東京2020大会を盛り上げたTEAM JAPANがファンと交流。オリパラ合同イベントの意義とは?
日本オリンピック委員会(JOC)は12日、日本パラスポーツ協会日本パラリンピック委員会(JPC)と合同で、オンラインイベント「応援ありがとうTOKYO2020」を開催。パラリンピアンを代表し、柔道の瀬戸勇次郎が抽選で選ばれた一般参加者やSNSライブの視聴者に向けて「皆さんの応援が力になりました」と感謝を伝えた。
この日、自国で開催された東京2020オリンピック・パラリンピックでメダルを手にした選手が一堂に会した。
「トレーニングで同じ競技の選手とのつながりこそあるが、オリンピック・パラリンピック問わず他競技の選手との交流の場がなかった。いろんな方と話す機会を得られたのもうれしかったです」
水泳で金メダルを含む5個のメダルを獲得した鈴木孝幸がそう話したことからもわかるように、ファンにはもちろんだが、選手にとっても貴重な交流の機会となった。
前回リオ大会後は銀座で初めて合同パレードが実現。その後開催された「オリンピックコンサート2016」にオリンピックメダリストとともに陸上競技の佐藤友祈が出席したが、オリンピック、パラリンピックの垣根を越えて行われる公式イベントはまだ少ない。
今回はイベントに先駆け、スポーツキャスターの松岡修造さんがオリンピック代表選手たちにパラリンピックの選手を一人ひとり紹介したり、選手たちが混ざり合ってゲームや記念撮影をしたりするなど交流会も行われた。
イベントでは、パラリンピアンとオリンピアンがトークショーを行い、水泳の木村敬一は卓球の混合ダブルス金メダルの伊藤美誠に「大逆転でドイツペアを下した準々決勝は、どんな精神状態で戦っていたのか」と質問。伊藤は「ペアの水谷(隼)選手が『大丈夫だよ』と言ってくれた。初めて水谷選手に気持ちで負けていると思ったので、水谷選手に負けたくないと思って頑張りました」と明かし、木村は「戦う相手、間違ってる(笑)水谷選手はしんどかったんだろうなと思った」と切り返した。
続いて、車いすラグビー・銅メダルの池崎大輔から、空手・金メダルの喜友名諒に“相手を威嚇する顔力”について質問が飛ぶと、喜友名は「沖縄の両親の遺伝子に感謝したい」、「稽古からくる自信が気迫につながる」とコメント。続いて「普段から野生動物が獲物を狙う動画を見ながら、自分が野生になり切って真似したりしている」と明かすと、実は池崎も、ライオンやヒョウの狩りのシーンを見て“野生の勘”を磨いているという意外なトレーニング方法を披露した。
その後、オンラインで参加した一般参加者から選手への質問コーナーへ。柔道の阿部一二三、スポーツクライミングの野口啓代らと並んで、パラリンピアンにも名指しで質問が飛び、大会を通じてパラリンピックの注目度が高かったことを実感させられた。
例えば、水泳100mバタフライで悲願の金メダルに輝いた木村への質問も「(親友であり、ワンツーフィニッシュを達成したライバルの)富田宇宙選手とのエピソードを聞かせてほしい」など具体的だ。
さらに、「11月の視覚障害者柔道の大会を観に行こうと思っているが、観戦マナーを教えてほしい」という13歳の参加者からの質問に対し、「視覚障がいの競技は(競技中は)静かにしなくてはならないスポーツが多いが、(柔道は)声を出してOKなのでぜひ声援を送ってほしい」と瀬戸が返答。
東京大会でパラリンピックの柔道を観て興味を持ったという質問者に対し、柔道・銅メダリストの小川和紗は「すごくうれしい」と感激した様子だった。
イベントを終えた選手たちは、東京芸術劇場で行われた「オリンピックコンサート2021」に移動。東京大会の名場面を振り返る映像とオーケストラ演奏を楽しみながら、合間にステージに上がり、今後の決意などを語った。
こうしてイベントに参加するパラリンピックのメダリストたちには、ある強い思いがある。自国開催と選手たちの活躍で得られたパラリンピックへの関心を持続させたいという気持ちだ。
「今は、パラリンピックのレガシーをいろんなところで伝えて残していくチャンス。メディアに露出するなど積極的に動いている」とは佐藤。
アテネ大会から5大会連続でパラリンピックに出場している鈴木は「選手の競技環境や財政面は以前と比べて向上しているが、オリンピック選手と比べるとまだまだ苦労している部分もある。東京での開催ということで多くの方からの支援もいただいた。これからもパラリンピックはオリンピックの後にある。変わらないご支援をいただけたら非常にうれしい」と呼びかけていた。
text by Asuka Senaga
photo by JOC