映画通イチオシ!巧みな人間ドラマに感動するスポーツ映画5選

2021.01.08.FRI 公開

困難に立ち向かう選手の姿や、仲間との絆、手に汗握る試合のシーンなど、スポーツ映画は、人の心を揺さぶる要素がたっぷり詰まっています。そんな数多くあるスポーツ映画の中から、ひとひねりある感動のストーリーを、映画評論家/ライターの真魚八重子さんにセレクトしていただきました。コロナ禍で在宅時間が増えて、ストレスが溜まりがちな今、スポーツ映画で心をリフレッシュしてみませんか?

①『プリティ・リーグ』
世界初!女性だけの大リーグ誕生物語

制作年:1992
制作国:アメリカ
監督:ペニー・マーシャル
出演:トム・ハンクス/マドンナ/ジーナ・デイヴィス 他

【作品内容】
第二次大戦中に実際にあった女子プロ野球リーグ創設のドラマを、マドンナをはじめとする色とりどりのキャスティングで描く感動作。マドンナが歌う主題歌も話題に。

【真魚さんおすすめコメント】

メガホンを取ったのは女性監督のペニー・マーシャル。戦時中、男性が戦争に駆り出されプロ野球が運営危機に直面した際、つなぎとして結成された全米女子プロ野球リーグを描いています。ほとんど期待されていなかった女子リーグが、イキの良い試合や好プレー、女性ならではの宣伝方法などで、人気を得ていく様子が魅力的に活写されています。

②『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』
どん底から這い上がろうとする、その姿に感動!!

制作年:2017
制作国:アメリカ
監督:クレイグ・ギレスピー
出演:マーゴット・ロビー/アリソン・ジャネイ/セバスチャン・スタン

【作品内容】
アメリカ人として史上初めてトリプルアクセルを成功させたトーニャ・ハーディング。この偉業はトーニャの名前と共に不朽の業績として後世に語り継がれていくはずだったが、あるスキャンダルが彼女を転落させる。彼女がなぜそんなことをするに至ったのか…。実在するフィギュアスケート選手の半生を描く感動のドラマ。トーニャの鬼ママを快演したA・ジャネイは、本作で第90回アカデミー助演女優賞を受賞。

【真魚さんおすすめコメント】

90年代にライバル選手を元夫に襲撃させた容疑で世間を騒がせた、フィギュアスケート選手のトーニャ・ハーディング。人気女優のマーゴット・ロビーがトーニャを演じ、彼女がどんなスケーター人生を送ったのかを映画化しています。スパルタ教育を施す母親との軋轢や、DV夫との結婚生活などが、一筋縄ではいかない個性的な演出で描かれるのが見どころ。

③『カリフォルニア・ドールズ』
あの名匠の遺作となった汗と涙のストーリー

制作年:1981
制作国:アメリカ
監督:ロバート・アルドリッチ
出演:ピーター・フォーク/ヴィッキー・フレデリック/ローレン・ランドン/バート・ヤング

【作品内容】
若い女性ふたりの女子プロレスタッグチーム「カリフォルニア・ドールズ」。彼女たちは、老マネージャーと共に、時には泥レスリングの試合をやらされ泣きぬれることもありながら、あてなき巡業の旅を続けるのだったが…。『攻撃』『何がジェーンに起こったか?』『特攻大作戦』などで知られる名匠ロバート・アルドリッチが監督を務め、『刑事コロンボ』でおなじみのピーター・フォークがマネージャー役を演じたことでも話題となった、笑いと感動のスポーツロードムービー。

【真魚さんおすすめコメント】

タッグを組んでいる女子プロレスラー二人が、初老のマネージャー(ピーター・フォーク)とともにしがない巡業の旅をする。女の旅には危うさが伴うし、年頃なのもあって恋愛の誘惑もある落ち着かない日常が、ペーソスを織り交ぜて展開します。しかし後半の試合の熱さ! 試合会場での登場シーンから、興奮が一気に高まり血が騒ぎます。

④『ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男』
栄光の裏に隠された、誰も知らない感動の物語とは?

制作年:2017
制作国:スウェーデン/デンマーク/フィンランド
監督:ヤヌス・メッツ
出演:スベリル・グドナソン/シャイア・ラブーフ/ステラン・スカルスゲールド/ツヴァ・ノヴォトニー

【作品内容】
テニスブーム真っ盛りの1980年、世界ランク1位のテニスプレイヤー、ビヨン・ボルグはその冷静沈着な言動から「氷の男」と呼ばれ圧倒的な人気を集めていた。そんな彼の前に、傍若無人な振る舞いから「悪童」と呼ばれる天才的プレイヤー、ジョン・マッケンローが立ちはだかる。ウィンブルドン5連覇に挑むボルグと、それを阻もうとするマッケンローの歴史的試合の行方は…。実話を元にした感動の話題作。

【真魚さんおすすめコメント】

テニス界の一時代を築いた、ライバル同士のビヨン・ボルグとジョン・マッケンロー。まさに氷と炎のように正反対の個性を持つ二人は、本当にイメージ通りの人柄だったのか。彼らの真の姿を掘り下げ、1980年のウィンブルドン決勝戦で二人が繰り広げた、伝説の試合に肉迫する。結果を知っていても、このゲームの白熱ぶりには陶酔してしまいます。

⑤『バトル・オブ・セクシーズ』
性別を超えたテニスマッチを描く、感動のスポーツドラマ

制作年:2017
制作国:イギリス/アメリカ
監督:ヴァレリー・ファリス
出演:エマ・ストーン/スティーヴ・カレル/アンドレア・ライズブロー/サラ・シルヴァーマン

【作品内容】
1960年代から1980年代初頭までの四半世紀にわたり女子テニス界に君臨した、ビリー・ジーン・キングを題材にした実録ドラマ。男性優位だったテニス界を変えようとした彼女と、それに異議を唱えるため試合を申し込んだ男子テニス元王者のボビー・リッグスとの戦いを描く。『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーン主演の感動的スポーツドラマ。

【真魚さんおすすめコメント】

本作はスポーツの白熱はありつつも、性差別を中心に、様々な人間の問題がフォーカスされているドラマです。性別による賞金の格差、同性愛といったマイノリティとスポンサーの関係、結婚と不倫と人が愛で結びつくという不思議な現象。テニスに限らず、女性が男性と試合をして負けるのは劣っているからなのか? 興味深いテーマが目白押しです。


今回ご紹介した映画はスポーツをテーマにしながらも、人間の持つ底力や可能性、ときには弱さや悲哀を巧みに描いた人間ドラマでもあります。私たちがふだん何気なく観戦しているスポーツの裏側には、こんな人間模様やドラマがあるのかもしれない。そんなふうに考えると、スポーツ観戦がより一層楽しくなりそうです。笑いあり、涙あり、感動ありの映画を楽しんでみませんか。

PROFILE 真魚八重子
映画評論家。映画秘宝、キネマ旬報、朝日新聞等に寄稿。最新刊『血とエロスはいとこ同士 エモーショナル・ムーヴィ宣言』(Pヴァイン)が発売中。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
photo by Shutterstock,parasapo

『映画通イチオシ!巧みな人間ドラマに感動するスポーツ映画5選』