長野県発の未来社会プロジェクト「パラウェーブNAGANO」とは?

2019.06.18.TUE 公開
長野県が描く未来の社会とはどんな姿だろうか? それは、子どもから高齢者、障がいのある人もない人も、誰もが生き生きと安心して暮らせる“共生社会”だ。
6月2日、その実現に向け、長野県松本市の松本市総合体育館にて、長野県のスポーツを通じた共生社会創造プロジェクト「パラウェーブNAGANO」が発表された。

「パラスポーツ」のビッグウェーブが、共生社会づくりのカギに

トークショーにて「スポーツを通じ、『共生社会』を目指します」とパラウェーブ宣言する、長野県 阿部 守一 知事。
「パラウェーブNAGANO」プロジェクトは、“スポーツ”を通じた共生社会づくりがテーマとなっているが、その背景にはこんな想いがある。

「長野県ではこれまでに、1998年の長野冬季オリンピックやパラリンピック、スペシャルオリンピックスといった、国際的なスポーツ大会を開催してきました。その経験があるからこそ、障がいの有無に関わらず、“スポーツを楽しむこと”を通じて人と人とが繋がり、支え合う社会を創造する県としてリードして行きたい。そして、東京2020パラリンピックと共に、2027年に長野県で開催を予定している全国障害者スポーツ大会を大いに盛り上げていきたいと考えています」(長野県 阿部知事)
今回発表されたロゴマーク(※)は、プロジェクトの愛称の頭文字「PWN」を点字に模して表現。長野県の美しい空と木々を表す青と緑のグラデーションは、ウェーブ(波)をイメージしている。※「パラウェーブNAGANO」ロゴマークは、株式会社ワントゥーテンが制作に無償協力(担当デザイナー:富永省吾)
そこで、昨年の6月に長野県は日本財団パラリンピックサポートセンター(以下、パラサポ)と、「スポーツを通じた共生社会の創造に向けた連携・協力に関する協定」を締結。そしていよいよ今回、その具体的な施策となる「パラウェーブNAGANO」プロジェクトが本格始動となった。このプロジェクトは、誰もが楽しめる「パラスポーツ」の魅力を大きなウェーブ(波)として広めていくことで、共生地域社会の創造を推進していくことを目的としている。

「パラウェーブNAGANO」プロジェクトの具体的な施策とは

長野県 健康福祉部 障がい者支援課長 高池武史氏
「パラウェーブNAGANO」ー 今年度の事業内容 ー

パラスポーツ体験機会の確保
・信州パラスポキャラバン事業…県内77市町村においてパラスポーツを体験する機会を提供
・総合型地域スポーツクラブにおける障がい者スポーツ実施環境の整備

教育プログラムの普及
・パラサポが実施する教育プログラムの普及(国際パラリンピック委員会公認教材 『I’mPOSSIBLE』、『あすチャレ!スクール』、『あすチャレ!ジュニアアカデミー』事業の実施校の拡大)
・パラサポの教育プログラムに関する教員向け研修

人材育成
・大学連携による障がい者スポーツ指導員養成研修
・企業向け「研修で使えるパラスポーツ関連プログラムガイダンスセミナー」
・ボッチャのサポーター養成研修

上記の施策に対し、長野県の健康福祉部 障がい者支援課長 高池武史氏は、
「まずは、県内77市町村へくまなく出かけていき、様々なイベントで体験コーナーを設置し、パラスポーツを知って体験してもらうことで、誰もが楽しめるパラスポーツというものを長野県内で広めていきたい。同時に、パラスポーツを教える、広めていく人も必要となりますから、人材の育成も欠かせません。また長野県は、幕末時代に寺小屋数の普及率が日本一であったことから教育県とも言われており、子どもの頃から自分で学ぶ姿勢を大事にしています。今回導入するパラリンピック教材『I’mPOSSIBLE』を大いに活用することで、長野県の強みをさらに強めていきたいと考えております」と語った。

キックオフイベントでは、長野を代表するゲスト陣が登場

当日参加したゲスト陣。右から、AC長野パルセイロ・レディース 鈴木陽選手、松本山雅FC ホームタウン担当 片山真人氏、信州ブレイブウォリアーズ 三ツ井利也選手、AC長野パルセイロ・レディース 中村恵実選手、パラ・パワーリフティング 馬島誠選手
右から、タレント 松山三四六氏、リオデジャネイロオリンピック シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング) 銅メダリスト 箱山愛香氏、パラ・パワーリフティング 馬島誠選手、タレント こてつ
当日は、本プロジェクトのキックオフイベントとしてパラスポーツ体験ができる「パラスポーツフェスタ in 松本」が開催され、リオ五輪メダリストをはじめプロアスリートやパラアスリート、タレントなど、長野を代表する様々なゲストが応援に駆けつけた。

会場では、車いすバスケットボール、ボッチャ、ウォーキングサッカー、パラ・パワーリフティング、レーサーなどのパラスポーツが体験できるコーナーが設置され、一般の参加者とゲストが一緒にパラスポーツを楽しむ場面も。親子で体験する参加者も多く、驚きと好奇心溢れる有意義な体験となった。
子どもたちと一緒に、ウォーキングサッカーを楽しむ片山真人氏。
白いジャックボールにどれだけ自チームのボールを近づけられるかを競うボッチャは、老若男女問わず楽しめるパラスポーツ。
アイシェードで視覚を遮断してプレーするゴールボールは、スリル満点で子どもたちも大興奮。
レーサーのコーナーでは、陸上競技で使用される3輪車いすを体験。レーサーを設置固定し、実際にどれだけ速く漕げるかを計測した。
足を使わず、上半身の力だけでバーベルを持ち上げるパラ・パワーリフティング。スタッフにサポートしてもらいながらも、力試しに奮闘。
「パラウェーブNAGANO」のような大規模のプロジェクトは、都道府県としては初めての試みとなる。来年の東京2020パラリンピックへの注目から、全国的にもこれまで以上に“共生社会”が、これからの社会づくりのキーワードになってくるだろう。長野県はそのモデル都市として、長野県内そして全国にこのパラウェーブを発信していく予定だ。

text by Parasapo Lab
photo by Tomohiko Tagawa

『長野県発の未来社会プロジェクト「パラウェーブNAGANO」とは?』