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車いすテニス
初の皇后杯は6連覇の上地に! 国枝は準優勝。車いすテニス「2018 JAPAN OPEN」取材レポート
5月14日~19日、福岡県飯塚市で、飯塚国際車いすテニス大会(ジャパンオープン)が行われた。今年から、今大会の男子優勝者には天皇杯、女子の優勝者には皇后杯が下賜されることとなり、初代天皇杯、皇后杯がだれの手に渡るのか注目が集まった。
女子は、世界ランキング1位の上地結衣が大会6連覇を達成し、その強さを見せつける結果となった。一方、2015年以来3年ぶりに決勝進出した国枝慎吾(同3位)は、絶好調のゴードン・リード(同5位、イギリス)の前にフルセットの末、惜しくも敗れ準優勝となった。
巧みな試合運びで貫禄を見せつけた6連覇の上地
今大会、上地の現在の最大のライバルである世界ランキング2位のディード・デグルート(オランダ)が欠場だったため、上地優勝の期待はより一層高まっていた。
決勝の相手は、第3シード、ドイツのサビーネ・エラーブロック(同4位)。前日、女子ダブルス決勝では、ややサーブに苦しんでいた上地だったが、この日は立ち上がりからサーブの不安は感じられなかった。第1ゲーム、サービスゲームをキープすると、続くエラーブロックのサービスゲームをラブゲームでブレイク。そこから畳み掛けるように、ゲームを連取した上地は、6−0と第1セットを奪った。
だが、第2セット中盤、エラーブロックも持ち味を出し、ドロップショットなどを巧みに用いて、上地を揺さぶり始めた。上地も、「彼女のいいときっていうのは、ドロップショットなどを随所に取り入れてくるところなので、第2セットは、彼女が落ち着いてコートを広く見てプレーをしてきたな、と感じた」と振り返った。
一時は、3−4とリードを許した上地だが、試合運びの上手さが随所に見られるプレーで、第2セットも6−4でものにした。
昨年から車いすを新しくした上地は、以前よりも走れるようになったことで、守備範囲の広さを実感しているようだ。「今までだったら、ラリーしている2本目、3本目で取れなくて決められていたのが、(相手が)ドロップショットまで打たないといけないというところまで持っていけている感覚はあった」
上地の進化は、まだ始まったばかり。初めての皇后杯を手にし、ジャパンオープン6連覇の偉業を達成した上地は、2018年シーズンもさらに躍進していくだろう。
国枝を封じたリード、初代天皇杯を獲得
男子決勝は、第1シードのリードと国枝との対戦となった。
序盤は、国枝が3−0と好調な滑り出しを見せたが、そこからリードの反撃が始まった。5ゲームを連取され、5−3。1ゲームを奪い返したものの、4−6でリードに第1セットを先取された。
とくにリードは、国枝のサービスゲームを、リターンエースでポイントを重ねて行く場面が多かった。「左利きの選手に対しては、サーブを普段とは逆にコントロールしていくんですが、その辺りのコントロール力が、少し乏しかった」と国枝。
第2セットは、国枝もなんとかリードを攻略しようと模索しながら、フォアハンドでエースを奪っていった。6−4で第2セットを奪い返したときには、雄叫びも上がった。
だが、この日のリードはミスも少なく、フォアハンドストロークがライン際に決まっていき、さらに、ドロップショットなどの多彩な技で国枝を翻弄していった。第3セットは、6−1で国枝を圧倒し、リードが優勝を決めた。ジャパンオープン2連覇のリードは、初めての天皇杯を手にしたことに「とても光栄だ。ぜひ、来年も手にしたい」と喜んだ。
試合後に国枝は、「リードに、第1セットからすごくいいプレーを継続された。彼のプレーは、今回の優勝に値したと思う。僕もなんとか攻略の糸口を探ったんですけど、逆に攻略されてしまった」と、悔しさを滲ませながら振り返った。若手が台頭し、年々進化していく車いすテニス界で戦い続けるベテラン国枝。この日、課題となったサーブやリターンをまた修正し、次の目標である全仏(6月)へ挑む。
もうひとつのクラス、クァード*は、デビット・ワーグナー(同1位、アメリカ)が、ジャパンオープン3連覇のディラン・アルコットを下し、優勝を果たした。リードと上地は、ダブルスでも優勝し2冠を達成した。
*クァードとは、下肢だけでなく、上肢にも障がいのある、比較的重度の障がいの選手が出場するクラス。
※世界ランキングは2018年5月14日時点
text & photo Tomoko Sakai