見据えるのは東京パラリンピックの金メダル。日本代表が世界トップに挑むジャパンパラ競技大会、25日に開幕

見据えるのは東京パラリンピックの金メダル。日本代表が世界トップに挑むジャパンパラ競技大会、25日に開幕
2017.05.23.TUE 公開

2016年のリオパラリンピックで悲願の銅メダルを獲得したウィルチェアーラグビー日本代表が出場する「ジャパンパラ競技大会」が5月25日から28日まで千葉ポートアリーナで開催される。2014年度からはじまったジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会は、当たりの強い海外勢と試合を積むことで強化を図ろうというもの。世界ランキングに影響しない貴重な実戦の場であり、日本にとって若手や発展途上のライン(コート上でプレーする4選手の組み合わせ)が成長する機会となっている。

3年後の東京パラリンピックで金メダル獲得を大きな目標に掲げ、チームの土台を再構築している日本は、3回目の優勝を目指す。

世界3強が集結

今年の大会はリオパラリンピックで金メダルを争ったオーストラリアとアメリカが来日。つまりリオ大会金メダルのオーストラリア、同銀メダルのアメリカ、そして銅メダルの日本と、世界トップ3が千葉に集結することになる。大会は、予選で3ヵ国がそれぞれ3試合ずつ計6試合を行い、その1位と、最終日に行う3位決定戦の勝者が決勝戦で優勝を争う。注目の決勝戦は28日(日)13時にティップオフを迎える。※入場無料

地元開催の東京パラリンピック金メダル獲得を見据える日本は今年から、リオパラリンピックカナダ代表ヘッドコーチでアメリカ人のケビン・オアー氏が新たにヘッドコーチ(HC)に就任。すでに2大会を指揮しており、強豪揃いのジャパンパラでは「ハイレベルな試合を見せる」と意気込んでいる。

2月の就任会見で意気込みを述べるオアーHC photo by Asuka Senaga

日本代表は14選手がベンチ入り。地元千葉の今井友明(1.0/RIZE)らリオパラリンピックのメダルメンバー10人のほか、インチョン2014アジアパラ競技大会の日本代表で、恵まれた長い腕で車いすを漕ぐ渡邉翔太(1.5/Freedom)、パワフルなタックルが持ち味の菅野元揮(2.0/BLITZ)、2006年から2008年まで強化指定選手だった田邉耕一(0.5/BLITZ)、競技歴約3年で今年初めて強化指定選手入りを果たした倉橋香衣(0.5/BLITZ)の4人が選出された。

新HCがミッションに掲げるひとつは「新しい選手の発掘」だ。もともと新HCは「日本は世界に通用するラインをたくさん持っている」と評価しており、現メンバーのパフォーマンスを最大限に活かす新戦力の台頭にも期待を寄せている。

日本の命運を握る女子プレーヤーの存在

ウィルチェアーラグビーは男女混合の競技だが、今大会には日本代表の女性選手も初めて出場する。

この4人制ラグビーは、障がいの種類やレベルにより選手それぞれにポイントが与えられる「持ち点制」を採用しており、通常4選手の合計は8点以内でなくてはならない。だが、コート上の選手の中に女子が含まれる場合は、0.5点追加で付与される(たとえば、女子ひとりがコート上にいればその合計は8.5点まで許可される)。

オアーHCは、2月の就任会見で期待している若手として、今大会唯一の女性プレーヤーである倉橋の名前を挙げたが、これからチームを強化していくうえで彼女の代表入りの影響は大きい。

(障がいの重い)ローポインターである倉橋がコートに出ることで、これまで実現しなかった高いポイントの選手の組み合わせも実現し、ラインのバリエーションを増やすことができるからだ。

さらにいえば、強化合宿などのハードな練習でも笑顔の絶えない彼女のキャラクターは、今後チームが壁にぶち当たったとき、明るい光となってくれるに違いない。

リオパラリンピックでチームのキャプテンを務めた池(左)とオアーHC photo by Asuka Senaga

そして、強化合宿などを通して人一倍大きな声で選手たちにアドバイスを送り、情熱的に指導するオアーHCのもと、モチベーションを高めているのは、若い選手ばかりではない。「経験のある選手も基礎を積極的に学んでいる」と池透暢(3.0/Freedom)が、「若い選手にその経験を伝えていこうという気持ちを感じる」とオアーHCがそれぞれ言うようにベテラン勢も奮起。現在のチームには、全体で高め合っていく雰囲気があるようだ。東京に向かって舵を切った日本チームのさらなるレベルアップを期待せずにはいられない。

大きな歓声を背に

リオでメダルを獲得し、ウィルチェアーラグビーは過去になく注目されたが、実際のところ競技を見たという人やファンはまだ多くはない。国内で開催される貴重な国際大会であるジャパンパラは、競技の醍醐味を多くの人に知ってもらうための絶好のアピールの場でもある。

今回は、出場選手らが会場周辺の学校を訪問して体験会や講話を行った中学校の生徒ら約1500人が来場する予定といい、車いす同士が激しくぶつかり合う競技の迫力に子どもたちは夢中になることだろう。

さらに屈強な海外選手のパフォーマンスや39歳ながら衰えを知らない日本代表のスピードスター・池崎大輔(3.0/北海道BigDippers)が世界のトップ選手たちとどんなマッチアップを見せるかにも注目したい。

そんななか日本は先日、アメリカで行われたアメリカ、カナダとの3ヵ国対抗戦「Tri Nations Wheelchair Rugby Invitational」で優勝し、好調な滑り出しを見せた。勢いに乗るウィルチェアーラグビー日本代表は、ジャパンパラでも強豪から勝利をもぎ取り、東京パラリンピックの金メダル候補に名乗りを上げる。

※カッコ内は、障がいの種類やレベルによって分けられた持ち点。

text by Asuka Senaga
photo by X-1

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