ブラサカ初のトップリーグ「LIGA.i」設立! 日本ブラインドサッカー協会が描く未来とは?
ブラインドサッカー初となるトップリーグ「LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ2022」。その出場クラブチーム、4チームが5月30日、発表された。日本ブラインドサッカー協会(JBFA)が2010年から開催してきたクラブチーム選手権に替わるリーグ戦として、鳴り物入りでスタートする。
いまなぜトップリーグを新設するのか。新リーグ設置を通してJBFAが目指したいものとは何か。ここでは、リーグ新設の背景について、JBFA事務局長の松崎英吾氏、オンライン記者会見に登壇した選手たちの声とともに紹介したい。
国内最高峰の新リーグに出場するのは?
「LIGA.i ブラインドサッカートップリーグ2022」は、選ばれし4チームが総当たり戦で全3節を戦い、初代タイトルを争奪する。
出場するのは、世界ナンバーワン女子選手の呼び声高い菊島宙を擁する「埼玉T.Wings」、東京2020パラリンピックで日本代表として活躍した川村怜、佐々木ロベルト泉らがいる「パペレシアル品川」、日本選手権3度準優勝の強豪「buen cambio yokohama」、そして今年1月に行われた日本選手権、2月のKPMGカップを制して波に乗る「free bird mejirodai」。
各チームの意気込みは以下の通り。
埼玉T.Wingのキャプテン:加藤健人
「初戦が大事。対戦するfree bird mejirodaiとこれまでいい戦いをしているので。応援を力にがんばりますので、応援に来てください!」
パペレシアル品川のキャプテン:寺西一
「一点を獲る、獲られるが大会の結果を左右すると思うので、一点にこだわるプレーを見せたい。観てくださる方がワクワクするような試合をお見せできればと思います」
buen cambio yokohamaのキャプテン:齊藤悠希
「出場する4チームで日本一のタイトルを持っていないのはbuen cambio yokohamaだけ。初めてのトップリーグで必ず優勝し、初のタイトルを獲りたいです」
free bird mejirodaiのフィールドプレーヤー:園部優月
「自分たちのサッカーを実行し、free bird mejirodaiの強さを見せたいです。トータルフットボールで一つひとつ勝って優勝したいです」
これまでのリーグと何が違うのか?
リーグタイトルである「LIGA.i(リーガアイ)」の由来は「競技性(”I”ntensity)」「興行性(”I”nfluence )」「組織性(”I”ntegrity)」の頭文字。それぞれを向上させ、ブラインドサッカーを通じて社会を変えたいというおもいが込められた。
これまで主な国内大会は、2003年から続く「日本選手権」、全国4つのエリアで行う「地域リーグ」、地域リーグを勝ち抜いたチームによる「クラブチーム選手権」があった。
クラブチーム選手権は終了し、今後は日本選手権、地域リーグ、そしてLIGA.iの3大会が主要大会として行われる。
松崎事務局長は、オンライン記者会見で設立の背景を詳細に説明。その背景には「クラブチーム数と関わる人の増加」、生涯スポーツとして楽しむ選手から日本代表を目指して参加する選手までさまざまで「いろんな価値観のクラブチーム」の存在があること。さらに、世界で競技のエリート化が進む中で「強化に資するリーグの必要性」が高まったことを挙げた。
新リーグには3つの開催目的があり、出場チームには、競技力はもちろんのこと、クラブチームの運営能力、競技の普及活動に注力しているか、という点が求めらた。
<新リーグの開催目的>
・日本代表チームおよびクラブチームの強化に資すること・興行性の高い大会を開催すること
・クラブチームおよびJBFAの組織性を高めること
チーム内の満場一致で参加を決めたという、buen cambio yokohamaの齊藤は言う。
「競技力を見ていただく大会はこれまでにもあったが、チームには普及や運営を頑張っているメンバーもいる。それを評価していただき、参加できるのはとてもうれしいです」
一方、参加する4チーム以外からは不安の声も挙がっている。ブラインドサッカーの国内大会としては初めて賞金がかけられる予定であり、JBFAは各クラブの法人化を促している。
「自分たちはただ純粋にサッカーをしたいだけ。スタッフの数も少なく、事務的に負担の増える法人化にすることは現在のところ考えられない」といった理由で参加の申請をしなかったチームもあった。最終的に手を挙げた4チームのみが参戦することになり、課題は残った。
LIGA.iは、一部有料化で行われ、チケット販売の詳細は後日発表される。JBFAが主催する国内大会としては2017年の日本選手権(上位4チームの試合のみ)で初めて観客席の有料化に取り組んだ。パラスポーツでは収益が生まれなければ施設利用料が減免されることが多いため、収益化は難しく、有料化は先進的な取り組みだった。
その後、昨年の東京パラリンピックを経て、これからパラスポーツがどうなっていくのか先行きが見えない中、JBFAは再びスポーツとしての可能性を見出すべく、一興行として楽しんでもらう場を観客に提供する挑戦を始める。
有料化について、これまで興行を経験している加藤が「観客を入れるということで、リピーターだけではなく、新たな方々を巻き込むかが大切なことだし、期待していることです」といえば、若手の園部は「お金を払って見にきてくださる方を前に、面白いプレーをしなくてはいけないと思うと、緊張するが、深呼吸して今まで通りのプレーをして感謝の気持ちを表現したい」と意気込んでいる。
かくして新たな一歩を踏み出した新リーグ。記念すべき第一節は、7月18日に静岡県浜松市の浜松アリーナで開催される。<buen cambio yokohama vsパペレシアル品川>が開幕カードとなり、エキシビションマッチ出場のためタイ代表チームも来日する予定だ。
text by Asuka Senaga
photo by JBFA