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車いすテニス
[世界車いすテニス国別選手権]日本勢は男子、女子、クァードがメダル獲得! ジュニアは「チームオブザイヤー」を受賞
5月23日から28日に、東京・有明コロシアム、有明テニスの森公園で「世界車いすテニス国別選手権」が行われた。初の国内開催として注目された大会で、日本勢が好成績を残した。
国枝擁する男子は、フランスに敗れて準優勝
世界ランキング5位の国枝慎吾擁する日本男子チームには優勝の期待も高かったが、惜しくも優勝はならなかった。
4月に右ひじの手術を受けた国枝は、今大会が復帰戦で、練習量も少なく、1月以来、4ヵ月ぶりの公式戦の出場という状態だった。それでも決勝まで日本を導いた。
「最低限の責任は果たしたかな。復帰戦はもう終わり」と話した国枝。シングルスでは同1位のステファン・ウデに敗れたが、「次の全仏で、ウデのホームでリベンジしたい。4-6、2-6というスコアだったので、リオではやれると思う」とすでに気持ちは次戦に向かっていた。
日本男子は、第1試合に眞田卓、その後にエース国枝という布陣。シングルスの2番手として活躍した眞田も、決勝で同3位のニコラス・ペイファーに敗れはしたものの、世界ランキングトップ10の実力を発揮し、日本の準優勝に貢献した。「今まで出場した中で、いちばんいい成績を残せた。来年は優勝を目指したい」と前を向いた。
粘り強さを示した女子とクァード
女子とクァードは3位決定戦で勝利し、銅メダルを獲得した。
打倒オランダを目指して戦ってきた日本女子チームだったが、準決勝で中国に敗れた。大会前から、同3位の上地結衣は、ことあるごとに中国を要注意国として挙げていたが、危惧していたことが現実となった。
そして、3位決定戦に回った日本は、ロシアと対戦。シングルス1試合目に若手の田中愛美が起用された。前日の敗戦の流れを変えることも目的のひとつだった。0-6、2-6で敗れはしたが、終盤は田中らしい攻撃も見られ、今後の活躍を期待させた。シングルス2試合目の上地は、6-1、6-2の危なげなく勝利し、勝敗はダブルスに持ち越された。
ダブルスでは、上地のパートナーにリオパラリンピック日本代表候補の二條実穂が起用された。甘いボールがあればしっかりと打ち込んでいく二條がチャンスボールを作り、それを上地が決めるというコンビネーションがはまり、6-4、6-1のストレートでロシアペアを破り、銅メダルを手にした。「東京で行われた世界車いすテニスで3位という成績を残せて、最後に、勝つことができてよかった」と上地は振り返った。
クァードは、ラウンドロビン(予選)1勝1敗で強豪アメリカと対戦。負ければ決勝トーナメント進出は果たせないという厳しい状況の中、シングルス1試合目の川野将太が6-3、3-6、6-1で勝利。続くシングルス2試合目、諸石光照は、同2位のデビッド・ワーグナーに2-6、2-6で敗れた。ダブルスは、パラリンピック3連覇のワーグナー、ニック・テイラー組と、諸石・川野組との対戦となった。以前は「(金メダリストの)ネームバリューで萎縮していた」という諸石と川野だったが、前回の決勝のリベンジを果たそうと燃えていた。7-5、4-6、[10-6]の熱戦を制し、喜びを爆発させた。
準決勝はイギリスに0-2で敗れ、3位決定戦はイスラエルとの対戦となった。イスラエルは、4年前のロンドンパラリンピックの3位決定戦で敗れた相手だった。諸石は試合前日から「メンバーは違うがロンドンのときの仕返し、絶対に勝ってやろう」と思っていたというように、気合いが入っていた。観客の熱い声援を浴び、2-6、6-4、[10-8]で勝利し、銅メダルを獲得した。
今大会、ワイルドカードで初出場を果たしたジュニアチームは7〜8位決定戦に回った。高校3年生の細井誠二郎、高校1年生の船水梓緒里、清水克起、中学1年生の高野頌吾の4選手が出場したが、細井以外は世界ジュニアランキングを持たない選手たちだ。だが、7〜8位決定戦ではロシアに全勝し、7位に。
大会閉幕後のフェアウェルパーティーで、ジュニアが今大会の「チームオブザイヤー」という栄誉ある賞を受賞した。彼らは、今大会で世界の選手たちと関わることで大きく成長していった。
女子はオランダが驚異の17連覇
男子はフランスが制覇。同1位のウデは、公式戦から4ヵ月も離れていた国枝が倒せる相手ではなかった。国枝は、「初日の試合から比べれば、最終日はかなり動けるようになってきた」と話してはいたが、ウデ戦ではショットの精度が低く、決め切ることができなかった。
女子はオランダがさすがの強さを見せつけた。決勝の中国戦、シングルス1試合目では、同2位のアニク・ファンクートが1セットを奪われるなど、苦戦しながらも6-1、2-6、6-4で勝利、そして同1位のイエスカ・グリフィユンは、ストレート勝ちで17連覇を達成した。
クァードは、同1位のディラン・アルコット擁するオーストラリアが、初優勝を果たした。
また、ジュニアはアメリカが2連覇。このところ、シニアでは上位にアメリカ人プレーヤーの活躍が見られないが、今後世界トップレベルの選手が育ってくる予感を感じさせる。
最終日、男子決勝を見ようと、3769人の観客が有明コロシアムに足を運んだ。国枝は、常々、多くの観客の前でプレーしたいと話していたが、その車いすテニス界のひとつの夢が果たされた。「車いすテニスをスポーツとして観戦する」。その新しい文化が、日本に根付く第一歩となったといっていいだろう。
※世界ランキングは全て5月23日付け
text by Tomoko Sakai
photo by AFLO SPORT,X-1