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ゴールボール
パーソンズIPC新会長らとゴールボール体験も。赤坂の小学校でパラリンピック教材「I’mPOSSIBLE」の授業を実践
10月19日、東京都港区立赤坂小学校の6年生2クラスを対象に行われた「総合的な学習の時間」で、国際パラリンピック委員会公認教材「I’mPOSSIBLE (アイムポッシブル)日本版」が活用された。55人の子どもたちは、リオパラリンピックの名場面を集めた動画を見て、クイズに答えたり、ゴールボールを体験したりして、自分の考えを発表しながら、パラリンピックや選手についての知識を深めた。
また、5、6時間目に実施された今回の授業には、9月にIPC(国際パラリンピック委員会)の会長に就任したアンドリュー・パーソンズ新会長と、2001年から16年間会長を務めたフィリップ・クレイヴァン旧会長が来校。メディアも多く訪れ、子どもたちにとって心に残る特別な時間になった。
パラリンピックって何だろう
教材は、競技について学ぶ座学と競技を体験する実技の計2時間で構成される。1時間目ではまず、担当の安川由美先生が、これまでのオリンピック・パラリンピックの授業で話題になった「本当のおもてなしって何だろう」などの問いを振り返り、その後、子どもたちがモニターに映し出された「パラリンピックって何だろう」の一文を唱和した。
安川先生は「オリンピックの好きな競技は?」「パラリンピックで注目している競技は?」と質問していき、オリンピックとの認知度や関心の違いを浮かび上がらせると、次にリオパラリンピックのダイジェスト動画を放映。
そして、先生が感想を求めると、次から次へと子どもたちの手が挙がる。
赤坂小学校では、普段から感じたことや学んだことをキーワードにしたり、発表したりすることで学習が記憶に残りやすいようにしているそうで、「卓球のラケットを口を使って動かすなど、手の不自由な人も工夫をしてプレーしていた」「障がいのある人が涙を流したり、ハイタッチをしたりしていて力強いと思った」「見ている人も笑顔だったのが印象に残った」…など、さまざまな感想が発表された。
続いて、パラリンピックの歴史や用具を学ぶクイズを実施。写真を見て何に使うものか当てるクイズでは、先生たちの予想に反し、子どもたちは、タッピング棒が視覚障がいのある選手が水泳で使用するものだとわからない。答えがわかると子どもたちから「あー」という悔しそうな声が沸いた。
また、シッティングバレーボールや陸上の競技用義足を見たことがあるという児童がいた一方で、「知らない競技」にはゴールボールが挙げられた。
教材はそれぞれの学級の状況に応じてアレンジして活用される。安川先生は“パラリンピックの4つの価値”に重点を置いて授業を進めた。「パラアスリートたちから何を感じる?」という先生からの問いかけに対し、「支える人がキーワードだと感じた」「信頼が大事」「楽しむこと!」など、子どもたちは思い思いの考えを口にした。
パラリンピックが重視する4つの価値は「勇気」「強い意志」「インスピレーション」「公平」。これらのキーワードとともに、先生から「I’mPOSSIBLE」の意味を教わると、子どもたちは「不可能なんてない」と元気に声を合わせた。
5時間目途中に教室に到着したパーソンズ新会長、クレイヴァン旧会長が見守る中、授業は続く。6時間目に実技で行うゴールボールのルールを学ぶために、映像を視聴。その後、プレーの待ち時間に担当する「ボール係」「得点係」「実況係」をそれぞれ決めて体育館へ移動した。
ルールや用具の工夫がすごい!
選手は3人一組になり、転がすと音がするよう、バスケットボールをビニール袋でくるんだボールを使用してゴールボールを体験。今回は、全員が選手を体験できるように、練習はなく、各ゲームの時間を短縮して行った。
「それでは皆さん、楽しみましょう」
実況係のかけ声で試合はスタート。第一試合では、アイマスクで視覚を遮断した選手はほとんど自分の位置から動けず、攻守が切り替わるたびにゴールが決まっていく。とくに守備では手を伸ばしてもわずかに届かないという状況が続き、コート外からは「惜しい!」という声が漏れた。
選手は入れ替わるものの、試合が進んでいくうちに守備はうまくなり、攻撃面でもクロスボールやスピードのあるボールが増えていく。
しかし、視覚障がい者のためのゴールボールは、プレー中に大きな声を出してはならない。実況係と「お静かに」のボードを持つ役割の児童が注意を促し、選手たちは静寂の中でプレーした。
全員がプレーしたところで、視察に訪れたパーソンズ新会長、日本パラリンピック委員会(JPC)の鳥原光憲会長、日本財団パラリンピックサポートセンターの小澤直専務理事がコートに登場し、代表の子どもたちと対決することに。試合は、パーソンズ会長が守備で再三の好プレーを見せたものの、3-2で子どもたちのチームが勝利。体育館はあたたかな拍手で包まれた。
その後も気さくにハイタッチに応じたパーソンズ会長は、子どもたちから「かっこいい」と大人気。視察について「最高の時間でした」とコメントした。
「ゴールボールは、障がいがあっても、障がいがなくても皆が楽しめるような工夫が凝らしてあってすごいと思います」。授業の終わりに、女児が代表してこの日感じたまとめを発表した。
授業に出席した子どもたちからは「音の強弱を聞き分けるのが難しかったけれど、楽しさも感じました」(三宅未黎さん)「障がいのある人の視点を体験できたことで世界が広がりそうです」(磯山小菜美さん)などの声が聞かれた。
text&photo by Parasapo