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車いすラグビー
気持ちを奮い立たせる! 車いすラグビー・ケビン・オアー日本代表ヘッドコーチが残した言葉
「プレッシャー!」「ファイト!」――車いすラグビー日本代表のベンチで人一倍大きな声を出し、選手たちの闘争心を掻き立ててきたケビン・オアーヘッドコーチ(HC)。パリ2024パラリンピックの予選を兼ねた「アジア・オセアニア チャンピオンシップ」が最後の指揮となる。2018年には世界選手権を制し、東京2020パラリンピックでは銅メダルを獲得。世界ランキング1位の景色も見せてくれたオアーHCが残したものとは――。これまでのコメントをピックアップし、その功績を振り返る。
ケビン・オアー 1968年生まれのアメリカ人。アメリカ代表HC、カナダ代表HCを経て、2017年に日本代表HCに就任。2018年には日本代表を世界選手権初優勝に導いた。
「新しい選手の発掘を」
<2017年2月の就任会見にて>自国開催の東京パラリンピックで悲願の金メダルを目指す日本代表HCに就任。若手加入への期待を込めて語った。実際に、当時中学生だった橋本勝也を発掘し、日本代表初の女性選手倉橋香衣を選出するなどしてチームを活性化させた。
「パラスポーツではなく、スポーツとして、相撲のように注目してもらいたい」
<2018年5月の2018ジャパンパラウィルチェアーラグビー競技大会にて>東京パラリンピック開催に向けてパラスポーツへの注目が高まるなかで行われた国際親善試合。「日本にはいい選手がいる。もっと多くの観客に見に来てもらいたい」とメディアを通して呼びかけた。
「コートで起きたことは、コートに置き去れ」
<2018年8月のIWRF世界選手権にて>日本代表は決勝でリオ2016パラリンピック金メダルのオーストラリアと対戦。死闘を制し、初優勝を飾った。予選最終戦では大差でオーストラリアに敗れていた日本代表。意気消沈していた選手たちをオアーHCが鼓舞し、選手たちは気持ちを切り替えた。その後、強豪アメリカを撃破し、決勝で勝利したチームをオアーHCは「すごいジャパン」と称えた。
「アグレッシブに、アタックし続ける」
<2021年8月の東京パラリンピック準決勝にて>悲願の金メダルを目指して臨んだ東京パラリンピック。日本代表は、準決勝でイギリス相手にまさかの敗戦。オアーHCは選手たちとともに涙を流した。翌日のメダルマッチでどう戦うか、記者に問われて「アグレッシブなプレーが日本のラグビー」と答えた。翌日。見事勝利して銅メダルを獲得。記者エリアに現れると、開口一番「昨日、ここで申し上げた通りのスタイルを選手たちが実行してくれた」と納得の表情で語った。
「チームメートと過ごす時間が宝物」
<2021年8月の東京パラリンピックメダリスト会見にて>東京2020大会の延期やコロナ禍での移動や隔離生活など苦労も多かった。「大会が終わって自分へのご褒美は?」という質問に対し、「焼肉とすき焼きは好きだけど……」とコメントし、「チームメートと過ごす時間が何よりのご褒美です」と続けた。
「準決勝の壁なんてない」
<2022年10月の世界選手権にて>デンマークで行われた世界選手権。連覇を目指した日本代表はリオパラリンピック、東京パラリンピックと同じ3位に終わった。準決勝でアメリカに敗れ、選手たちは準決勝への苦手意識を口にしたが、「前回の世界選手権では準決勝で勝利した。そんなものは、ない」と一蹴した。
「二ホンゴチョットダケワカリマス」
<2022年10月の世界選手権にて>日本メディアのインタビューを終えると、元通訳から贈られたという「二ホンゴチョットダケワカリマス」のTシャツを披露してくれたオアーHC。お茶目な一面も、選手や関係者から慕われる理由だ。
「日本は、私を変えました」
<2023年6月のケビンHC退任に関わる記者会見にて>自宅のあるアメリカ(アラバマ州)と日本を定期的に往復する生活が心身ともに厳しくなったなどの理由で退任を表明。記者から「就任から6年間で学んだこと」を聞かれると、涙をこらえながら「人を尊重するという点です。日本人の礼儀正しさに触れることができたし、教えたことをスポンジのように吸収するなど、日本人の人間性を含めて日本の車いすラグビー。これからもそういう精神をつないでいってほしい」「日本でコーチの仕事をするというのは夢のような時間でした」と話した。
ケビン・オアーHCとともに強くなった日本代表の集大成をぜひ見届けてほしい。
text by Asuka Senaga
key visual by Megumi Masuda