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2日間にわたるパラアスリートの祭典、「ノーリミッツスペシャル2017上野」開催!
5月6日、7日、東京都はパラリンピック競技を多くの人に知ってもらおうと、東京パラリンピックで実施する全22競技を体験できるイベント「ノーリミッツスペシャル2017 上野」を開催した。
昨年5月に銀座で行われた「ノーリミッツスペシャル銀座&TOKYO」の第2弾で、今年は2日間と期間を拡大。会場になった上野恩師公園竹の台広場は上野動物園や国立博物館に隣接し、一般客や外国人観光客の足を止めた。
小池都知事が開会宣言「人間は“NO LIMIT”だということを体感して」
イベントは元テニスプレーヤーでタレントの松岡修造さんと、フリーアナウンサーの平井理央さんを総合司会に迎え進行した。オープニングセレモニーで松岡さんは、「子どもたちはぜひ“NO LIMIT”=無限という言葉を覚えて」と来場者に熱いメッセージ。
続いて小池百合子都知事は「東京パラリンピックまであと1207日。人間は“NO LIMIT”だということを体感してください。私も町の段差に目を向けるなど、2020年の東京大会までに暮らしやすい東京を作っていきます」と開会宣言し、イベントの幕が開けた。
パラ種目の醍醐味を伝えた「パラリンピアンに挑戦! 5番勝負」
オープニングセレモニー後は、小池都知事を交え、パワーリフティング、陸上競技(レーサー/走り高跳び)、射撃、車いすテニスのパラリンピックで実施される5種目でエキシビションマッチ「パラリンピアンに挑戦! 5番勝負」が実施され、パラリンピアンにオリンピックのメダリストや体力自慢のタレントが挑戦した。
まずパラリンピック競技のおもしろさを伝えたのは、アテネ大会、ロンドン大会のパワーリフティングで入賞した宇城元。60kgのウエイトを10秒間で何回挙げられるかの勝負で11回という記録を残した一方、シドニーオリンピックの柔道銀メダリスト、篠原信一さんは8回に留まった。
「本当に真面目にやったんです……」と苦笑いする篠原さんに対し、宇城は「パラリンピックのパワーリフティング競技は、一般のベンチプレスと違い、寝転がって行います。上半身の重心をどこに置くか探るのがポイントです」と説明した。
さらに宇城が腕回り約47㎝だという自慢の上腕を振り上げると、会場からは「おーっ」という歓声が挙がった。
「パラ競技をもっと知って」パラリンピアンたちがアピール
続くパラリンピアンたちも、格の違いを見せつけた。
陸上競技では、パラリンピック7大会出場の車いすアスリート・永尾嘉章が巧みにレーサー(競技用車いす)を高速回転させタレントの武井壮さんを上回り、走り高跳びではパラリンピック5大会入賞の鈴木徹がタレントの森渉さんより高い160㎝を軽々と跳んで、観客をどよめかせた。
一方、挑戦者で健闘したのはシドニーオリンピック女子マラソンの金メダリスト、高橋尚子さん。射撃競技で1発の満点は10点で、満点を狙うには、直径わずか0.5mmの中心円に命中させなければならない。3発勝負のうち、パラリンピック3大会出場の田口亜希が10点満点だったのに対し、高橋さんも6点、7点、6点と好勝負を演じた。
「普通、初めての人は的に当てることもできないんです。でも、こんなに当てるなんて、やはり違いますね!」(田口)。
さらに小池都知事も射撃に挑戦し、8点と高得点をマークした。練習で10回中1回も当てられなかったという松岡さんは「さすが集中力が違いますね」と舌を巻いていた。
なおエアライフルの公式戦では1時間に60発を撃ち、その合計点を競う。「世界レベルではすべてを10点満点に当てないと決勝には進めません」と田口が説明し、観客は勝負の厳しさを実感した。
5番勝負のラストを飾ったのは、車いすテニスの上地結衣と元テニスプレーヤーの杉山愛さん。松岡さんの打つボールを的に当てる勝負を展開し、上地はジュニア用ボールに苦戦しながらも、チェアワークの巧みさを披露した。勝負は僅差で杉山さんが勝利している。
小池都知事も魅了されたボッチャのスペシャルエキシビション
6日午後は元プロ野球選手らがボッチャのリオパラリンピック日本代表選手に挑戦するエキシビションマッチも行われた。
小池都知事が「健常者も障がい者も一緒に戦える魅力あるスポーツ」と語るボッチャは、カーリングに似た頭脳スポーツ。2チームに分かれ、6つずつボールを持ち、白い“ジャックボール”にいくつ近づけるかを競う。
日本代表の廣瀬隆喜、杉村英孝らがルールを解説したあと、エキシビションマッチでは、日本代表2人と、元日本女子ソフトボール代表の高山樹里さんがチームを組み、元プロ野球選手でピッチャーとして活躍した高橋尚成さん、宮本和知さんと、車椅子バスケットボールの根木慎志さんがタッグを組んで強敵に挑戦した。
勝負は予想以上に日本代表を擁する赤組が苦戦する展開に。コントロールに自信があるという宮本さんの好投で、赤組に有利な投球方向をふさがれ「まじやばかった」と杉村。それでも最後は逃げ切り、赤組が1点で勝利を収めた。
試合後、日本代表2人は「今回のイベントを通し、ボッチャのおもしろさを知ってもらえればうれしい」と話し、さっそく特設されたボッチャ体験コーナーに足を運ぶ観客も少なくなかった。
「ノーリミッツスペシャルは出会いの場」体験コーナーでパラ競技にチャレンジ!
イベントには、様々な競技の体験コーナーも設けられた。陸上競技用車いすレーサーの体験、ウィルチェアーラグビーのタックル体験、義足体験会ほか、テコンドー、車いすテニス、柔道、5人制サッカー、ゴールボールなど、道行く人が気軽に競技を楽しんだ。
「たまたま通りすがりで……」と話した浦上武樹さん(23)は「パラリンピックにこんないろいろ競技があるなんて知らなかった。テコンドーは見てておもしろかったし、車いすテニスを見て、すごいなと思いました」
また胸から下のまひで車いすを利用している千葉哲さん(59)は、パワーリフティングに挑戦し、周囲がどよめく80kgをマークした。「普段のトレーニングで100kgを挙げているので、残念な結果です。でも、こういうイベントはとてもよいこと。パラリンピック競技が盛り上がるには、とにかくいろんな人に見て、知ってもらうことが大事ですから」
さらに、パワーリフティング体験で125kgを挙げ、6日の最高記録を出した笠松博次さんは、「昨年のイベントにも参加しました。2020年の東京大会がこれまでのパラリンピックにおいて最高のイベントになればいいと思っています」と話した。
なお、昨年のイベントでパワーリフティングを体験したのをきっかけに、現在、選手として活躍し、女子55kg級 の日本記録を保持する山本恵理はイベントの意義をこう語っている。
「ノーリミッツスペシャルで私がパワーリフティングに出会ったときは、本当に衝撃を受けました。このイベントで人生が変わった私は、イベントの意味を誰よりも皆さんに伝えられる存在。ノーリミッツスペシャルを通し、多くの人にパワーリフティングという競技を知ってもらいたいし、私のように競技を始めたいという人が増えてほしい。ノーリミッツスペシャルは出会いの場なんです」
一方、ステージエリアでは、選手らのトークショーやBリーグ選手と車椅子バスケットボール選手によるパフォーマンスショーも行われた。
フィナーレイベントではメインアリーナに幅跳びコートが設置され、パラ選手たちが世界記録6m77に挑む「幅跳び決戦! 世界記録に挑戦」を開催。リオパラリンピックの銀メダリスト・山本篤は、5m92に終わったものの、会場は大いに盛り上がり、ノーリミッツスペシャル2017上野は、成功裏に幕を閉じた。
text by Yoshimi Suzuki
photo by X-1