ミラノ・コルティナ2026パラリンピックまで1年! 出場をかけて戦う車いすカーリングにエール

ミラノ・コルティナ2026パラリンピック冬季競技大会まで1年となった3月6日、パラスポーツの9競技団体による合同プロジェクト「P.UNITED」によるトークイベントが東京・丸の内で開催。パラリンピック出場を目指して世界選手権で奮闘中の冬季競技・車いすカーリング日本代表へエールを送った。(以下、敬称略)
横連携で生まれた選手同士のつながり
車いすカーリング、カヌー、馬術、射撃、アーチェリー、水泳(知的障がい)、卓球(知的障がい)、パワーリフティング、車いすフェンシングの9競技団体が参加するP.UNITED。仕事帰りのビジネスパーソンが足を留めて耳を傾ける中、車いすカーリングとカーリング、パラ馬術と馬術、そして車いすフェンシングというパラリンピック・オリンピック競技の各選手と、スポーツジャーナリストの二宮清純が登壇。まずはP.UNITEDの意義について、P.UNITED代表への取材経験もある二宮が語り始めた。
「決してメジャーとはいえない9団体が、横の連携、共助の精神で一緒にマネジメントや広報活動をやりましょうという素晴らしい活動。ぜひ成功してもらいたい」

選手たちも横の連携から生まれるつながりを大切にしているようだ。過去にもP.UNITEDのイベントに参加経験がある馬術の稲葉将はこう語る。
「他競技の選手と交流することで、その競技に興味が湧いたり、より深く知ってみたくなったりする。最初は競技のルールから入り、普段どんなトレーニングしてるんですかとか、どう過ごされてるんですか、といった意見交換をする重要な機会になっている」

車いすカーリング歴2年の花岡恵梨香も、イベントが始まる前に早速交流を楽しんだと明かす。
「海外遠征の荷物の話を(稲葉、加納の)2人とした。飛行機に搭乗する際、私はそんなに荷物がないが、車いすフェンシング選手の多くは日常用と競技用の2台預けるとか、稲葉選手は国内のパートナーの馬は海外に連れて行かないとか。テレビを通してではわからない、実際の選手の声を聞くことができるのも横のつながりのいいところ」
パリ2024パラリンピックに車いすフェンシングで出場した加納慎太郎によると、P.UNITEDの選手間同士でLINEのグループがあるという。

「内側から盛り上げることによって外側にエネルギーを発信できるようにしたいとの思いで、コミュニケーションを取り合っている。(パリ大会では)『馬術はヴェルサイユ宮殿(が会場)でうらやましい』とか、『射撃がメダルを獲った、よっしゃー!』とか、仲間意識を持ってエールを送り合っていた。これもP.UNITEDのいいところだと思う」
チームジャパンで車いすカーリングを応援
横のつながりから生まれた応援は、P.UNITEDに参加する競技団体の中で唯一の冬季競技であり、ミラノ・コルティナへの切符獲得を目指しスコットランドで世界選手権を戦う車いすカーリングのミックスダブルス“チーム中島”の中島洋治・小川亜希へも向けられた。

日本代表の“チーム中島”にとって、今大会はパラリンピック出場をかけた事実上の最終予選。まさにいま、負けられない戦いに挑んでいる。こうしたプレッシャーがかかる場面をどう乗り越えていきたかについて、話は展開した。

パリオリンピック総合馬術団体銅メダリスト・戸本一真とパリパラリンピック日本代表の稲葉は、ともに平常心だったと振り返る。
「周りからは、戸本はパリに行けるのかという声をいただいていたが、僕はいたって冷静。普段やってきたことを繰り返すだけという気持ちだった」(戸本)
「できることをやるしかないので、そこに集中していた」(稲葉)

カーリング元日本代表の市川美余は、平常心を保つためにメンタルトレーングを行っていたそう。
「カーリングにおいて、メンタルは勝負を分ける要因。(試合では)いかに平常心で練習と同じように投げられるかが大事。最近はメンタルトレーナーをつけているチームが増えたのだが、私も現役時代メンタルトレーナーをつけて、いい香りやルーティンを探したりして、いかに自分がいつもの練習通りにできるかを模索し、プレーに臨んでいた」

花岡は注目されることをプレッシャーに感じないタイプと言い、そのうえで心がけていることがあると語る。
「車いすカーリングは、4人制もしくはダブルス。チームの雰囲気が悪くなってしまうと結果に響く。常に笑っていればいいことがあると思い、苦しい場面こそ笑うように心がけて、楽しんで試合をしている」
加納はパリパラリンピックの1年前は、“ガクブル”と震えていたそう。
「1年前ともなると、練習以外のことでストレスを受けたりとかしてたので、一日一日の練習、その日その日をベスト尽くすように心がけていた。(チーム中島も)そういうふうに過ごしていただければと思うし、みんなで応援できたらと思う」
市川も“チーム中島”にエールを送る。
「車いすカーリングは、健常のカーリングと違ってスイープがないのが難しいところでもあり、見どころ。また、個人競技の部分が多い反面、作戦はチームで考えたりもするため、この作戦はどう考えていくのかといったところも見どころになると思う。実はオリンピックもまだ男女ともに出場権を獲得していない。カーリング界も一丸となり、チームジャパンとして(チーム中島を)応援していきたい」

マイナー競技にとって、オリンピック・パラリンピックでメダルを獲ることが注目度を上げるうえで重要、と戸本と市川は口をそろえる。2010年のバンクーバー大会に出場して以降、パラリンピックの舞台から遠ざかっている車いすカーリング。まずはミラノ・コルティナの出場権をつかみ取ることで、一歩ずつ高みを目指してほしい。

text by TEAM A
photo by Hiroaki Yoda