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ゴールボール
パラリンピック初出場のゴールボール男子日本代表、大きな成長の証である勝利を掴む!
8月25日、幕張メッセで東京2020パラリンピックのゴールボールが始まった。パラリンピック初出場の男子日本代表は13-4でアルジェリア代表に勝利し、最高のかたちで初陣を飾った。女子の日本代表はロンドンパラリンピックで金メダルを獲得しており、今大会で5大会連続の出場。それに対して男子チームは今大会がパラリンピック初出場となる。
若手がぐんぐん成長
実績が大きく異なる分、期待も強化のための体制も、従来は女子チームに偏っていた。しかし、女子チームのヘッドコーチであった市川喬一氏が男子チームも含めた総監督に就任したことで強化体制を一新。直近では1月の3分の2をNTCイーストで強化のための合宿にあてるなど、男女ともにゴールボールに専念できる環境が整ってきた。東京パラリンピックが1年延期されたこともプラスに作用し、今年2月のジャパンパラの際に宮食行次は「この期間で僕たちは世界で一番成長していると思う」と、その手応えを語っていた。
そして、久しぶりの国際大会となったこの日の試合は、半年の間にさらなる成長を遂げていることを印象づけるものだった。開始から約1分半で金子和也がアルジェリアのゴールネットを揺らして先制。自身でボールをキャッチしてから素早くショットを投げ返す日本代表得意のパターンが見事にはまった。
このゴールでアルジェリアチームも火がついたようで、パワフルなショットを、コートに体を横たえてディフェンスする際にセンターとウイングの足が重なる防ぎにくいコースへと、正確に打ってくる。緊張感のある攻防が続くものの、アルジェリアにリードを許すことなく前半を7-3というスコアで折り返す。
後半に入っても日本チームの勢いは衰えない。とくに好調だったのは左ウイングでチーム唯一の左利きである金子。左サイドからストレートに抜くストレートボールだけでなく、投げる位置を変えながらバウンドボールも織り交ぜ、後半残り約10分で宮食にバトンを渡すまで合計7得点を挙げた。
その宮食は、2月の試合時と比べてもさらにウエイトが増した様子。チームとしてフィジカル強化に力を入れている成果だ。「ボールを押し込む力がアップしたことで、中の鈴が鳴りにくくなり、相手が取りにくいボールを投げられるようになった」と語るように本人もその成果を実感している様子。途中出場ながら3得点を挙げ、チームの勝利に貢献した。
アグレッシブに攻めるのが日本らしさ
工藤力也コーチは「パラリンピック初の試合で緊張感もあったが、失敗を恐れずアグレッシブに攻める日本チームらしい試合で結果も出せてスタートラインに立てた」と試合を振り返る。フィジカルの強い海外勢に対しても「ゴールボールは3人で9mのコートを守る競技。3人が1枚の壁となり、連携して得点も取れて勝利を掴めた。海外勢に対しても十分に通用すると選手も自信を持てたはず」と語る。
この試合では金子のスピードあるショットが多くの得点につながったが、「それもチームとしてバウンドボールや移動してのクロスボールなどを織り交ぜた成果。日本らしい技術のあるスタイルで、この後も闘っていきたい」とチーム一丸で掴んだ勝利であることを強調。この1年での急速な成長についても「ゴールボールにかける時間が圧倒的に増えたことの成果。フィジカルももちろんだが、心技体すべてが向上している」と語り、取り組んできた強化策の成果に自信を深めた様子。今後の試合についても「失敗を恐れずアグレッシブにチャレンジしていきたい」と言葉を続ける。
最高のかたちでパラリンピックデビューを飾った男子日本代表。その勢いのまま勝利を積み重ねるつもりだ。
edited by TEAM A
text by Shigeki Masutani
photo by Jun Tsukida