【独占インタビュー】東京パラリンピックを盛り上げた「コート外のMVP」!? 車いすバスケットボール・なかのひとのツイート秘話

【独占インタビュー】東京パラリンピックを盛り上げた「コート外のMVP」!? 車いすバスケットボール・なかのひとのツイート秘話
2022.09.05.MON 公開

日本中がスマホ片手に勝利を祈って叫んだ。2021年9月5日、東京2020パラリンピックで車いすバスケットボール男子代表が史上初の銀メダル獲得。#制御不能 なSNS発信で #超全力全員応援 の火付け役となった日本車いすバスケットボール連盟@なかのひと(@JWBF_OFFICIAL)に、フォロワーが急増した当時のこと、そして1年たった今のおもいを聞きました。

――コロナ禍で開催された東京大会。男子日本代表が快進撃を見せるなか、8月26日に“車いすバスケの流川楓”こと鳥海連志選手がツイッターでトレンド入り。男子の準々決勝が行われた9月1日、#車いすバスケットボール がついにトレンド1位に。なかのひとのつぶやき、切れ味抜群でした。

なかのひと:日本車いすバスケットボール連盟のアカウントは 2019年4月に開設。大会前に2000中盤だったフォロワーさんは、1000単位で増えていき2.6万まで伸びました。あのときは、息をするのも忘れそうなほど、つぶやいて、いや叫んでいましたね。8月24日から9月5日までの12日間は、なかのひとにとっても特別な時間でした。しかも、今も2.4万フォロワーさんがこのアカウントを支えてくれています。もちろんフォロワー数がすべてではないんですが、めちゃくちゃありがたいです。注目された要因? そりゃ選手たちが東京大会で結果を残してくれたからに決まっているじゃないですか!

――謙虚なんですね(笑)どんな人格を持つアカウントですか?

なかのひと:ただただ、車いすバスケットボールが大好きな人です。みんなと喜びも悲しみも分かち合いたい。あと、ツイートは基本的に無計画です。完全に右脳派。感覚で生きてますー。

――試合のある夜、テレビ中継が始まる時間が近づくと「1時間前です、着席してください」とアナウンスしてくれるので、学級委員みたいなリーダータイプかと思っていました(笑)

なかのひと:試合前に選手のニックネームをつぶやいて応援しやすい雰囲気をつくったり、試合中はみんなが沸くだろうところで音頭をとったりする感じかなあ。
でも、すごく頼りないアカウントですよ。わからないことはわからないって言います。だいたい「教えてください」と投げかけると、フォロワーさんが反応してくれるし、リプライが広がっていくのでありがたいですね。

――みんなの声を代弁して意見を言う姿も支持されました。たとえばこのツイート!


なかのひと:ゴメンナサイ! ギリギリの発言はよくするんですけど、これはギリギリの線を踏み越えてしまいまして……。お叱りの声をたくさんいただきました。競技団体の公式SNSである立場を考えてツイートしないといけないのに、車いすバスケットボールを障がいの有無に関係なく『ひとつのスポーツ』として皆さんに受け止めてもらいたいな、という思いが強過ぎて、つい感情が先走りました……。多くの方にご迷惑をおかけしましたので、本当に反省しています。

――東京大会では24時間体制、秒単位のツイートで盛り上げました。体力的にキツくなかったのでしょうか?

なかのひと:大丈夫でしたよ。ちゃんと布団で寝ていたし、なんせちゃんと食べていましたから。ゲン担ぎでかつ丼とか。深夜のコンビニでプリンを調達して食べたり、次郎系ラーメンを食べに行ったり。あと、なかのひともゾーンに入っていたかもしれません(笑)

――どうやってツイートしているんですか?

なかのひと:ツイートはスマホとPCの二刀流で打っています。メモ帳に準備しておいてコピペすることもあれば、直に文字を打つこともあります。絵文字を使いこなせないので(笑)
このハイタッチの投稿はフォロワーさんに手伝ってもらったからこそ、生まれたものです。ここからハイタッチが連なって、広がっていき、本当にうれしかったなあ。これまでで、一番、印象に残っている投稿です。


――SNS上でハイタッチをする場を作るというのは、事前に考えていたもの?

なかのひと: 全然考えていませんでした(笑)ただ、東京大会はみんな自宅で観戦していて、スポーツバーに行けなければ、パブリックビューイングで声援を送ることもできなかった。みんながバラバラなところにいたので、勝ったらハイタッチをして、みんなが一緒に観戦しているような雰囲気を作りたいなと思いついたんです。

――選手名鑑(男子女子)のキャッチコピーも話題になりました。

なかのひと: 岐阜出身で先日ドイツリーグ挑戦を発表した秋田啓選手の「岐阜なのに秋田」とか、好奇心が刺激されますよね。長年、車いすバスケットボールを取材しているチームリアルさんが制作したコピーを使い倒しました。柳本あまね選手の「京のピンキー」とか、もうよくわからないけど面白い(笑)

―――ちなみに命名したチームリアルさんに取材したところ、「京都出身でネイルがピンクだったから」とのことでしたよ。

東京大会をきっかけに、フォロワーにアプローチするステップは、「車いすバスケットボールを知ってもらう」から「ファンになってもらう」に変化したような気がします。

なかのひと:これまで選手の固定ファンはあまりいませんでした。でも、今ではクラブチームや選手にファンがついています。うれしいことに、選手やマネージャーなど関わる人も増えました。
実は、東京大会の開催決定後、さまざまな取り組みをしていくうちに、試合後、女性や子どもたちが選手のサインや握手を求めて列をつくるという、障がい者スポーツ関係者にとって衝撃的な景色が見られたんです。障がい者スポーツの時代の転換期が到来したと感じました。そして、東京大会の結果があり、ありがたいことに応援してくれる人がまた増えました。そう考えると、なかのひと、何もしていないですね(笑)

2019年三菱電機ワールドチャレンジカップでは選手カードにサインを求めるファンの姿が photo by X-1

―――今後は?

なかのひと:SNSを活かすためにも動画を撮ってもっと選手について知ってもらいたいと企んでいます。現実は、コロナ禍で選手に近づきにくいので、モヤモヤしていますが。
東京大会が終わり、深夜3時に日本人が活躍するドイツリーグの話題をツイートしたりしましたが、リーグ戦や普段の活動があってこその代表戦なので、国内外問わず、色々な活動について知ってもらいたいと思っています。普段の活動はパラリンピックと同じくらい大事ですから。普段の競技を守っていくことが連盟としての本来の活動です。そういう意味では、東京大会は一つの通過点に過ぎない。この先もファンとして応援してもらう……というところにつながるように発信を続けていきたいです。あ、なんかアツく語ってしまいました!

――最後に、メッセージをお願いします。

なかのひと:わりとツイートを見てくれている方にも、フォローで支えてくれた方にも、感謝の気持ちしかありません。まだ(@JWBF_OFFICIAL)をフォローしていない方は、ぜひぜひフォローをお願いします♪

2年ぶりに開催された皇后杯では白熱の戦いが繰り広げられた photo by X-1
日本車いすバスケットボール連盟@なかのひと
西のほう出身。日本車いすバスケットボール連盟の広報担当。YouTuber。Bリーグの島根スサノオマジックのファン。2021年に引退したチアのHONOKAさん推し。「デスク周りはスサノオマジックのグッズだらけ」(情報提供:連盟オフィシャルカメラマンI氏)。自称「ツイ廃」。リスペクトしているのは、専門的な情報を教えてくれる、あらゆる分野のオタクのみなさん。

text by Asuka Senaga
key visual by Takashi Okui

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