[チームリアル]が注目の若手選手に突撃! Top Prospect for 2020-第1回-

[チームリアル]が注目の若手選手に突撃! Top Prospect for 2020-第1回-
2018.12.07.FRI 公開

鳥海連志、古澤拓也だけでなく、続々と若手選手が台頭しつつある車いすバスケットボール。
今回は男子U23日本代表が出場した北九州チャンピオンズカップと全日本ブロック選抜大会に密着取材した[チームリアル]が、2020に向けてさらなる飛躍が期待される注目の若手選手を紹介する!
第1回は近未来のディフェンスリーダーと、新世代センターが登場!

※本記事はパラスポーツの“今”をお届けするスペシャルムック『パラリンピックジャンプ』(「週刊ヤングジャンプ」と「Sportiva」が共同編集/協力:パラサポ)との共同企画です。


笑顔の仕事人

川原 凜/Rin Kawahara
(21歳/クラス1.5/千葉ホークス/二分脊椎)

いつもニコニコと笑顔を絶やさない天真爛漫なキャラクター。しかし、試合になるとそれが一変、インテリジェンスと確固たるバスケ理論を持った頭脳派ゲームメーカーの姿を見せる。

ディフェンスでは鋭い洞察力、展開予知能力で相手の攻撃の芽を摘み取る仕事人。10月のアジアパラでも、韓国戦で自分より障がいが軽く身体の大きい相手エースのキム・ドンヒョンをマッチアップで止めてチームに流れをもたらした。ハイポインターを活かす連携プレーが得意だが、ここぞというポイントで発揮するシュート力もチームにとって隠れた武器になっている。

京谷和幸、藤井新悟と続いたローポインター司令塔の系譜を継ぐ、期待の若手だ!

<川原選手インタビュー>
21歳、12月で22歳になります。好きな食べ物はエビチリです(笑)。障がいは二分脊椎で、小さい頃から車いすで、地元の長崎で高校1年生から車いすバスケを始めました。それまでは水泳をやっていて、ジャパンパラ水泳競技大会も出場したし、日本記録を持っていたこともあるんですよ。車いすバスケにハマったのは、チームスポーツならではの連携やコミュニケーションからいいプレーが生まれる楽しさを感じたからですね。

高校を卒業して関東へ出てきて、千葉ホークスに移籍。U23日本代表でやらせてもらって、リオの後からA代表でもプレーをさせてもらうようになり、バスケに対する意識もすごく変わってきました。



僕が目指す選手は、ディフェンスリーダー。自分のサイドだけでなく逆サイドまでトークしてチーム全体のディフェンスをコントロールする、ディフェンスに一番大事な組織力をリードできる選手になりたいです。課題だったオフェンス面でも、最近、新たな気づきがありました。試合の中で「ここで決めたらチームが波に乗るぞ!」っていうタイミングを感じるようになってきたんです。そのときに決めるべき選手にいいシチュエーションを作れるように、オフェンスの連携もさらに磨きをかけていきたいですね。

試合の流れを読むことと連携力なら、同世代の誰にも負けない自信があります。それを武器にして2020年に活躍できるよう、しっかり練習していきたいと思っています。


<U23日本代表・京谷HC>

ディフェンスの感覚はA代表でもトップレベル。障がいの重い1点クラスですが、動けない部分を読み・予測の鋭さで補っています。日本代表が取り組んでいるトランジションバスケでは、サイドに開いてからのパスが重要なんですが、そのパスの受け方、出し方のセンスもいいですね。オフェンスでもっとシュートをねらう貪欲さが出てくると、相手にとってさらに怖い選手になると思います。


新世代のセンター

髙柗義伸/Yoshinobu Takamatsu
(19歳/クラス4.0/栃木レイカーズ/左大腿切断)

中学時代は栃木県でも注目され、強豪校からも誘われる野球少年だったという髙柗。車いすバスケを始めてわずか数年で、若手センターとして期待を集める存在となった。

身長180センチの高さを活かしたインサイドのプレーが武器で、どんな場面、どんな相手にもひるまない気持ちの強さが魅力の選手だ。北九州チャンピオンズカップでもスタメンを任され、自分より身体の大きなカナダやオランダの大型選手とマッチアップ。ゴール下でもみくちゃにされ、何度も倒されながらも、アグレッシブにゴールをねらう姿勢は、チームの闘争心を鼓舞する効果ももたらした。

身体も細くプレーも粗削りだが、まだ19歳になったばかりで伸びしろは十分。トランジションが速く、どこからでもシュートが打てて、インサイドでは誰よりも強い・・・そんなこれまでの日本にはいなかった新しいセンタープレーヤーになる可能性を見せてくれる。

<髙柗選手インタビュー>
栃木の小山市出身です。小学4年から野球をやっていて、中学時代は投手兼外野手でした。投手としては球が速いだけでコントロールが微妙でしたが(笑)、ライトの守備には自信がありました。エラーしたこともないし、ライトゴロでアウトにしたことが何度もあります。当時の監督の話によると中学2年の時点でいくつかの高校が声をかけてくれていたそうです。でも中学3年の春に骨肉腫が発症して人工関節を入れる手術を受け、野球をあきらめました。そして高校2年で再発をして左脚を切断しました。高校1年の頃に地元の栃木レイカーズの車いすバスケ体験会に参加させてもらいました。もともと、野球以外ならバスケをやりたいと思っていたので、すぐに「これやろう!」って決めましたね。



目標とするプレーヤーはレイカーズの先輩である、元日本代表の増渕倫巳さん。チームに入って、最初に車いすバスケを教わったのが増渕さんでした。センターの僕とはポジションは違うんですけど、増渕さんみたいにボールが運べて、インサイドでもアウトサイドでも打てる。チームが困ったときは「俺にボールを預けてくれたらなんとかするよ」っていう選手になりたいですね。

今年の春に日本体育大学に入学して、関東のチームの練習や強化指定選手のパラアリーナの練習に参加させてもらっています。栃木の練習に戻ったときに、インサイドが強くなったとか、スピードがアップしたとホメてもらえることも増えてきました。さらに高いレベルに食い込んでいけるように、高い意識を持って練習を続けていきたいと思います。

<U23日本代表・京谷HC>

車いすバスケキャリアが浅いからまだまだのところもあるけど、スピードも速くなってきたし、シュートの安定感も出てきたし、着実に成長を続けています。身長もあって手も長いから、ゴール下の空中戦でもっと力強いプレーができるようになると思いますね。でも、髙柗の一番の才能は根性。嫌になるようなキツイ練習を黙々とやり続けられる選手ですから、もっと伸びてくれると期待しています。


<チームリアル>
「週刊ヤングジャンプ」にてシリーズ連載『リアル』(作・井上雄彦)の担当編集者を中心とした取材チーム。抜群のチームワークを誇り、地方出張の定宿はドーミーイン。独特の視点で取材・構成する「障害者スポーツの真実」という人気レポートを「週刊ヤングジャンプ」にてシリーズ連載中。

©I.T.Planning,Inc.

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text & photo by チームリアル

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