映画鑑賞中、会議中、見ないでも時間がわかる腕時計

映画鑑賞中、会議中、見ないでも時間がわかる腕時計
2020.08.07.FRI 公開

最近、時間はスマホで確認するという人が増えている。しかし、映画館や劇場といった場所、あるいは会議中や商談中にスマホで時間を確認するのはマナー違反。そこでご紹介したいのが見ないでも時間が分かるEONE(イーワン)の触わる腕時計「Bradley(ブラッドリー)」だ。機能性だけでなく、スタイリッシュなフォルム、さらにはその誕生秘話や制作ストーリーなど、この時計の魅力を紹介する。

キーワードは「時間を触る」

商談中、あるいはデート中にチラチラと時計を見たら「つまらないのかな」「次に予定でもあるのかな」と相手に思わせてしまうだろう。場合によっては、大切な人の気分を害してしまうことだってあり得る。そんな心配を解消してくれるのが、目で見ないでも時間がわかる腕時計Bradley。

この腕時計には強力な磁石が内蔵されていて、時計の外側に配置されたボールを動かして時を刻む仕組み。文字盤の表面に設置されたボールは「分」を、側面に配置されたボールは「時」を表す。このふたつのボールに触れて位置を確認することで時間が分かるというわけだ。ボールは固定されていないので、強く触れば動いてしまうが、軽く振ると正確な位置へピッタリと戻る。この動きが面白くて、わざとボールを動かして戻る場面を人に見せたくなるという人もいるのだとか。

触る腕時計が生まれたきっかけは友情?

触る腕時計誕生のきっかけは、小さな日常の発見だった。EONEの創業者キム・ヒョンス氏がまだ大学生だったある日のこと。授業中に隣に座る友人が腕時計をしているのに時間を聞いてくることを不思議に思った。実はその友人は視覚障がい者で、彼の時計は音声で時刻を知らせるタイプのものだったため、授業中に時間を確かめることができなかったのだ。

その時初めて、目が見えない人がいつでもどこでも気軽に使える時計がないことに気づいたキム氏は、視覚障がい者のために時計を作ることを考えた。 しかも、その制作過程でキム氏は「本当にいいデザインとは使う人を区別しない、誰でも楽しめるものである」ということに気づき、目が見えない人だけでなく、全ての人が楽しめる現在の洗練されたデザインにたどり着いた。 ブランド名の「EONE」は「Everyone」の略語。性別や年齢、人種や障がいのあるなしに関係なく、すべての人が楽しめる時計を象徴しているのだ。

数々のデザイン賞を受賞! 世界も認めたスタイリッシュなデザイン

創業者のキム・ヒョンス氏(左)と、同社スポークスマンのブラッドリー・スナイダー氏(右)

Bradleyという、この腕時計の名前は、アフガニスタンでのIEDの爆発で視力を失った元海軍将校で、2012年のロンドンパラリンピック・水泳競技の金メダリスト、ブラッドリー・スナイダー氏への敬意を込めて名付けられた。時計の機能性を高めるため、多くの貴重な助言をしたスナイダー氏は、現在同社のスポークスマンを務めている。 こうして誕生した触る腕時計は、その機能性もさることながら優れたデザインが高い評価を得て、「IF Design Awards」や「Reddot Design Awards」などの世界的なデザイン賞を受賞。また、ロンドンデザインミュージアムコレクションに選定され、イギリス大英博物館の永久コレクションとして所蔵されている。

EONE JAPANの広報ファン氏によると、「この腕時計の購入者は95%以上は晴眼者です。デザインと時計のストーリーが気に入って購入する人が多いようです」とのこと。こうした現状について「ファッションという日常を通じて、今までは気にしていなかった視覚障がい者の現状について、知るきっかけとなれたら嬉しい」とファン氏は語ってくれた。

この腕時計はデザインの選択肢が豊富なのも特徴。たとえばベルトはステンレススチールメッシュのクールなものや、温かみのある革製など数種類。文字盤のサイズや色もさまざまでカップルがペアで持つこともできる。

日本限定コラボ商品「Bradley x Katoken」

2020年5月にはこの腕時計の愛用者で、ブラインドサッカー・加藤健人選手との日本限定コラボ商品が発売になった。

加藤選手は「この時計をつけていると、『何この時計?』と、尋ねられることがきっかけになってコミュニケーションが生まれる」と語っている。このコラボした腕時計のベルトは触り心地のよいイタリアンレザーだが、金メダルへの想いを込めて、ブラインドサッカーの掛け声、<Voy!>の文字が金色でさりげなく刻印されている。これもまた、コミュニケーションのきっかけになりそうだ。

機能面だけでなく、デザイン的にも優れた触る腕時計が世界中の人から愛されるのは、そこに隠された素敵なストーリーや、込められた想いが伝わってくるから。この腕時計に込められたメッセージは年齢や性別、国籍や文化が違っても、目が見えても見えなくても、全ての人が共有できるものがあるということ。多様化するこれからの社会、こうしたユニバーサルなデザインがかっこよく、そして常識になる時代がくるのではないだろうか。

text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)
photo by EONE

映画鑑賞中、会議中、見ないでも時間がわかる腕時計

『映画鑑賞中、会議中、見ないでも時間がわかる腕時計』