いていた。

また、審判員を務めた元世界チャンピオンの吉田寿子日本パラ・パワーリフティング連盟事務局長は「皆さんからはニコニコしたラーマンさんしか見えなかったと思いますが、挙げる瞬間、表情が変わって集中しきった顔がすごかった。気持ちの切り替えにすごみを感じました」と振り返っていた。

イベント中におもしろ佐藤と自撮りをするお茶目な一面も
イランからやってきたパラリンピアンに質問!

「東京パラリンピックの金メダルを楽しみにしていてね」

優しい笑顔を見せる世界チャンピオン

驚きのパフォーマンスを終えると、ラーマン選手への質問コーナーが設けられ、次から次に子どもたちの手が上がった。

――世界新記録のバーベルを持ち上げたときの気持ちは?

「リオ大会で持ち上げたときは本当に幸せな気持ちでいっぱいでした」

――どうやったら大きくなれるんですか? 僕はサッカーをやっています。

「秘訣はよく食べることと練習すること。頑張ってね!」

――私は部活でダンスをやっていて、何度か辞めたいと思ったことがあります。そういうことはありますか? もしあったら、モチベーション維持の方法を教えてください。

「最初にイラン代表になったとき120kg挙げられました。1年後のジュニア大会では、230kgを挙げて世界記録を出せたんです。でも、あるとき同じカテゴリーにライバルが登場して……。そのとき、大変なこともありましたが、もっと練習しよう、もっと練習しようと思うことで、乗り越えることができました」

――重い物を持ち上げるとき、落ちないか心配になりませんか?

「いつも練習していますし、練習では3人、公式大会では5人の補佐がつくので落とす心配はないんですよ(笑)」

イベントに参加した子どもたちから様々な声が聞かれた。

「お相撲さんより大きいと思った」(大槻泰雅くん)

「パワーリフティングのことがよく分かった」(大槻龍生くん)

「バーが曲がるほど重たいものを持ち上げてすごいなって。パラリンピックという大会についても前より知ることができました」(酒井友心さん)

未来ある子どもたちにラーマンからは「伝えたいのはできないことは何もないということ。トライすればできるようになることを忘れないで」というメッセージが送られた。

さらに「東京パラリンピックでは金メダルがとれるように頑張っているので楽しみにしていてね」というラーマンの力強い言葉でイベントは幕を閉じた。

終了後、日本パラ・パワーリフティング連盟の吉田理事長らとパチリ
子どもたち全員にイランチームのピンバッジをプレゼントするラーマン

text&photo by Parasapo

『パラ・パワーリフティングの金メダリスト、ラーマン選手が来日。250kg挙上に子どもたちから大歓声!』