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クロスカントリースキー
新田佳浩、悔し涙の銀メダル・クロスカントリースキー/平昌パラリンピック
14日、クロスカントリースキーの1.5㎞スプリント(クラシカル)で新田佳浩(男子立位/LW8)が銀メダルを獲得した。そのメダルは、悔しさと安堵感の入り混じった複雑なものだった。
大激戦の末……
予選を2位で通過した新田は、準決勝2組をトップで勝ち抜いて決勝へ。6人によるマススタート(障がいの重い選手は先にスタートする)で始まった決勝は、新田がスタートからスピードに乗った。コースが登りになると、持ち味である“世界一の登り”を披露。ぐんぐん駆け上がり、その後トップに立った。
決勝に先立ち、「決勝のカギになるのは(終盤の)登りから平らになるところ」と話していた新田。だが、今大会は想定していたよりもアップダウンの少ないコースで、登りが得意な新田の“貯金”はぎりぎりだった。下り坂で長年のライバル、イッルカ・トゥオミスト(フィンランド)にピタリとつかれ、勝負はゴールスプリントに持ち込まれた。
トゥオミストに並ばれ、マーク・アレンツ(カナダ)も新田を追う。
誰が接戦を制するのか。予想のつかない展開に観客の目はくぎ付けになった。
新田はこのシーンを振り返る。
「接戦の苦しい状況だった。今までだったら力尽きていたかもしれないが、抜かれかけたところをもう一度巻き返すことができた」
4年前のソチ大会はメダルなしに終わり、その後、新たなトレーニングを取り入れた。低酸素室で心肺機能を鍛える厳しいトレーニングをこなしてきたが、それが大一番で生きた。
混戦のレース展開。ゴールへの一直線で新田が再び首位に立った。しかし、結末は劇的だった。新田はゴール前で後ろから猛追してきた伏兵アレクサンドル・コリャージン(カザフスタン)に刺され、2位でフィニッシュ。そのまま倒れ込んだ。
「なんで……。悔しくて涙が出ました」と新田はゴール直後の心境を語る。
カザフスタンに史上初の冬季パラリンピックの金メダルをもたらしたコリャージンは、「平昌の時計回りのコースは、右足義足で滑る自分のスタイルにぴったりだった。すべてがうまくいった」と興奮気味に語った。
結果は、1位はコリャージン、2位が新田、3位は同着でトゥオミストとアレンツだった。
再び金メダルを
37歳。長野パラリンピックから6大会連続出場のベテランだ。2010年バンクーバーパラリンピックではクラシカルで2冠。その再来を期した大会でまずはひとつ目のメダルを獲得した。「とにかく悔しい。ただ、ほっとした気持ちもある。僕たちはスキー板のワックスマンやスタッフらも含めチームで戦っている。メダルを獲得してノルディックチームの悪い流れを変えたい思いもあった」と複雑な心境を明かす。
8年ぶりに帰ってきたメダルセレモニーだったが、笑顔は少なかった。
「僕はセンターポールに日の丸を掲げるというイメージしかしてこなかった。だからこの景色を見るのは、もう絶対に嫌だなと思いました」
17日に本命のクラシカル10㎞を控える。
「37歳だけどまだ成長していると実感している。いいパフォーマンスをすれば、確実に金メダルは獲れる」
日本のエース・新田は、平昌の地で再び頂点を目指す。
text by Asuka Senaga