3年ぶりの日本パラバレーボール選手権大会は、千葉パイレーツが笑顔の5連覇
12月11日、12日の2日間、シッティングバレーボール国内クラブチームの日本一を決める「日本パラバレーボール選手権大会2022」が、東京・武蔵野市の武蔵野総合体育館で開催された。
男子は決勝でライバル対決が実現も……
男子の決勝は火花散る対決となった。5連覇のかかる<千葉パイレーツ>と7月に開催された「夏パラバレーボール選手権大会」を制した<台東スマイル>のカードだ。
両者はこう話す。
「優勝したことのない大会は日本選手権だけ。ライバルに勝って優勝することを目指していた」(台東スマイル・佐々木一成)
「僕自身、平日の練習をともにしている選手ばかり。手の内がばれているから、厳しい戦いになると思った」(千葉パイレーツ・田澤隼)
試合の序盤、リードしたのは<台東スマイル>。だが、パラバレーボール界随一の大所帯を誇る<千葉パイレーツ>はチーム力だけでなく、個の力も強い。東京大会後の男子日本代表をけん引する田澤のサービスエースで得点を連取して逆転すると、その後も同日本代表の皆川鉄雄やパラリンピックに3度出場したベテラン加藤昌彦の強打がさく裂する。
一方の<台東スマイル>もラリーをつなげて応戦し、第1セットでデュースに持ち込むが24対26で先取されると、第2セットも攻撃のテンポの速い<千葉パイレーツ>の勢いを止められず。
その結果、<千葉パイレーツ>が2対0(3セットマッチ)で宿敵を倒し、3年ぶりに開催された日本選手権で頂点に輝いた。
キャプテンの田澤は「なんとか勝ててよかった」とコメントし、こう続けた。
「つなぎがうまくハマったと思う。千葉パイレーツは代表経験のある選手が複数いて攻撃の基盤はあるけれど、その分、連携が難しいところがあった。夏に台東スマイルに負けて以降、チームで話し合い、約束事を決めて臨んだのが結果につながった。自分自身は、週末の代表活動と練習日が重なるため、チーム練習に参加できないことも多いなか、他のメンバーが約束事をチーム内に浸透させてくれた。そこに、代表組が合わせるようにした」
実際に、日本代表の皆川は「自分のミスによる失点をなくそうと心がけた」と振り返り、威勢のいい声でチームを盛り上げながらも、丁寧にプレーしたことを明かした。
「相手が一枚上手だった。いいライバル関係です」。<台東スマイル>の佐々木は悔しさを胸にしまって勝者を称えた。
<千葉パイレーツ>は来年、6連覇を目指す。
「勝ち続けることが一番大事。他のチームも強くなっていくと思うが、連覇が途絶えないように頑張ります」
そう決意を述べて、田澤は会場を後にした。
5チーム参加の女子も強豪が「連覇」
女子は、東京パラリンピック日本代表の小方心緒吏らを擁する<東京プラネッツ女組>が、準決勝で<千葉レディースパイレーツ>、決勝で<京都おたべーず花子>をそれぞれストレートで下し、6連覇。キャプテンの波田みかは「試合中も笑顔溢れるのが東京プラネッツ女組。コロナ禍でチーム練習はなくなったが、やっぱりみんなでバレーをすることは楽しい。最後の試合まで、楽しみながら勝ち切ることができてよかった」と喜んだ。
ベテランも若手も躍動
今大会は新型コロナウイルス感染症対策により、通常3面のコートを2面で使い、グループ分けした予選リーグを行わず、初日からトーナメント形式で大会が進んだ。当然ながら「もっと試合をしたかった」という声もあったが、記者が話を聞いた選手の全員が「楽しかった」とコメントしており、試合でプレーすることの尊さを実感させられた。
<大阪アタッカーズ>の飯倉喜博も「楽しかった」と話してくれたひとりだ。チームは2回戦で東京大会の男子日本代表キャプテン・柳昂志を擁する<Soul(魂)>にフルセットの末、敗れたが、激しい攻防戦を見せた。
「敗退は残念だが、手応えがあった。来年は決勝まで残りたい」と飯倉。その手応えのひとつは、若手の伸びしろにあるのだろう。東京大会後に日本代表になった川波潤は、アタックでもブロックでも存在感を発揮。今大会では、視野の広さや判断力を磨いた。
バレーボール経験はないが、長居障害者スポーツセンターで勤務するチームの選手に誘われたのがシッティングバレーボールを始めたきっかけだという。
「いつの間にかハマっていました(笑)東京大会直前にチームの練習に参加したら、日本代表選手たちがハイレベルなプレーをしていて。刺激されたのを覚えています」
長年、代表最年少だった29歳の田澤も期待を寄せる25歳の新鋭は、すでに11月、世界選手権デビューを果たしている。その世界選手権でも思い切ってプレーしたという川波は、国内での試合経験をステップにし、来年、再び日本代表として世界に挑戦するつもりだ。
また、右脚を切断した入院中にパラバレーに出会い、1年前にチームに加入したという奥田実加も、日本選手権初出場。「最初は緊張したが、サーブが決まってうれしかった」と話し、初めての試合で収穫を手にした。
「日本選手権から、こういう若手が出てきてくれれば」。飯倉は若手の奮起に目を細めた。
text by Asuka Senaga
photo by X-1