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クロスカントリースキー
【Road to Beijing 2022】クロスカントリースキーヤー川除大輝。W杯金メダルからのリスタート
2018-19シーズンを締めくくる3月のワールドカップ札幌大会は、クロスカントリースキー・川除大輝にとって忘れられない大会となった。
大会3日目のミドル(フリー)で優勝、最終日に行われたショート(クラシカル)で3位。とくに表彰台の中央に立ったミドルではフィニッシュ地点でガッツポーズをして見せた。
「クラシカルでは今シーズン、金と銅を獲っているけれど、スケーティング走法のフリーではまだ優勝できると思っていなかったので、すごく感情が出た瞬間でした」
身長161㎝の小さなスキーヤーは、表彰台の中央で2位のポーランド選手と3位のフランス選手に抱き上げられ、勝利の味を噛み締めた。
小学時代に出会ったクロスカントリースキー
2001年、富山で生まれた。生まれつき、手足の指の一部がない。小学生のとき、いとこからの誘いでスキーに出会い、小学3年生のとき、父親に連れられてパラノルディックスキーの合宿に初参加。それは2010年の春。バンクーバーパラリンピックで日本のエース、新田佳浩が金メダルを獲得した直後だった。以来、憧れを抱いた新田の背中を追いながらも、高校総体に出場するなどオリンピックを目指すようなスキー選手と同じ道を進んでいる。
練習ではストックを持つこともあるが、レースではストックを持たずに腕を大きく振って滑走する。スキー板を履く足は左には2本、右に3本指が残っているが、その足指が内側に倒れないよう、オリジナルのインソールをブーツに入れて滑る工夫もする。
障がいクラスLW5/7(上肢障がい)の川除は、先のワールドカップ札幌大会のショート(クラシカル)で、障がいクラスこそ異なるが、同じ立位で4位だった新田の順位を上回り、これからパラノルディックスキー日本チームを率いるエースに名乗りを上げた。
初出場した平昌2018冬季パラリンピックにこそ、出場停止中のロシア選手の姿はなかったが、同様の障がいがあるロシア人のライバルも存在する。2022年の北京パラリンピックでは強豪ロシアとの激しい金メダル争いが見られるかもしれない。
「平昌以降、調子が上がってきて、いい流れが来ています。でも、今は体が動くこともあって無理やり滑っている感じもあります。他の選手の動画なども見ましたが、技術的な面ではまだまだ海外の選手には劣っているので、そういうところをしっかりと練習していき、来シーズンは総合優勝にからめるよう、多くの大会で優勝したいです」
さらなる高みを見据えて挑戦を続ける川除。その先には、北京が、そして金メダルが待っている。
名門スキー部で新たな生活がスタート
高校最後の大会を金メダルで締めくくった川除は、桜の季節に富山から上京。名門・日本大学スキー部の門戸を叩いた。
スキー部の学生に混ざって寮生活を始めるも、バリアは感じない。
「部屋は思っていたよりきれい。先輩と4人部屋で掃除とか仕事もたくさんあるけれど、バランスのいいご飯を作ってもらえることが何よりありがたいですね」
入学前に「日本大学は強豪。そのなかで戦えれば全国でも通じると思うので、まずは先輩に勝てるよう頑張っていきたいです」と語っていた川除。
「先輩たちはご飯を食べる量がすごい。ウエイトトレーニングでも自分よりずっと重いものを持ち上げるし、見習うところばかりです」
そんな先輩たちに影響されてか大学入学後のわずか2ヵ月で体重が4㎏以上もアップした。「まだ体が重いとは感じていないので、体づくりを頑張りたいです。そして、大学の授業でも自分に合ったトレーニング法や栄養学、効率良く体を動かす方法も学びたいと思っています」
今後の飛躍が楽しみな川除大輝。令和の時代に活躍し、大きく輝く星になる。
text by Asuka Senaga
photo by X-1
※本事業は、パラスポーツ応援チャリティーソング「雨あがりのステップ」寄付金対象事業です。