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車いすラグビー
第19回ウィルチェアーラグビー日本選手権、Okinawa Hurricanesが2連覇
12月15日から17日までの3日間、千葉ポートアリーナで「三井不動産第19回ウィルチェアーラグビー日本選手権大会」が行われた。予選リーグとプレーオフを勝ち抜いた精鋭8チームが参戦し、クラブチーム日本一をかけて熱戦を繰り広げた。
決勝のカードはBLITZとOkinawa Hurricanes
最終日に行われた決勝の舞台には、優勝候補のOkinawa Hurricanesと古豪BLITZ(東京)が順当に勝ち上がった。観客約970人が見守るなかで行われたその決勝は、BLITZの先制でスタート。過去に5連覇を築き、長らくウィルチェアーラグビー界をけん引してきた田村学(2.5)と島川慎一(3.0)のホットラインが機能し、その威厳を漂わせた。 しかし、前回王者のOkinawa Hurricanesには揺るがぬ自信と余裕があった。リオパラリンピックで銅メダルを獲得した日本代表の乗松聖矢(1.5)と仲里進(2.5)が中心となったOkinawa Hurricanesは、助っ人外国人選手のマット・ルイス(オーストラリア/3.5)にボールを集め、着実に得点を重ねた。さらに持ち前の強いディフェンスも功奏し、第二ピリオドが終わって33-27でリードした。
「第一ピリオドと第二ピリオドが勝負だと思っていた。オフェンスに重点を置いたのと、(BLITZの得点源である)島川選手をダブル、もしくはトルプルで抑えに行ったのがよかった」 と、Okinawa Hurricanesの仲里は振り返る。
Okinawa Hurricanesは後半、ルイスをベンチで休ませつつ、BLITZとの点差を広げると、64-53で試合を決め、2年連続の日本一を達成した。
今大会のMVPに輝いたルイスは、アメリカでプレー経験のある仲里に誘われ、2016年から日本選手権に参戦。「連覇は最高の気分」と声を弾ませ、「来年も来日したい」と3年連続で日本のリーグ戦出場を示唆した。
大会を終えて「お客さん多かったので少し緊張した」と語り、安堵の笑顔を見せたのは、豊富な運動量でコートを走り抜き、両肢体欠損のルイスをアシストした乗松だ。「決勝の相手はやはり一番強く、第一ピリオドでなかなかターンオーバーが取れなかった」とBLITZを称えつつ、「きれいなオフェンスからディフェンスにつなげる自分たちのプレースタイルを貫いたのが勝因」と胸を張った。
そして、乗松はこの大会に臨むにあたって特別な思いがあったことを明かした。ウィルチェアーラグビーを始めた2013年から所属していたOkinawa Hurricanesを今大会で去るのだ。練習のために度々、熊本から渡沖していた乗松は言葉に力を込める。 「Okinawa Hurricanesの一員として最後の大会。今の自分があるのはこのチームのおかげだし、普段の練習を支えてもらっているスタッフたちの恩返しは優勝しかないと思っていた」
さらに、チームにはこの大会で引退を決めていた選手もおり、最後の花道を作ろうとチーム全員が優勝に向かって結束していた。
移籍する乗松は、「決勝は疲れがたまっていたので、自分自身納得いかないプレーもあったが、最大限の力で戦った。チームには感謝の気持ちでいっぱい」と話し、2020年の東京パラリンピック金メダル獲得に向けてさらなるレベルアップを誓った。
3位は池崎率いる北海道Big Dippers
北海道Big DippersとAXE(埼玉)の対決となった3位決定戦は、序盤はゆっくりとした展開で北海道が試合を組み立てる。一方のAXEは後半から乗松隆由(1.5)を投入し、第4ピリオドで一点差まで詰め寄るも、48-46で勝利した。
日本代表のエース池崎大輔(3.0)を擁する北海道Big Dippersは前日の準決勝でOkinawa Hurricanesに36-65で力負けし、悔しい日本選手権になったものの、3位で大会を終えて意地を見せた。「なかなか自分たちのリズムで試合を運べなかった。来年こそは日本一になれるように基礎からやっていきたい」と前を向いた。
8チームが出場した本大会。日本代表チームの選手たちが各地でリーダーシップを発揮し、群雄割拠の時代に入りつつあるなか、2017年4月に創設したチームも日本選手権初出場を果たした。仙台や福島を拠点に活動するTOHOKU STORMERS(東北)だ。リオパラリンピックでアシスタントコーチを務めたパラリンピアンの三阪洋行が東北にラグビー文化を根付かせたいと立ち上げたチームで、リオパラリンピック日本代表の庄子健(2.0)ら役者も揃う。加えて日本代表チームの待望でもあった(状態のいい)欠損のハイポインター橋本勝也(3.5)も所属する。本大会は8位だったが、「中学3年生の彼を『日本選手権に連れて行こう』と予選を戦った」(三阪)といい、チームのまとまりも強い。競技歴が短く、ボールハンドリングこそまだまだの橋本だが、普段は車いすバスケットボールの元日本代表選手からチェアスキルを学んでおり、来年はこの舞台で格段に成長した姿を見せてくれるに違いない。
「今大会は女性選手や若い選手の活躍も見ることができたし、レベルの高い大会だった」
そう大会を評したケヴィン・オアー日本代表ヘッドコーチも、橋本への期待は高い。
2018年は世界選手権やアジアパラ競技大会と国際大会が目白押しのウィルチェアーラグビー。ナショナルチームの活躍とともに国内クラブチームのさらなる盛り上がりにも注目だ。
text by Asuka Senaga
photo by Yoshio Kato