-
- 競技
-
車いすラグビー
[第17回ウィルチェアーラグビー日本選手権大会]埼玉のBLITZが北海道を1点差で下し、2年ぶりの日本一!
ガツン、ガツン。車いすがぶつかり合う。タックルさながらの金属音を響かせて、彼らは日本一の喜びを爆発させた。
12月17日から3日間、千葉ポートアリーナで開催された「第17回ウィルチェアーラグビー日本選手権大会」は、ウィルチェアーラグビーの国内最高峰の大会だ。予選を勝ち抜いた国内8チームが出場。クラブチームの日本一をかけてトーナメントを戦う。今秋のアジア・オセアニアチャンピオンシップでリオパラリンピックの出場権を獲得した日本代表メンバーも各チームに分かれて出場し、熱きバトルを繰り広げた。
長きにわたり、国内のチームをリードしてきたBLITZ(埼玉)は、過去に5連覇を果たしている強豪である。コートを猛スピードで走り抜けるエース島川慎一を筆頭に、多彩な戦術を繰り出す荻野晃一、パワーとスピードを兼ね備える菅野元揮、パスの起点になるベテラン田村学というトップ選手たちがラインを組み、決勝トーナメントを勝ち上がってきた。
BLITZといえば、田村が前線の島川にパスを送るカウンター、島川と菅野のスピード感溢れる攻撃だが、昨今はローポインターの小川仁士ら新しい選手も育ってきており、層の厚みを増したことで、他チームに勝るチーム力も備えた。
一方、2連覇を目指す北海道Big Dippersは、日本代表のエース・池崎大輔を擁する。準決勝でFreedom(高知)を57対43で下すなど、決勝まで順当に駒を進めた。
両者一歩も譲らない! 決勝は、息をのむ1点差ゲームに
やはりこの大会は見逃せない。そう思わせる決勝戦だった。昨年と同じカードになった決勝は序盤、和知拓海らがハードなタックルを仕掛けて北海道優位の展開に。だが、連覇は容易ではない。第1ピリオド途中から、北海道のエース池崎の進行を3人がかりで封じたBLITZが主導権を奪う。北海道も譲らず、第3ピリオドで再び逆転。だが、第4ピリオド途中で息を吹き返したBLITZが同点に追いつくと、一進一退の攻防を制し、56対55の勝利。2年ぶり、8回目の優勝を手にした。
勝利の瞬間、最も盛り上がったのはベンチメンバーだったのかもしれない。決勝こそ彼らの出番はなかったが、BLITZのエース島川が「練習でがんばっていたのが若手。まだ経験不足なので、これからもっと育成していきたい」と語ったように、若手の奮闘がチームの明るい材料になっているようだ。
さらに、BLITZの菅野は「ミーティングのとおりに、相手のつぶしどころをとらえることができた。また、(国内の同じクラスのプレーヤーの中における)自分の長所を知り、鍛えてきたことで、昨年よりも自信を持って試合に臨めた」と振り返る。その言葉からは、チームとしても個人としてもレベルアップしてきたことが感じ取れた。
MVPは北海道の池崎が受賞。連覇はならなかったものの、「チームの若手が緊張感のある決勝でシーソーゲームを経験できたことは、今後の力になる」と話し、来年に向ける収穫を得たようだ。また2015年は、日本代表のエースとして挑んだ地元開催のアジア・オセアニアチャンピオンシップで、ロンドンパラリンピック金メダルの強豪オーストラリアに価値ある勝利を収めるなど、池崎にとって充実の一年になった。「今年を締めくくる、いい試合ができてよかった」と話し、来年に迫るリオパラリンピックに向けて「北海道に帰ったら、すぐに筋トレをしたい」と気合いを入れていた。
手に汗握る好ゲームが続くも、観客はまばら
3位決定戦でRIZE(千葉)に3点差で勝利したAXE(埼玉)は、前日の準決勝でも北海道Big Dippersに42対46と好ゲームを演じている。AXEのプレイングマネーシャーである福井正浩は「相手に研究されていてやりにくかった部分もあったが、コート内で修正する力をつけるには貴重な経験となった。ファーストライン以外でも戦えるように個々のレベルを引き上げたい」と来年を見据えた。
国内の勢力図が均衡してきた印象を受けた今大会。だが、観客数は日曜日の決勝でも約100人。「(地元開催のアジア・オセアニアチャンピオンシップで)強国を倒しても、世界ランキング3位になっても、客席はガラガラ。もっと応援してもらえるように成長しなければいけない」とは、日本代表チームでキャプテンを務める池透暢。国内大会とはいえ、150人以上のメディアが訪れた同大会との注目度の落差に、選手たちもショックを隠さない。リオで最もメダルに近い団体競技「ウィルチェアーラグビー」の選手たちに、熱い声援を送り続けて欲しい。
text by Asuka Senaga
photo by X-1