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車いすテニス
「自分の大会にできた」飯塚国際車いすテニスで小田凱人が初優勝!
4月18日から23日の6日間にわたって開催された「天皇杯・皇后杯 第39回飯塚国際車いすテニス大会(ジャパンオープン)」は“国枝慎吾の後継者”小田凱人の初優勝で幕を閉じた。
グランドスラムに次ぐグレードの「スーパーシリーズ」に位置づけられるジャパンオープン。実に、4年ぶりの開催だった。
海外を転戦する中で日本国内でプレーすることが少ない小田は「本当に楽しみにしていた」と語り、トレードマークの白いハチマキを巻いて大会に臨んだ。
「これから(グランドスラム初優勝の期待がかかる)全仏もあるし、パリパラリンピックまであと1年ちょっと。勝ち方にこだわり、一番を目指します」
世界ランキング2位の小田は第1シード。嘉村雄造との1回戦を2-0(6-0、6-0)、城智哉との2回戦を2-0(6-0、6-1)、マーティン・デラプエンテ(スペイン)との準々決勝を2-0(6-2、7-5)で勝ち上がり、準決勝では第3シードのルベン・スパーガレン(オランダ)を2-0(6-1、6-2)で下した。
激しいバトルになった日本人対決
そして迎えた決勝は日本人対決に。パラリンピック3大会出場の37歳・眞田卓にとってもジャパンオープンで初の決勝の舞台だった。
第4シードの三木拓也、元世界ランキング1位のステファン・ウデ(フランス)を破って決勝に勝ち上がった眞田。過去の対戦では16歳の小田が4勝しているが、今年に入って好調を維持しているベテランは、国内の観客を前に白熱した試合を見せた。
「この大会で日本人同士の決勝を戦えたのは、すごく光栄に思います」
コートサイドでは今年1月、世界ランキング1位のまま引退した国枝氏が見守る。国枝氏は前回の優勝者。その後を継ぐ天皇杯を、日本選手が争奪したのだ。
第1セットは、序盤、「少し緊張していた」という小田のミスが続く。3-6で落としてリードを許したものの、第2セットはサーブでポイントを重ねて6-1取り返した。第3セットは互いにポイントを取り合い、手に汗握る展開に。最後は、強烈なサーブで眞田のリターンミスを誘い6-4で取って、歓喜の雄叫びを響かせた。
「多くの観客の前で試合ができたことも勝てた原因かな」
報道陣から試合の感想を聞かれ、小田はテンション高めに答えた。
大会前半こそ「勝ち上がるたびに調子が上がっている」と話していた小田だが、決勝はなかなか調子が上がらず苦しんだ。それでも雄叫びやガッツポーズで自身を鼓舞しながらコンディションを上げていき、サーブでエースを取った。ミスの目立ったバックハンドも「しっかり振り抜くことを常に自分に言い聞かせながら」試合を進め、セカンドクラスで優勝した前回大会から4年間の成長を見せた。
第3セットで続けてポイントを取るなど見せ場をつくった眞田とともに、試合後、小田は観客から大きな拍手で称えられた。
三木と組んだダブルスでも優勝し、単複2冠を達成。「自分の大会にできたかな」と顔をほころばせた。
一方の眞田は決勝を振り返り、「小田選手は日々成長を感じるプレーヤー。身体能力もすごく高いですし、(3ヵ月前の)前回、オーストラリアで戦ったときよりも、サーブの精度、オープニング、リターンからの2球目の精度が非常に上がったと思います。今日はかなりウィナーを取られたと感じました」と話して勝者を称えた。
プレゼンターとして小田に天皇杯を手渡した国枝氏も「日本のレベルの高さを外から見て感じた。眞田も凱人も本当に地力がついてきた」と拍手を送った。
若い世代に伝えたい車いすテニスの魅力
さらに、表彰式の後、小田がボランティアの学生たちに囲まれてサインや写真撮影をリクエストされ、笑顔で応える姿も印象的だった。
「サインや写真を求められたりするのはやっぱり嬉しいです。僕を見て『かっこいいな』と思ってもらい、いろんなことにチャレンジしてもらえたらすごく嬉しい。同世代や10代に共感を持ってもらえると僕自身も頑張れますし、もっと頑張らないといけないなって思います」
そして、力を込めて言う。
「『車いすテニスはこれだけかっこいいんだ』というのをプレーでも伝えられたらと思いますし、これからも、かっこいい魅力をどんどん伝えていけたら」
絶対王者だった国枝氏が引退後、初のジャパンオープンは、小田の常勝時代の到来を予感させる大会だった。
text by Asuka Senaga
key visual by Tomohiko Sato