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自転車競技
[ジャパンパラサイクリングカップ2015] 国内初開催の UCI公認大会でエース藤田が日本記録を塗り替える快走
国内初のUCI(国際自転車競技連合)公認のパラサイクリング国際大会となる「ジャパンパラサイクリングカップ2015」が10月30日から11月1日の3日間に渡って、静岡県伊豆市の日本サイクルスポーツセンターで開催された。来年のリオパラリンピックの参加枠を獲得するためのポイントが与えられる対象大会のひとつで、日本以外にもドイツやポーランド、中国など8カ国から40人の選手・パイロットが参加した。
伊豆ベロドロームで開かれたトラック競技。ここで注目を集めたのが、日本の藤田征樹だ。圧巻だったのは、男子C1-3クラスの3km個人追い抜きの予選。スタートから力強く加速し、すり鉢状のコーナーも安定した走りで、自身が持つ日本記録を3秒以上縮める3分36秒164というタイムを叩き出した。決勝ではその記録を上回ることはできなかったものの、ライバルのオウン・クリフォード(アイルランド)を破って優勝。会場に駆けつけた観客の声援にガッツポーズで応えた。
「(2014年、好タイムが出やすいと言われる高地・アグアスカリエンテスで出した)日本記録を大幅に塗り替えることができ、まだまだラップタイムを良くしていくという手ごたえも感じています。ホームでライバルと競うのはすごく緊張しましたが、そのなかで勝つ走りができたのはプラスになりました」と、レースを振り返る。
藤田はほかにも1kmタイムトライアルで3位、チームスプリント(混合C/藤田・石井雅史・相園健太郎)で2位という成績を残した。これからメインシーズンを迎えるトラック競技。そのシーズン序盤で、しかも1日に複数のレースを走って疲労が残るなかで結果が出せたことは、「今後の弾みになる」と充実した表情を見せた。
リオに向けて心身ともよりタフに存在感示す走りを追求
今年3月のパラサイクリングトラック世界選手権で、3km個人追い抜きの銀メダルを獲得した藤田。北京パラリンピック後のクラス再編で現在のC3クラスになってから、選手権では初めての表彰台だった。さらに8月のロード世界選手権で優勝し、その勢いをキープしたまま、今大会を迎えることができたようだ。「調子の波が少なくなり、どんなコンディションでも走りきれるタフさが身についてきたから」と分析する藤田。それは厳しいトレーニングの積み重ねといった不断の努力の賜物である。一方で、リオに向けてはこんな課題を口にする。
「今、対等に戦えるところまで来ていますが、僕は他の選手に比べれば身体が小さい。トラックにしてもロードにしても、ここからさらに1段、2段と底上げをしていくために、パワーアップしていく必要がある」
また、ロードにおいては世界チャンピオンだが、「精神的な部分でもまだまだ満足していない」と言い切る。「周りにしっかりと存在感を示していかなきゃいけない。そういう責任ある走りが今後できるように。そこの部分は、自分のチャレンジだと思っています」と話し、次なる挑戦に視線を向けた。
女子は鹿沼・田中ペアがトラック競技3種目で優勝
トラック競技ではほかに、男子C4-5クラスの4km個人追い抜きを石井雅史が、女子Bクラス3km個人追い抜きとタンデムスプリント、1kmタイムトライアルの3種目を鹿沼由理恵とパイロットの田中まいペアが制した。日本人女子として初めてタンデム自転車でのパラリンピック出場を目指す2人。鹿沼は「持久力を維持しながら、もっと瞬発力をつけなくては」と反省を口にし、パイロットの田中は「リオでメダルを狙うならもっとタイムを出していかないといけない。今回見つけた課題を次につなげて強化していきたい」と気を引き締めた。
また、最終日には5kmサーキットで個人ロードタイムトライアルとチームリレーが行われた。男子Tクラスでは、小川睦彦が優勝。藤田は落車によりゴールできなかった。
text by Miharu Araki
photo by X-1