世界で活躍する一流アスリートに学ぶ、夢を叶える方法|おすすめノンフィクション本5選
先日、メジャーリーグ、エンゼルスの大谷翔平選手が日本人初のホームラン王に輝いた。その他にも、スポーツ界ではバスケットボールやサッカーなど、さまざまな競技で多くの日本人アスリートが夢を叶え、世界で活躍している。彼らはなぜ、夢を叶えることができたのか、それを知るヒントとなるおすすめの書籍5冊を厳選してご紹介する。
『不可能を可能にする大谷翔平 120の思考』大谷翔平/ぴあ
僕はマイナス思考なんです。
だから弱点がみえたら
しっかり直して塗りつぶしたい
世の中、プラス思考の花盛りだ。そこはプラスじゃマズイだろうという場面でも、反省しないまま羽ばたいていく人もいる。一方、大谷はマイナス思考と明言する。(中略)「良かった時より、悪かった試合の方が記憶に残るんです。自分の弱点があったら、しっかり直していきたい。頑張れという声も、自分がマイナス思考の時は“ちゃんとストライクを入れろ”に聞こえるんです」(本文より)
最初は日本でさえ無理だと言われたピッチャーとバッターの二刀流という夢を、野球の本場アメリカで叶えた大谷翔平選手。メジャーリーグ移籍前に刊行された本ではあるものの、上記の言葉は彼が持って生まれた体格や才能、運だけで夢を叶えたわけではないことがわかる一節だ。大谷選手が高校生の時からメジャーリーグを目指していたことはよく知られているが、彼はその頃から自分を冷静に見つめ、論理的かつ計画的に物事を考え実行してきた。本書は、そんな大谷選手の思考を象徴する120の名言を収録。さらに言葉の背景を丁寧に解説している。野球選手としてだけでなく、人間として評価の高い大谷選手の思考がわかる、大人はもちろん、我が子にも読ませたい1冊。
『姫野ノート 「弱さ」と闘う53の言葉』姫野和樹/飛鳥新社
良い選手よりも「まず、良い人間」であれ
(前略)1人の1つの行動がチーム全員に影響を及ぼしかねない、仲間を危険にさらしかねないというスポーツだからこそ、仲間意識、帰属意識、自分の行動が与える影響についての意識がとても高い。だからこそ、選手はチームのために、人間としてもベストを尽くそうとする。良い人間でなければ、世界のトップには絶対に行けないスポーツでもあるし、逆にそうした良い人間を作ってくれるスポーツでもある。(本文より)
相手からボールを奪い取るスーパープレー「ジャッカル」で知られる、ラグビー日本代表の姫野和樹選手。本書では、彼の強く、明るいキャラクターの裏側に、実は貧しかった少年時代、ケガでくじけそうになったときなど……自分の弱さとどう闘ったのかが赤裸々に語られる。その中から学んだ、考え方や意識作り、自分との向き合い方、「弱さ」の受け入れ方、目標設定術といった姫野流セルフコーチング・メソッドやリーダー論、組織マネジメント論などが満載。スポーツ指導者はもちろん、ビジネスマンも必読。彼が7年間にわたって書き溜めている“姫野ノート”の一部も初公開。
『「好き」を力にする NBAプレーヤーになるために僕が続けてきたこと』渡邊雄太/KADOKAWA
現時点でできることに集中する
(前略)僕の206センチという身長は、NBAでは平均でしかないが、アメリカで、自分よりはるかに高い選手を前にしてもシュートを打てているのは、このときの練習が生きているように思う。何かしらの障害があって思うようにならないときにでも、必ずやれることはあるものだ。それを見つけ、現時点でできることに集中して取り組んでいれば、それは必ず将来生きてくる。(本文より)
これは田臥勇太選手に続き日本人で2人目のNBA選手になった渡邊雄太選手が、中学時代の停滞期を振り返った言葉だ。中学に入って成長に伴う膝の関節痛に悩まされた渡邊選手に、当時のコーチは無理をして練習することを禁じた。彼は焦る気持ちを抑え、父親に買ってもらった練習用リングを、近所の空き地の所有者に許可を取り設置。膝に負担のかかる高いジャンプをするシュートではなく、速く、正確なシュートを心がけた練習を続けたそうだ。現在はNBAで活躍する渡邊選手が、成長するための思考法、悩み、人生の岐路にたったときの解決策を明かす本書は、夢を追いかけている人、夢を諦めかけている人に希望を与えてくれる。
『「想いをカタチにする」ポジティブ思考』富樫勇樹/KADOKAWA
自分でどうにもならないことは、悩んでも意味がない
人には、自分ではどうすることもできない結末が控えていることがある。それに対していくら足掻いてみても、余計に自分が沈んでいくだけだ。目の前の状況を一度すべて受け入れて、そこから自分に何ができるかを考えたほうが、立ち直りは早い。(本文より)
上記は、バスケットボールBリーグ千葉ジェッツふなばしの富樫勇樹選手がNBAを目指していた頃に感じたこと。NBAのダラス・マーベリックスと契約し、傘下のDリーグ、テキサス・レジェンズでプレーをしていた富樫選手は、試合中にひどい捻挫をしてしまう。快癒までに数ヶ月を要したため、結局治療中に契約が終了してしまった。実はこの経験が彼の次なる挑戦へと繋がるのだが、その経過はぜひ本書で確かめてほしい。あらゆる逆境を乗り越えた富樫選手のアスリートとしてのストーリーは、きっと多くの人をポジティブ思考にしてくれるはずだ。
『VISION 夢を叶える逆算思考』三笘薫/双葉社
目標から逆算して課題を見つけることができれば、自分で課題を解決する、「自己改善力」が身につく
僕の中では、プロの世界で戦っていくにはドリブルでトップスピードに乗ったうえで、正確なプレーを披露することが絶対条件だった。そのために、その自分の中で定めた合格ラインから、「逆算」して目標を達成する方法を探した。これは小学校3年生で加入した川崎フロンターレの下部組織時代に習得した「逆算思考法」が大いに役に立った。(本文より)
サッカーの三笘薫選手の名前を世界に知らしめたのは、2022年サッカーW杯の「三笘の1mm」だろう。普通ならばボールがラインアウトしたと諦めてしまう場面で、めいっぱい足を伸ばし、ギリギリのところでボールを味方の田中碧選手につないで決勝点へと導いた。三笘選手はこの時のことを「あきらめない気持ち」も大切だが「本来ならばあそこで足を伸ばさなくてもいい状況を作り出すことが大事なのである」と冷静に自己分析。あの状況から逆算すると、自分がもっと早くゴール前に入って右足インサイドで正確に流し込めば、ゴールが決まる可能性はより高まったはずだと、成功したプレーでさえもきちんと振り返り、次の成功へと繋げる努力をしている。本書は、ビジネスマンも参考にできそうな三笘選手の逆算思考の他、練習方法、食事、メンタルの整え方のほか、プレミアムリーグ2年目の4人抜き「ドリブル」「シュート」の新技術についてなど、サッカーに励む子どもたちに、ぜひ読んでほしい120のメソッドを掲載。7万5千部を突破した、成長するためのバイブルとなる一冊だ。
5人のアスリートが成功を掴むまでの道のりはさまざまだが、共通するのは、彼らが恵まれた肉体や才能だけで夢を叶えたのではないということ。たとえ彼らのような肉体や才能を持っていなくても、彼らが実践してきたことや、彼らの思考を学ぶことができたら、夢に一歩近付くことができるかもしれない。「自分にもまだ何かできることがある」そんな風に思わせてくれる良書をご紹介した。スポーツ界だけでなく、ビジネスで行き詰まっている人、何かのヒントがほしいと思っている人にもおすすめしたい。
text by Kaori Hamanaka(Parasapo Lab)