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ゴールボール
日本ゴールボール選手権大会、女子は初優勝&男子は2連覇!
11月17日から2日間、足立区総合スポーツセンターで日本ゴールボール選手権大会が行われた。男女のチーム日本一を決める本大会は、予選大会を勝ち抜いた男子の精鋭6チームと女子の4チームが出場。
今大会の最終順位は、男子の部[1位:Amaryllis、2位:所沢サンダース、3位:チーム附属、4位:スーパーモンキーズC、5位:NBS、6位:国リハmen’sチーム雷]、女子の部[1位:国リハLadiesチームむさしずく、2位:九州なでしこ、3位:Moon Luster、4位:チーム附属]だった。
「国リハLadiesチームむさしずく」が延長の末、「九州なでしこ」を下して悲願の日本一に
今大会はインドネシア2018アジアパラ競技大会で金メダルを獲得した女子日本代表も各チームに戻って出場。「金メダルを獲ったとはいえ、まだまだ世界は厳しい。国内ではライバルである皆と高め合ってレベルアップしたい」と九州なでしこの浦田理恵が語るように、それぞれが課題と向き合いながら、代表選手が個々の強みを活かしたプレーでクラブチームを勝利に導けるかも見どころだった。
そんななか、女子は予選大会を通過した4チームが本大会に出場。総当たりの予選を戦い、上位2チームが決勝に進出した。
まず、浦田に加え、日本を代表するポイントゲッターの小宮正江を擁する「九州なでしこ」は、登録4選手中3人がフル出場して予選を勝ち上がった。もうひとつのチームは、埼玉の国立障害者リハビリテーションセンターを拠点とした「国リハLadiesチームむさしずく」。男子の所沢サンダースや、日本選手権の常連・国リハmen’sチーム雷と合同で練習を重ねる強豪だ。アジアパラ代表の若杉遥をはじめとする選手たちは、普段から男子の強い球を受け、日本一を目指して練習を重ねるが、日本選手権では一度も頂点に立てていない。決勝に進めなかった昨年は、3位決定戦で九州なでしこに大敗した悔しさを味わい、「ボロボロな試合をしただけに、今年は勝ちたい思いが強かった」とチームの柱である安達阿記子は語気を強め、この日本選手権に期するものがあった。
その両者による決勝は大会2日目の午後、男子に先駆けてスタートした。前半2分、先制したのは国リハLadiesチームむさしずく。成長著しい高校生プレーヤー萩原紀佳が持ち味である音の静かなグラウンダーで得点を決めると、その後コントロールが自慢の若杉が追加点を挙げた。しかし、試合巧者の九州なでしこはすぐに一点を返し、さらには得点のチャンスであるタイムアウト直後にそれぞれ小宮が決めて主導権を渡さない。2-2で試合を折り返すと、後半も互いに追加点を挙げたが、両チームとも相手ファウルによるペナルティスローのチャンスを決められず、勝負の行方はゴールデンスコア方式の延長に持ち越された。
3人でゴールを守り、自分たちのペースに持ち込む九州なでしこと、もともとウィング(※)プレーヤーである安達がセンターを務め、どこからでも点を獲れる国リハLadiesチームむさしずく。九州なでしこが体力を消耗しているのは明らかで、ベンチを見比べても、選手層の厚さで分があるのは、国リハLadiesチームむさしずくであることは間違いなかった。
※コート上の3人はポジションが決まっており、中央をセンター、両サイドをウィングと呼ぶ。
そして、レフトの若杉が得意のコースである相手のライトとセンターの間に投球すると、ボールは九州なでしこのセンター山口幸子を越えてネットに吸い込まれた。それは、国リハLadiesチームむさしずくが悲願の初優勝を決めた瞬間だった。
コートにいた選手たちはジャンプしてうれしさを爆発させ、決めた若杉も「練習の成果が出せた。相手を意識せずに、自分たちのやりたいプレーができた」と笑顔で勝利を喜んだ。
男子は、個の力で圧倒した「Amaryllis」が2連覇達成!
一方の男子は、3チームずつに分けられた予選リーグの結果、上位各2チームが決勝トーナメントを戦ったが、7月の一次予選大会から負けなしの「Amaryllis」が順当に勝ち進んだAプールに対し、Bプールは3チームが1勝1敗で並ぶ混戦状態。最終的に決勝の舞台に上がった「所沢サンダース」は、大事な予選の初戦を落とした際に、キャプテンの田口侑治が「攻撃で盛り返しても、守備で崩れて流れをつかめない……次は総力戦でなんとしても勝つ」と意気込み、その後、2戦目で堅守の「チーム附属」から得点を奪った山口凌河が「もらったペナルティスローを外したりと調子が良くないなか、チームメートに支えられている」と話し、決勝にたどり着くまでの過程でチームの結束力を高めているかのようだった。
だが、Amaryllisは強かった。今大会最多得点となる24点を記録した辻村真貴、男子日本代表の強化スタッフとしても活動する元代表の工藤力也、高校生ながら国際舞台を多く踏む金子和也という個性豊かなメンバーに加え、大会2日間はベテランの伊藤雅敏も合流し、その得点力はさらに脅威を増していた。
辻村は言う。
「今回の目標は2連覇で、決勝が本番。だから、予選では決勝のためのポジション取りを試したり、会場の合わせ(会場によって異なるボールのバウンドを確かめるなど)を行ったりした。いい準備ができたので、決勝は自分たちのゴールボールを思い切り楽しみたい」
そう話した辻村が最初の得点を挙げて、試合は序盤からAmaryllisが3点をリードした。試合はこのまま一方的な展開になるかと思われたが、所沢サンダースの山口が1点を返し、Amaryllisの独壇場に待ったをかける。続いて、ユース世代の強化指定選手である佐野優人も相手の守備のタイミングを外した連続ゴールを奪うなどして、一時は6-7と一点差まで詰め寄る見事な追い上げを見せた。
それでも「不安はなかった」と言うのはAmaryllisの金子。どのポジションもこなすオールマイティなメンバーが揃うAmaryllisは、相手に的を絞らせない効果的なポジションの入れ替えを行って所沢サンダースの反撃を抑えると、その後も辻村の、ゴール隅をつく見事なクロスなどで加点。試合は、11-6でAmaryllisが勝利し、2連覇に輝いた。
意外なことにAmaryllisの選手たちの拠点は埼玉、神奈川、福岡などと散らばっており、普段一緒に練習することはない。では、なぜ連携が重要なゴールボールで勝てるのか。「辻村さんのプレースタイルに憧れているから次はどう動くか見当がつく」と金子は言い、「普段からLineなどで『こんな場面ではこういうことをしたい』とよく話しているから、(決めごとを)しゃべらなくても息が合う」と辻村は話した。
今大会で優勝したAmaryllisの金子、辻村、伊藤は、東京2020パラリンピックの男子日本代表候補でもある。「代表として世界に挑む以上は、国内で負けてはいけないと思っている」と金子。世界を意識して個々がベースアップすることが日本一に直結する。それを証明したAmaryllisの優勝だった。
text by Asuka Senaga
photo by X-1