[2016ITU世界パラトライアスロン横浜大会]リオ目指す世界トップ級が横浜に集結!

[2016ITU世界パラトライアスロン横浜大会]リオ目指す世界トップ級が横浜に集結!
2016.05.17.TUE 公開

2016ITU世界パラトライアスロン横浜大会が5月14日から2日間の日程で、横浜市山下公園周辺の特設コースを舞台に行われた。14日のエリートの部はリオ・パラリンピック参加資格ランキングポイント獲得大会でもあり、障がい別の全9クラス(男子5、女子4)で、国内外から集まったトップ級の選手約60人が熾烈な戦いを繰り広げた。

世界ランク1位のシーリーが優勝。秦は2位

PT2クラス(切断・機能障がいなど/立位)女子はリオの実施種目。ランキング6位の秦由加子(マーズフラッグ・稲毛インター)は自己ベストとなる1時間26分56秒でフィニッシュ。

バイクを強化している秦
バイクを強化している秦

だが、同1位のアリサ・シーリー(米国)に約3分差をつけられ2位。第一声は、「悔しい」だった。水泳からパラトライアスロンに転向した秦はスイムを得意とする。この日も狙い通りのレースを展開したが、ランの途中でシーリーに追いつかれた。「ランの力不足など課題は多い。やっぱり優勝したかった」と無念さをにじませたが、ランキングのポイントは順調に加算。「リオではメダルを狙いたい」と話す秦は、今後は国内大会を中心に調整を重ねるという。

一方、優勝したシーリーはスイムを苦手とし、レース前には秦の泳力を警戒していたが、「コース取りをミスしスイムでタイムロスして少し落ち込んだが、バイクでいいレースができ挽回できた。帰国後はリオでの金メダルを狙って集中したい。横浜大会は運営もよく、沿道の応援も素晴らしい。今日はとてもいい一日だった」と笑顔だった。

PT4クラスは、カナダのダニエルが圧倒

PT4クラス(切断・機能障がいなど/立位)は世界的に選手層も厚く、男女ともリオで実施予定だが、男子は世界ランク1位のステファン・ダニエル(カナダ)が58分56秒をマークして圧倒的強さを見せ、優勝。横浜大会は初出場だったが、「美しい街でコースもよかった。スイムは波が少しあったが、うまく泳ぐことを心がけた。バイクはターン(曲がり角)が多かったが、ランは平坦で走りやすかった。リオでも勝ちたい」と、きっぱり。まだ19歳のダニエルは、「2020年東京大会も目標にはおいている」とも話していた。

表彰台を狙った佐藤圭一(エイベックスホールディングス)は7位に終わった。「今日はスイムで出遅れた。バイクとランで取り返そうとしたが、届かなかった。(ハードな合宿と連戦で)疲れがたまっていた割に体は動いたし、タイム的には悪くなかった」と前を向いたが、「スイムはあと2分速くしなければ。(スイムは)始めてまだ数年のため、スカーリングなど基本的なことができていない。水に逆らうのでなく、水の流れに合わせた動きにしたい」と課題を再確認していた。リオ出場権のため、この後もポイント獲得の指定大会にはできるだけ出場する意向という。

山田は悔しい3位も、収穫のレースに

リオでは女子のみの実施となるPT5 クラス(視覚障がい)は山田敦子(アルケア)が3位に入ったものの、強化してきたスイムが振るわず、フィニッシュ後は涙。「自国大会で時差もなく、応援も多い中、優勝を狙わないといけなかった。私(の実力)も伸びたけど、周り(海外のライバル)も上がっている。もっと練習を積まないと」と唇をかんだ。

リオを目指す山田(写真左)
リオを目指す山田(写真左)

とはいえ、光明もある。西山優(グンゼ)ガイドとはペアを組んでまだ日が浅く、スプリントレースとしては2回目だったが、「バイクの後ろに乗っていても、すごい安心感がある。気持ちも強い」と相性の良さを改めて確認できた。西山ガイドはこの春、短大を卒業したばかりのトライアスリートだが、昨年初めてレースでのガイドを経験し、「敦子さんの目の代わりになれたことに感動」と魅力に目覚め、なんと関西に就職し、山田の自宅近くに転居したという。山田は、「スポンサーさんの協力もあり、一緒に練習できる環境が整った。これからいっぱい練習したい」と意気込んでいた。

また、リオでは実施されない男子PT5クラスは中澤隆(青山トライアスロン倶楽部、タカラエムシー、インターフィールド)が原田雄太郎ガイドとのペアで優勝した。

参加目的はそれぞれ。2日間に実施のエイジパラ

15日はエイジグループ(※)のレースが行われ、パラの部(※※)には日本選手のみ20人が出場、それぞれの目標に向けてゴールを目指した。約半数は前日のエリートの部から調整目的で連戦した選手。例えば、総合優勝を果たした佐藤は、「(昨日うまくいかなかった)スイムだけはちゃんとレースの意識で臨んだ。昨日より(波がかなり高く)悪条件だったので練習にはもってこいだった」と満足そうに話した。山田もまた、西山ガイドとのレース経験を積むためだったり、第1トランジションのタイム短縮を目指し改良したウエットスーツを試したり、「タンデムバイクはレースでないと思い切り走れないから」など恰好の練習機会ととらえていた。

一般参加選手のなかには先日、柔道のリオ予選会で敗れた半谷静香(エイベックス)の姿もあった。柔道の体力づくりやトライアスロンへの興味から初挑戦を決めたというが、苦手なスイムで苦戦。あいにく、ベテランでも手こずるほど高波だったこともあり、制限時間ギリギリで完泳。バイクとランは無難にまとめて完走したものの「海で死ぬかと思った。もうやりたくない」と苦笑交じり。自国開催の4年後を目指す柔道のリスタートに向け、よいリフレッシュにはなったようだ。

この横浜大会は、世界トライアスロンシリーズの地域大会のひとつとして2009年から開催され、パラトライアスロンの部は11年に追加された。年々、国内外から参加者が増え、14年にパラオープンの部が新設され、昨年からエイジパラとしてリニューアルした。5月の風物詩として定着してきた大会は、競技の普及にも貢献している。

※トライアスロンのエイジグループは、年齢別に競技を行い表彰するためのグループ分けのこと。また、エリートの部に対して、一般の部を、エイジグループと呼ぶこともある。

※※パラの部は、誰でも参加できる一般レースで、横浜大会では国際クラス分け(PT1~5)でなく、旧クラス分け(TRI1~6)で実施されている。

text by Kyoko Hoshino
photo by AFLO SPORT

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