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東京パラリンピックの金メダル候補・佐藤友祈が小学校で特別授業
東京2020パラリンピックまであと100日を切った。この節目を迎えるにあたり、東京2020組織委員会と日本財団パラリンピックサポートセンターは5月14日、パラリンピックや多様性・共生社会についての教育を熱心に行っている港区立赤坂小学校で特別公開授業を実施した。
佐藤友祈がオンライン授業で届けた“夢をかなえる秘訣”
特別公開授業は第一部と第二部に分かれて行われた。第一部は陸上競技・車いすT52クラスの金メダル候補である佐藤友祈選手によるオンライン授業。新型コロナウイルス感染症対策として、授業はリモートで行われ、佐藤は体育館の大スクリーンを通して子どもたちにメッセージを伝えた。
21歳のときに病気で車いす生活を余儀なくされたが、テレビで風を切って走るパラリンピックの選手を観たことで、再び前に進む大きな力をもらった。さらに、そこから競技を始め、リオパラリンピックで銀メダルを獲得。夢を口にすることで周囲を巻き込み、競技に没頭できる環境をつくってきた成功体験を、佐藤選手ならではのアドバイスを交えながら語った。
「たとえ困難な状況に置かれても、自分で立てた目標や夢をおそれずに口に出してかなえていく。そんな僕の姿勢を見せることにより、子どもたちが夢を大きく膨らませ、実際に夢に向かって突き進んでもらえたら」
そんな思いを込めて登壇したという佐藤。この日のテーマを「夢は叶えること」と設定し、実際にリオパラリンピックで走る姿を映像で見てもらった後、「みんなの夢は何ですか?」と子どもたちに投げかけた。
これに対し、6人の児童が挙手し「獣医になる」などの夢を発表した。
その後、佐藤がボードを使って、自身のこれまでを振り返りながら、夢をかなえたポイントを紐解いていく。リオでメダルを獲るという「ゴールを決め」、競技を始めたときに出場できる大会を探したり、競技環境を求めて住居を移ったりするなど「即、行動」し、400mと1500mという専門種目で世界の頂点を目指すに至った「自分の強みを活かす!」という3つのポイントを解説した。
「できない理由を探している暇があったらまずは行動しようとしてきた」、「自分に才能を感じ、磨けばもっと輝ける!とワクワクした」……そんな佐藤の言葉に児童たちは引き込まれていく。
4つ目はクイズ形式で児童に考えてもらい、児童からは「努力」、「あきらめない」などの答えが挙がったが、4つ目に当てはまる佐藤の答えは「臆さずに夢を口にする」こと。
「強い思いがあれば笑われても気にならないよね。まずは夢を口にすることから始めてみてはどうだろう」と佐藤は児童たちに優しく語りかけた。
最後は、児童からの質問に佐藤が答える質問コーナー。数多くの手が上がり、「佐藤選手にとって陸上とは?」、「一日に何時間、練習する?」などの質問に答えていく。「今までつらかったことは?」との問いに、佐藤は金メダルを目指して挑んだリオで銀メダルに終わったことを挙げ、「東京パラリンピックでは、必ず世界記録を更新し、金メダルを2つ獲得します。そのときは、みんなに直接金メダルを見せにくるので、応援よろしくお願いします」と締めくくった。
子どもたちが学んできた共生社会実現のヒントとは
授業の後半は、子どもたちからの発表の時間。現在5年生の児童たちが総合的な学びの時間で4年生のときに一年間かけて取り組んできた「ユニバーサルデザイン イン 赤坂」を発表した。
子どもたちは、パラリンピック競技採用を目指して活動するアンプティサッカーのレジェンド新井誠治さんを招いて行った出前授業を通して、「障がいがある人はかわいそうではない。誰でも苦手なことや不便なことがあるから、相手の立場に立って助け合わなければならないと気づいた」と堂々と話した。また、アンプティサッカーをより多くの人に知ってもらうために何をしたらいいか考え、下級生に障がい者スポーツを体験してもらい、その面白さや難しさ、選手のかっこよさを感じてもらったそうだ。
また、第二部では、5年生の児童70人がパラリンピック22競技を踊る「TOKYO 2020 Para Sports Dance!」でアスリートを激励した。この日、初お披露目された「TOKYO 2020 Para Sports Dance!」は、世界中の子どもたちから絶大な人気を誇るキッズ向けのアニメ「ベイビーシャーク」と、東京パラリンピックの公式マスコットとしておなじみの「ソメイティ」がコラボしたもの。この日にむけて練習に取り組んできた児童たちはアップテンポなダンスをリズミカルに踊りきった。
東京オリンピック・パラリンピックの開催を巡りさまざまな議論がされる中で、子どもたちから激励を受けた佐藤は「コロナ禍でも元気な姿を見せてくれたみんなに元気をもらいました」と感謝を述べた。
これまでパラリンピックやパラスポーツについて学んできた児童たち。5年生の前澤さんは「知っている競技も改めて耳にすることができたし、知らなかった競技も今回こういうことで知れてよかったと思いました」と話した。
また、佐藤の講演を聞き、同じ5年生の知念さんは「こわがらずに夢を口に出し、努力をする。そして、その夢がかなわなくてもあきらめずにまた新しい夢を作って努力をする姿が心に残りました」と感想を述べた。
コロナ禍でも続くパラリンピック教育。この日も、未来を切り開いてきたアスリートの言葉は、未来のある子どもたちに夢に向かう大いなる勇気をあたえてくれたことだろう。
text by TEAM A
key visual by Tokyo 2020