アルペンスキーの若き金メダル候補エッバ・オールショーに聞く! スウェーデンのパラスポーツ事情

2022.03.01.TUE 公開

冬季パラリンピックの花形競技、アルペンスキー。2020-21年世界選手権で5つの金メダルに輝き、北京2022冬季パラリンピックでもその活躍に注目が集まっているのが、スウェーデンのエッバ・オールショー(LW4)だ。北京大会にかける意気込みをはじめ、自国での支援体制や競技生活について独占インタビューを行った。

―北京オリンピックでは、ユニクロが手がけたスウェーデンの公式ウエアをテレビでたくさん見ました。パラリンピックのスウェーデンチームも、同じウエアを着用されるそうですね。

エッバ ユニクロのウエアは、トレーニングもしやすいし、外出するのにも快適なので、気に入っています。 ウエアに限らず、スウェーデンは国としてのサポート体制も充実していて、私たちもオリンピック選手と同様に、あらゆるサポートを受けています。

 北京2022オリンピック・パラリンピック冬季競技大会のスウェーデン代表チームが着用するユニクロ(UNIQLO)の公式ウエア。パラリンピックでは、クロスカントリーとバイアスロンでメダルが期待されるセバスチャン・モディン(B1/写真右)、車いすカーリングに出場するクリスティーナ・ユーランダー(左から2番目)にも注目だ Provided by SOC/SPC

―どのようなサポート体制ですか?

エッバ 世界で戦うパラアスリートになりたいと考える人たちの数はまだまだ限られていることもあり、門戸を広げるためにも、パラスポーツに関心がある、トレーニングを受けたいという強い気持ちがある人に対しては、早い段階からあらゆる支援をすべく、手を差し伸べています。
私自身、小さなころから健常者と一緒にスキーをしていて、2019年から2020年ごろ、18、19歳のときにパラに転向したのですが、競技を始めてから比較的早い段階でサポートしてもらえるようになりました。

―具体的には?

エッバ 旅費や競技用ギアの購入費といった金銭面のサポートもあるのですが、私の中で一番重要と感じているのは、パラ専門のコーチやトレーナーの派遣です。スウェーデンのパラリンピック委員会とパラアルペン協会が、パラに特化したコーチとトレーナーを紹介してくれたのですが、これは本当にありがたかったです。現在、私がお世話になっているスタッフは2名で、そのうち1名は、カナダでパラアルペンスキーを約20年間教えていた方。こうした専門スタッフを自分の力だけで見つけるのは難しいですから。

―どのようなトレーニングをしていますか?

エッバ 背中や腰、そして足の左右のバランスが異なり、走れないなど、いくつかできないことがあります。また、皮膚も弱くて、足の裏の皮膚は硬いところがないので、それにも気をつけつつ、左右の足で違うトレーニングをしています。少しでもバランスが良くなるようトライしていて、太ももやお尻にはささやかながら効果が感じられるのですが、本当の意味で左右のバランスがとれた体になるのは難しいのだと思います。

―生まれたときから右足に障がいのあるエッバ選手。装具は使っていますか?

エッバ 睡眠時以外は、着圧ソックスを履いてます。ソックスにも、スキー用、スイミング用、日常用といろいろあるんですよ。靴の中に中敷きを敷き、ひざにはサポーターを着けています。いずれもお店で自分に合うものを探して着けています。ただし、スキーをするときには、私用にカスタマイズしたプラスチック製のひざ用サポーターを使っています。そのおかげで、痛くなりません。

北京大会への出発前にオンラインインタビューに応じてくれたエッバ・オールショー

―アルペンスキーは冬の競技ですが、1年中練習しているのですか?

エッバ いえいえ、夏といえば夏休み! ですから、しっかりと休みます。私は2ヵ月ぐらいオフが欲しいと考えていて、7月から9月ごろまで南欧で過ごすんです。オフの間に頭や体を休めたり、いろいろなことを片づけたりしていると、またスキーをしたいなという気持ちになります。
去年の夏休み明けから北京大会まではスキー漬けの毎日で、あとは食べて寝ることしかしていません。まさにフル回転で駆け抜けてきました。

―食事で気をつけていることはありますか?

エッバ もっと体重を増やしたいと思っているので、たくさん食べることを意識しています。炭水化物入りの粉ミルクをシェイクしたものをよく飲んでいますよ。北京大会に持ち込めるかはわかりませんが。

―いよいよ、本番目前ですが、いまの心境は?

エッバ 実は、しばらくの間、すごく緊張しながら過ごしていた時期があったんです。でも、今はそれも落ち着いて、早く行きたくてワクワクしています。

―エッバ選手が出場するLW4は、どんなクラスですか?

エッバ 足が欠損している人や、私のように筋力が弱いなど、下肢に障がいがある選手が出場するクラスです。

北京パラリンピックの前哨戦となる世界選手権で好調をアピールしたエッバ・オールショー
photo by Luc Percival / World ParaSnowSports

―世界選手権では金メダルを獲得していますが、北京大会での目標は?

エッバ 自分が出る種目は全部、全力を尽くしたいと思っていますが、正直、どうなるかわかりません。ですから、「金」という目標は立てていません。ただ、(滑降〈ダウンヒル〉、スーパー大回転(スーパーG)、大回転〈ジャイアントスラローム〉、回転〈スラローム〉、スーパー複合〈スーパーコンビ〉の) 5種目に出場予定なので、その中のいくつかの種目では表彰台に立ちたいですね。

―得意な種目は?

エッバ 子どものころから親しんできた大回転(ジャイアントスラローム)です。ただ、この種目を得意にしている選手は多いんです。それに比べると、回転(スラローム)ではライバルも少なく、私にアドバンテージがあると思っています。

―北京大会の開閉会式は出席されますか?

エッバ 出たいですし、出るつもりです。

―どのような滑りを見せたいですか?

エッバ まずは、自分のベストを尽くしていいスキーをしたいです。私のような体でもこんなことができるんだと知っていただき、何かインスピレーションを受けてくれたら、うれしいですね。

エッバ選手にとってのスターは、北京オリンピックのアルペンスキー女子大回転で金メダルに輝いたサラ・ヘクトルだそう。ベストのパフォーマンスができれば、サラ同様、表彰台の一番上で自国の旗を掲げることも十分可能だ。どのような滑りを見せてくれるか、注目したい。

エッバ・オールショー

アルペンスキー北京パラリンピック スウェーデン代表。女子立位LW4クラス。子どものころからスキーに親しむ。パラアルペンスキーに転向後、すぐに2019-20年世界選手権大回転で金メダル、2020-21年世界選手権で金メダル(大回転x2、スラロームx1、スーパー大回転x2)を獲得。一躍北京大会の金メダル候補に躍り出た。

text by TEAM A
key visual by Fabian Wester

『アルペンスキーの若き金メダル候補エッバ・オールショーに聞く! スウェーデンのパラスポーツ事情』