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クロスカントリースキー
変化を恐れずに向かう、7度目のパラリンピック クロスカントリースキー・新田佳浩
4年前の平昌大会でパラリンピック通算3個目の金メダルを手にしたクロスカントリースキー・新田佳浩。「集大成」と位置付ける7度目の大舞台は、クラシカル(20km)で表彰台を目指す。
岡山県出身。3歳で左腕肘下を切断。LW8クラス(立位)。1998年の長野大会でパラリンピックに初出場。2002年ソルトレーク大会のクロスカントリースキー5kmで銅メダルを獲得。2010年バンクーバー大会では日本代表選手団の主将を務め、クロスカントリースキーの10kmと1kmで2つの金メダルを獲得。2018年の平昌大会ではクロスカントリースキーのミドル・クラシカルで金メダル、スプリント・クラシカルで銀メダルを獲得。
――東京パラリンピックをどう見ていたか。
会場へは行けませんでしたが、選手たちがメダルを獲るために頑張っている姿を間近で感じ、北京大会に向けて気持ちが引き締まりましたね。
子どもたちが映像を見て、選手たちにあこがれを抱いたり、「こういうことに関われるかな」と考えたりする……会話のなかにパラリンピックの話題が出てくるようになって、日本の皆さんにパラリンピックというものを身近に感じてもらえたのかなと思います。
――平昌大会では8年ぶりに金メダルを獲得。今の原動力は。僕はメダルが獲れない選手は、選手としては引退だと思っています。だから、メダルは追求していきたい。僕自身が獲ることもそうですが、いろんな選手にメダルのチャンスがある状況のなかで、戦ってもらいたいです。
次世代の選手の成長を促すことを積極的に行ってきました。北京大会で日本に複数のメダリストが生まれることが今後につながるのではないでしょうか。
――実績のあるベテランとしてどんな存在でありたいか。チームとしてパラリンピック7大会連続してメダルが獲れるよう、チーム力を引き上げていければと思っています。
そのためにも、アスリートとしての技術や心構えを後輩たちに少しでも吸収してもらいたいと願っていますし、メダルが獲れる人と獲れない人の違いは何なのか、伝えることがいまの役割かなと思います。
――平昌大会後の4年間、どんな気持ちで競技に取り組んできたか。僕自身、変化を恐れないことを大切にしています。平昌大会でメダルを獲ったときの取り組みは当然、正解だったとは思います。でも、そこからさらにバージョンアップしていかないと選手としてはダメ。やはり変化を恐れることなく、さまざまなことにチャレンジしていく姿を見せてこそ、真のアスリートなのではないでしょうか。
年を重ね、身体も変化しますが、そんな中でいろんなチャレンジをしていったら、いつの間にかパラリンピックに7大会連続で出場することになった。僕自身、自分の年齢や何大会出たということに興味はなくて。自分自身がこの年齢でどこまで頑張れるか、そこにチャレンジしているつもりです。
――美しいフォームが持ち味。意識している点は。できるだけ大きなフォームで走ることを意識しています。これまでは、スピードを出すため、細かく走ることを意識していましたが、走り方を変えました。ダイナミックなフォームのほうが自分のパフォーマンスを発揮できると思いますし、いい感触があります。
――課題は。2021年8月下旬に左足首を捻挫し、シーズン前になっても、ランニングができず、自転車でトレーニングをするしかないような状況が続きました。そのため、シーズンに入り、スピード持久力が足りないと感じる場面がありました。そんななかでも、例年シーズン前に落ちるパワーの数値が秋になっても伸びていたりしていて、僕自身はいい方向に向かっているのではと感じています。
――標高の高い北京の会場で戦うためにどんな準備をしているか。高地に体を順応させるために、国立スポーツ科学センターの低酸素室でトレーニングをしています。
ただ僕の年齢を考えると、疲労が抜けにくく、コンディショニングの難しさがあります。高所ほど、疲労は回復しにくくなる。そのあたりをどうやって整えていくかが重要です。
――過去の大会と異なる点は。2~3年前、夏に北京の会場に行ったことがあるものの、現在はコロナ禍で北京に行けない状況なので、雪質やコースレイアウトなどの環境が想像できない。それが今までと大きく違う点です。
ただ最初にオリンピックが行われるので、オリンピックの映像を見たり、オリンピックチームとの連携により得られるものを活かしたりしながら、オリ・パラ一丸となって戦えばいいのかなと考えています。
――平昌大会で不在だったロシア勢も出場するが。ロシアを崩さないと、真のチャンピオンじゃない、と常に思っていますし、北京大会ではロシアの牙城の一角を崩さないとメダルはない。そして、強豪のウクライナ、開催国の中国も驚異です。そのなかで、自分自身が割って入るだけの力を見出せるのかがおもしろいと感じています。真のチャンピオンを決める北京大会が非常に楽しみではあります。
――北京大会では、支えてくれる家族にどんな姿を見せたいか。もちろん、メダルを獲りたいですし、そのメダルを子どもたちにかけてあげたいという思いはあります。でも、一番は「競技を継続して頑張っている姿」を子どもたちに感じてもらいたいです。子どもはいま小学5年と小学2年ですが、頑張っているお父さんの姿を見せることが、子どもたちの成長につながると考えてます。どんな結果だったとしても、笑顔で帰って来れたらいいなと思っています。
――北京大会に向けた意気込みは。
出場することが僕のゴールではありません。クラシカルのロングで、少しでも上位に食い込みたいです。
そのためにも、最後の仕上げになる、2月の過ごし方が重要になります。まずは、しっかりトレーニングを重ねて、自分がどんな状態になったときに調子がいいのか、見極めることが大事です。ピンポイントでレースに標準を合わせていけたらと思います。
text by TEAM A
photo by Hiroaki Yoda